異世界に召喚された失格勇者はコンバットスーツで無双します ~いきなり俺を殺そうとした国王! てめえは許さねぇ!!~

三原みぱぱ

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第36話 異世界のバーベキュー

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 メイの首輪を外し魔王城から戻った俺達は疲れをとるために、しばらく屋敷でゆっくりして鋭気を養うことにした。
 今日は天気も良かったので、屋敷の庭でバーベキューをすることにしたのだった。
 バーベキューコンロに炭をおこし、肉や野菜、魚を焼いていた。
 俺は酒のつまみにと、燻製にも挑戦してみた。
 薫桜かおりざくらと言われるこの世界特有の香りの強い木のチップを使って、ゆで卵をいぶしてみる。
 鼻の良すぎるネーラには不評だったが、ノアールとアイリーンには面白い味だと好評だった。

「ネーラ、魚もいぶしてやろうか? そうだ! 干物にするとまた味が変わるぞ、美味さが凝縮するからな」
「干物は良いけど、燻製はいやだニャ。それよりマモルはお酒控えるニャ! なんか酔っ払った勢いで支店長に愛の告白したって聞いたニャ!」
「はぁ? 誰だ? そんなこと言っているのは?」
「支店長が言ってたって、部長から聞いたニャ」

 ベレートかサラマンディーネがこのデマの元か。今度会ったらきつく言っておこう。
 そんな風に俺たちがにこやかにバーベキューを楽しんでいると、背の高い女性が声をかけてきた。

「こんにちは」

 ふわりとしたワンピースに身を包んで、手には特に何も持っていなかった。真っ赤な長い髪の毛、少し気が強そうな顔立ちはにっこりと笑顔で話かけてきた。

「どなたですか? ここは私有地ですよ」

 俺とネーラが、怪しんでいると、ノアールが声をかけた。

「すみません、どうやら道に迷ったみたいですの」
「そうですか、じゃあ、わかりやすい所までお送りしましょうか?」
「え!? あなたが、ですか?」

 女性の言わんとする所は分かる。家の周りはマリーヌの結界があるため安全ではあるが、一歩森の中に入れば野生の動物が多くいる。
 確かにノアールを行かせるのは俺も不安だ。多少、酒は入っているが、俺が行った方がマシだろう。

「いいよ、俺が送るよ。村の近くまでで良いだろう」
「すみません。お願いします」

 女性は安心したような顔になった。

「わたくしも一緒に行きますわ」

 俺の言葉にノアールも反応する。
 しかし、やっと訪れた穏やかな親子の時間。
 ひと息つけたが、勇者はまだ、三人も残っている。その後は王国取りも残っている。
 少しでもこの時間を大事にさせてあげたい。

「大丈夫だ、すぐ戻ってくるから、メイさんに存分に甘えていな」

 俺はそう言ってノアールの真っ黒な頭の上にぽんと手を置いた。

「あ、甘えてなんて……」

 そう言いながらも照れて笑っていた。歳相応の笑顔を見せる。
 そんなノアールと焼き魚に夢中なネーラ、いそいそとお肉を焼いているメイを置いて俺は女性を連れて、村への道を案内することにした。
 しばらく歩いた所で俺はふと気がついた。

「そう言えば、お名前を聞いていなかったですね」
「ああ、そうでしたね。名前を言っていませんでしたね」

 そう言って女性は俺の背中にぶつかった。
 痛っ!!
 俺の背中に激痛が走り、瞬間的に叫んだ。

「蒸着!」

 反射的にコンバットスーツを装着する。
 刺された?
 焼けるような痛み。血が流れるイヤな感覚。

「ナビちゃん。止血をお願い」
『了解。セーフティモードに移行します』

 コンバットスーツは俺の傷口を止血し始めた。

「何者だ? あんた、なんでこんなことをする」
「自己紹介がまだでしたね。オレの名前は神無月かんなづき炎夏えんか。まあ、火の勇者と言った方がわかりやすいだろう」

 そう言った女性の姿はどんどん変わり、短い真っ赤な髪の毛を立たせた神経質そうな二十代の細身の男になった。
 俺はその男に見覚えがあった。確かに俺があの王の前で殺された時、イヤらしく笑っていた男だ。
 水の勇者のように単騎で俺を殺しに来たのか。治療が終わるまで、時間稼ぎをしなければ……。

「すごいよね、それ。それがあればレベルなんて関係なさそうだ。それってどうやって手に入れるの? どんなイベント?」

 俺が時間稼ぎをしようと話しかけるよりも先に、炎夏から話しかけてきた。
 なんで、この好機に仕掛けてこない? イベントって何だ? まあ、いい傷が治るまでこいつの話に乗ってやろう。

「これは、勇者召喚されたときにもらったんだよ。イベントってどういうことだ?」
「なんだ、キャラメイキングの時のボーナスアイテムか。それりゃ~いくら探しても見当たらないはずだ」

 あいた~と頭を抱える炎夏の言葉に俺は違和感を覚える。

「キャラメイキングってどういうことだ?」
「あれ? キミも気がついていない派か~」

 炎夏はあのイヤらしそうな笑顔で答えた。

「どういうことだ?」
「どういうことって、この世界はゲームの世界だろう」

 何を当たり前のことに気がつかないんだ? このぼんくらは? と思っている顔で炎夏が俺に答えたのだった。
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