20 / 52
第20話 異世界の姫騎士
しおりを挟む
農地はヤマタノオロチが木々をなぎ倒し、俺がマモルバスターで更地にいたところを開墾することにした。折れた木々は炭や建材にして、順調に畑は完成していく。山間にある段々畑。いったんポンプで最上段の畑に水を送り、そこから下段に向けて水を流す。
上段には水が多く必要な作物、下段には水がそれほど多く必要にない作物を植えることにした。
「このまま順調にいけば、大根、玉ねぎ、人参なんぞを植えられるな」
「しかし、一年で村の全部を賄えるほどの畑を作るのは難しいな」
「そうだな。だが、以前とは比べものにならないほど良い。」
村長のジムは満足そうに出来上がった畑を見る。害獣用のネットを貼り、ロープに触れると鈴が鳴り、害獣を脅す仕掛けも施されている。それ以外にも山側にはトラバサミなど生け捕り用の罠も設置した。
「おーい、そこの者たち。聞きたい事があるのだが、少し良いか?」
そんな風に汗水垂らして働く、農作業服姿の俺たちに話しかける女性がいた。
光輝く金色の長い髪、銀色の鎧を身につけ腰には帯刀していた。
絵に描いたような姫騎士が馬に乗って俺たちに話しかけてきた。その後ろには二十人ほどの騎士が同じように武装をして馬に乗っていた。
俺と同じようにその姫騎士を見た村長が、声を上げた。
「げっ!」
「村長、なんだ? あいつらを知っているのか?」
「アルパカ領主の騎士様だ。大方、この前の税収者が帰ってこなかったから、捜索に来たんだろう」
「ああ、あの動力君か。わかった、俺が言いくるめて追い返してくるわ」
俺は泥が付いたままの服で姫騎士の前へ移動した。
「どうかしましたか?」
「農作業中に申し訳ない。十日ほど前、この村にエナジーという男が来ませんでしたか? 護衛の兵士二人連れていたと思うのですが……」
あの税収者の名前はエナジーっていう名前か、まあ今はその名前そのままにポンプのエネルギーになってもらっていますけどね。
「いや~、よく分からないですが、ここ最近、このあたりに村人以外見かけませんね」
「そうか、ありがとう」
そう俺に話しかける姫騎士はびっくりするほど美しかった。ぱっちり二重の青い目、すっと通った鼻、ピンクのふくよかな唇。抜けた若い女性特有の爽やかな顔つき。
その言葉使いは、上からの物言いだが、不思議と嫌みが無かった。
「その方がどうかしたのですか?」
「ああ、今年の税収を決めに各地を回っているのだが、行方不明になったのだ。この村の前の街までは目撃情報があったのだが……もしかすると途中で魔物や魔族に襲われたのかも知れない」
「しかし姫様、エナジー殿は魔法使いですし、兵士も二人付いていました。そうそう、殺されると言うことは無いと思いますが」
姫騎士の説明に騎士の一人が補足説明してくる。
しかし、魔法使いと言ったって、たいした魔法は使えなかったぞ。ヤマタノオロチに襲われていたら、一発で食い殺されていただろうな。俺はそんなことを考えていると、騎士の一人が叫んだ。
「おい、あれはエナジー殿の馬ではないか?」
「あの馬はエナジー殿の馬で間違いない。これはどういうことだ! 先ほどの話とは違うではないか。ここにエナジー殿が来たのだろう! 事と次第によってはこの村ごと責任を取ってもらうぞ!!」
急に色めき立つ騎士達。
しまった。こいつら、馬の判別が付くのか。まあ、大事な相棒だから見間違わないのか。
動揺している俺に姫騎士が問いかける。
「そういうことだ? 説明してくれ」
姫騎士を含めて騎士達は俺に疑惑を向ける。
「あ、ああ、あの馬は先日、この村に迷い込んだのですよ。ちょうどあなたたちが来た方向から歩いてきたんですよ。ちょうど三頭いましたので、この村の労働力にさせていただいていますが、まずかったですかね? 新しい畑を作るのに都合が良かったので」
「……」
姫騎士は俺をじっと見ていた。
さすがにこんな言い訳は通じないか。相手は二十人くらいか。さすがにベレートより強いって事は無いだろう。先手必勝で行くか?
