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第21話 異世界の姫騎士はくっころを叫ぶ

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「助けてくれ!」

 あのとき村の責任を言っていた騎士が、傷だらけになりながら村に逃げ込んできた。

「どうした?」
「多数のオークが襲いかかってきた。どうかアイリーン様を助けてください」
「分かった。街道沿いか?」
「はい!」
「任せろ! 村長、村の守りを固めておいてくれ。残党が流れてくるかも知れない」
「村のことは任せておけ、それよりも馬は良いのか?」
「大丈夫だ!」

 走り出した俺に向かって村長が叫ぶ。

「蒸着! ナビちゃん、マモルバイク召喚!」
『了解。マモルバイク召喚します』

 俺は召喚された真っ赤な超かっこいいバイクにまたがって、アクセルを全開にする。浮き上がろうとする前輪を無理矢理押さえつけて、砂埃を上げて走る。
 間に合え!
 風を切って走ると、遠くにそれらしい姿が見えた。

「ナビちゃん、ズーム!」
『了解! 先ほどの女性周りをズームします』

 二十人はいたはずの騎士はことごとく倒れ、姫騎士は折れた剣を構えてオークに敵対していた。十匹以上の屈強なオークが襲いかかる。剣ははじかれ、鎧を剥ぎ取られ、羽交い締めにされた姫騎士は叫んだ。

「くっ、殺……」
「くっころ、いただきました~!!」

 俺はバイクの後輪をロックさせる。バイクをスライドさせて、その勢いのままオークを弾き飛ばす。

「あなたは!?」
「話は後だ! 姫騎士の鏡」
「か、鏡!?」

 俺はブラスターを抜くと俺たちから距離を取るオーク達に銃口を向ける。
 音もなく光線がオークの頭を打ち抜くと、バタバタと倒れていった。
 逃げ出すかと思ったオークは一斉に襲いかかってきた。一匹が殺される間に何匹かが俺を殺る。その考えは分かる。しかし、その戦法をとる相手を間違っていた。
 俺はレーザーブレードを抜くと最大出力でひと薙ぎしただけで、オーク達は熱したバターのように真っ二つに切れた。
 さすがに分が悪いと思ったのか、残りのオークは逃げ出したのだった。しかし、このまま逃がすと、村に襲ってくる可能性もある。

「ブラスターをライフルモードに移行」
『了解! ライフルモードに移行』

 俺の指示でハンドガン型のブラスターは銃身が伸び、スコープが装着された。
 俺は片膝立ちになり、逃げるオーク達を次々に撃ち殺していった。
 こうして、オーク達の虐殺行為は、俺の虐殺行為に移行したのだった。

「あなたは何者なのですか?」

 消費したエネルギーを回復するため、倒れたオークを次々に吸収している俺に話しかける姫騎士。

「通りすがりのヒーローだ。姫騎士の鏡」
「わたしの名前はアイリーンです。鏡などという名前ではありません、アイリーン・アルパカと申します。ここアルパカ領の領主の娘にして、アルパカ騎士団長です」

 騎士団長なのに野生とは言え、オークにすら勝てない。あの魔王軍と戦えるわけがないだろう。ただの象徴か? とはいえ、人間軍の権力者側だ。俺の正体は隠しておいた方が良いだろう。

「俺は宇宙刑事……」
「流水双覇剣!!」

 俺が振り向くと、そこには二匹の水龍が俺を襲いかかろうとしていた。しかし、サラマンディーネ、ベレートの戦いを乗り越えた俺にはその龍の動きは遅すぎる。十分に逃げることは可能だった。しかし、俺の後ろにはアイリーンがいた。俺が避ければ、二匹の水龍はアイリーンに襲いかかる。
 俺はとっさに左手をかざす。

「吸引モード、MAX!!」

 左右から同時に襲いかかってくる水龍は俺の左手に吸い込まれていった。

「なんだ、そのスキルは!」

 そこには自称名家の水の勇者ランスロットが、剣を構えてそこにいた。
 なんで、こんな所にこいつがいるんだ?

「このあたりに八首の大蛇が出ると聞いて、やってきたが運が良い。貴様に出会えるとはな、偽勇者!」
「にせ……勇者!?」

 ランスロットの言葉にアイリーンは混乱する。

「姫様、もう大丈夫です。水の勇者たるランスロットが来たからには、安心してください」
「水の勇者様! 王都で五人の勇者が召喚されたと聞きましたが、本当だったのですね!」

 あの~もう一人、闇の勇者もあなたの目の前にいますよ。俺は心の中でつぶやいた。

「偽勇者! 罪人であるノアール元王女はどこにいる! 今、引き渡せば拷問無しで死刑にしてやる。苦しまなくて済むぞ」

 アホか!? 殺されると分かっていて、誰が言うか! しかし、この上から目線は、本当に名家の生まれなのかも知れない。
 さて、こいつも含めて勇者達はノアールが女王になる障害になる。今のうちに殺しておくか。

「ナビちゃん、エネルギー残量は?」
『エネルギー残量864%』

 マモルバイク召喚したり、ライフルモードやレーザーブレードMAXパワー使ったりと結構エネルギー使ったからな。オークやさっきのこいつのスキルを吸収しても、マイナスのままか。それでも、こいつ一人倒すくらいは十分なエネルギーだろう。

「あなたは何者なのですか? ヒーローだとか宇宙刑事だとか偽勇者だとか、どれが本当なのですか?」

 俺の後ろでアイリーンは震えながら混乱していた。

「それは、あなたが見て判断してください。どれだけ言葉を並べても、どれが本当か分からないでしょうから」

 俺はランスロットから目を離さず、アイリーンに話しかける。

「姫様、その男の言葉を聞いてはいけません。そいつは闇の勇者を名乗る詐欺師です。罪人ノアール元王女と共謀して、この王国を乗っ取ろうとした詐欺師なのです」

 順番は前後しているが、まあ言っていることは合っているな。
 それよりも、今大事なことは、アイリーンを傷つけずにこいつを倒すことだな。

「アイリーンさん、ここは危険だ。どこかに隠れていてくれ」

 混乱を隠せない姫騎士もここが危険だと言うことだけは理解したようだった。
 村の方へと走っていった。
 これで、心置きなくこの王子様のような勇者をぶちのめすことが出来る。

「さて、邪魔者もいなくなったし、一戦交えようか。坊ちゃん勇者よ」
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