「そうかそうか、それは仕方が無いな。新しい畑か? 仕事に精が出るな。ご苦労様。それでは、我々は戻って三人の捜索を続ける」
異世界の姫騎士もチョロかった。
騎士達は来た道を引き返していった。
「ふー、助かった」
姫騎士達を見送っているとネーラがどこからともなく現れた。
「なあ、マモル。あっち方に野生のオークが多数発見されたんだけど、大丈夫かニャ?」
「オークって魔族じゃないのか? この辺には魔王軍は進軍しないはずだろう?」
「ええ、そうニャ。だから野生のオークだニャ。人間だって人族と野生の猿がいるのと一緒ニャ。野生の物はあたいたちの管轄外だニャ」
「そうか、まあ、野生のオークぐらいなら、あれだけの人数がいれば問題ないだろう」
オークとは豚から進化した、二本歩行の魔獣。知能は高くないため、言葉は通じない。欲望に忠実なため食欲と性欲が異常に強い。ただし体が大きく、力が強く、痛みにも鈍感だ。
普通に戦えば、勝てるだろうと思っていた。
しかし俺は野生のオークを甘く見ていた。
武器なしの一対一で、人間は野生の猿には勝てない。
つまり、そういうことだ。
上段には水が多く必要な作物、下段には水がそれほど多く必要にない作物を植えることにした。
「このまま順調にいけば、大根、玉ねぎ、人参なんぞを植えられるな」
「しかし、一年で村の全部を賄えるほどの畑を作るのは難しいな」
「そうだな。だが、以前とは比べものにならないほど良い。」
村長のジムは満足そうに出来上がった畑を見る。害獣用のネットを貼り、ロープに触れると鈴が鳴り、害獣を脅す仕掛けも施されている。それ以外にも山側にはトラバサミなど生け捕り用の罠も設置した。
「おーい、そこの者たち。聞きたい事があるのだが、少し良いか?」
そんな風に汗水垂らして働く、農作業服姿の俺たちに話しかける女性がいた。
光輝く金色の長い髪、銀色の鎧を身につけ腰には帯刀していた。
絵に描いたような姫騎士が馬に乗って俺たちに話しかけてきた。その後ろには二十人ほどの騎士が同じように武装をして馬に乗っていた。
俺と同じようにその姫騎士を見た村長が、声を上げた。
「げっ!」
「村長、なんだ? あいつらを知っているのか?」
「アルパカ領主の騎士様だ。大方、この前の税収者が帰ってこなかったから、捜索に来たんだろう」
「ああ、あの動力君か。わかった、俺が言いくるめて追い返してくるわ」
俺は泥が付いたままの服で姫騎士の前へ移動した。
「どうかしましたか?」
「農作業中に申し訳ない。十日ほど前、この村にエナジーという男が来ませんでしたか? 護衛の兵士二人連れていたと思うのですが……」
あの税収者の名前はエナジーっていう名前か、まあ今はその名前そのままにポンプのエネルギーになってもらっていますけどね。
「いや~、よく分からないですが、ここ最近、このあたりに村人以外見かけませんね」
「そうか、ありがとう」
そう俺に話しかける姫騎士はびっくりするほど美しかった。ぱっちり二重の青い目、すっと通った鼻、ピンクのふくよかな唇。抜けた若い女性特有の爽やかな顔つき。
その言葉使いは、上からの物言いだが、不思議と嫌みが無かった。
「その方がどうかしたのですか?」
「ああ、今年の税収を決めに各地を回っているのだが、行方不明になったのだ。この村の前の街までは目撃情報があったのだが……もしかすると途中で魔物や魔族に襲われたのかも知れない」
「しかし姫様、エナジー殿は魔法使いですし、兵士も二人付いていました。そうそう、殺されると言うことは無いと思いますが」
姫騎士の説明に騎士の一人が補足説明してくる。
しかし、魔法使いと言ったって、たいした魔法は使えなかったぞ。ヤマタノオロチに襲われていたら、一発で食い殺されていただろうな。俺はそんなことを考えていると、騎士の一人が叫んだ。
「おい、あれはエナジー殿の馬ではないか?」
「あの馬はエナジー殿の馬で間違いない。これはどういうことだ! 先ほどの話とは違うではないか。ここにエナジー殿が来たのだろう! 事と次第によってはこの村ごと責任を取ってもらうぞ!!」
急に色めき立つ騎士達。
しまった。こいつら、馬の判別が付くのか。まあ、大事な相棒だから見間違わないのか。
動揺している俺に姫騎士が問いかける。
「そういうことだ? 説明してくれ」
姫騎士を含めて騎士達は俺に疑惑を向ける。
「あ、ああ、あの馬は先日、この村に迷い込んだのですよ。ちょうどあなたたちが来た方向から歩いてきたんですよ。ちょうど三頭いましたので、この村の労働力にさせていただいていますが、まずかったですかね? 新しい畑を作るのに都合が良かったので」
「……」
姫騎士は俺をじっと見ていた。
さすがにこんな言い訳は通じないか。相手は二十人くらいか。さすがにベレートより強いって事は無いだろう。先手必勝で行くか?
「そうかそうか、それは仕方が無いな。新しい畑か? 仕事に精が出るな。ご苦労様。それでは、我々は戻って三人の捜索を続ける」
異世界の姫騎士もチョロかった。
騎士達は来た道を引き返していった。
「ふー、助かった」
姫騎士達を見送っているとネーラがどこからともなく現れた。
「なあ、マモル。あっち方に野生のオークが多数発見されたんだけど、大丈夫かニャ?」
「オークって魔族じゃないのか? この辺には魔王軍は進軍しないはずだろう?」
「ええ、そうニャ。だから野生のオークだニャ。人間だって人族と野生の猿がいるのと一緒ニャ。野生の物はあたいたちの管轄外だニャ」
「そうか、まあ、野生のオークぐらいなら、あれだけの人数がいれば問題ないだろう」
オークとは豚から進化した、二本歩行の魔獣。知能は高くないため、言葉は通じない。欲望に忠実なため食欲と性欲が異常に強い。ただし体が大きく、力が強く、痛みにも鈍感だ。
普通に戦えば、勝てるだろうと思っていた。
しかし俺は野生のオークを甘く見ていた。
武器なしの一対一で、人間は野生の猿には勝てない。
つまり、そういうことだ。
0
お気に入りに追加
77
あなたにおすすめの小説
前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります
京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。
なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。
今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。
しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。
今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。
とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。
地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。
追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい
桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています
実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…
小桃
ファンタジー
商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。
1.最強になれる種族
2.無限収納
3.変幻自在
4.並列思考
5.スキルコピー
5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。
世界最強の勇者は伯爵家の三男に転生し、落ちこぼれと疎まれるが、無自覚に無双する
平山和人
ファンタジー
世界最強の勇者と称えられる勇者アベルは、新たな人生を歩むべく今の人生を捨て、伯爵家の三男に転生する。
しかしアベルは忌み子と疎まれており、優秀な双子の兄たちと比べられ、学校や屋敷の人たちからは落ちこぼれと蔑まれる散々な日々を送っていた。
だが、彼らは知らなかったアベルが最強の勇者であり、自分たちとは遥かにレベルが違うから真の実力がわからないことに。
そんなことも知らずにアベルは自覚なく最強の力を振るい、世界中を驚かせるのであった。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる