19 / 52
第19話 異世界のポンプのエネルギー
しおりを挟む
モーターが勢いよく回り始めた。
「なにも起こらないわよ」
「ちょっと待っていろ」
ノアールの疑問に、俺がそう言うが早いか、ポンプから勢いよく水が吹き上がった。
「よし、これで魔力をもつ者が一人いたら水問題は解決だろう。このポンプから配管をつないで、水を村と畑に回せば村人の負担も減って、農作業もできるだろう。必要だったら、ポンプはまだ作れるからな」
俺は村長を見ると口を開けてびっくりしていた。
ノアールもネーラも同じ顔をしていた。
「おーい。三人とも、俺の話を聞いているか?」
「あ、すまん、すまん。確かに、これがあれば水問題は解決だ。水くみの時間が減った分、畑の開墾に人手を回せる。なんとかしてみよう」
「分かってくれましたか。村長」
村長とノアールが仲直りをしている時、俺たちを非難する声が聞こえた。
「なんだ、これは! 高貴な私に水をかけるなんて!」
その声は上から聞こえてきた。俺は上の道路の方を見ると、男が馬に乗ったままこちらを見ていた。
そして同じようにその男を見た村長が、声を上げた。
「げっ!」
「村長、知り合いか?」
それまで喜びに満ちていた顔が、一瞬にして苦虫を潰したような顔に変わる。
「ええ、ここアルパカ領主……いや、元領主の税収者だ。儂らから税金を搾り取るだけ搾り取って、儂らに何にも残さない最悪の輩じゃ」
「そうか」
俺は垂れ目の税収者の方を向き直った。
「おーい。悪かったな。そんなところに人がいたなんて、思わなかったからな」
「貴様、高貴な私のそんな下から話をするのは見上げた心持ちだが、あまりにも遠い。ここに来て、金と土下座を持って許しを請うべきだ。そうしなければ、この村の税金をこれまでの三割増しにする。まあ、土下座をしたとしても高貴な私に水をかけた事で二割増しは決定だがな」
金色の長い髪を後ろにまとめた男は、意地悪そうにそう言った。
ああ、こういう奴か。俺は村長が行った言葉を理解した。
元領主の使いの者。つまりは現王国からの独立した俺たちにとって敵対する存在。つまり、ここから追い出すべき存在。
俺はとりあえず、税収者と話し合いをするために川の上の道路に移動する。まあ、道路を歩いていて急に水をかけられたら、俺も怒るだろう。お帰り願うにしても、そこは謝っておくべきだろう。
「すみませんね。水をかけて」
俺は馬上の男に素直に頭を下げる。
男の後ろには護衛らしく防具を着けた剣士が二人、同じように馬に乗っていた。
「お前は私の言葉が聞こえていなかったのか? 下賤な者。私は土下座と言ったのですよ」
嫌みったらしく、傲慢に言い放った男の言葉にネーラがかみついた。
「あんた、マモルに何を言っているニャ」
「あなたはなにを……お、お前は魔族! なんでこんな所に! お前達、こいつを殺せ!」
あ、忘れていた。ネーラは人間に敵対する魔族だった。この村では俺の仲間だったため、特に周りから敵意を向けられることがなかったから、すっかり忘れていた。
馬に乗ったまま、剣士達は抜刀して、ネーラに襲いかかる。
「ちょっと待て、って言っても聞かないか。蒸着!」
俺はコンバットスーツを装着すると剣士二人を殴り飛ばした。縦にくるくる回りながら飛んでいく二人の剣士。
「大丈夫か? ネーラ?」
「マモル、ありがとうニャ」
「お、この馬、良い馬じゃないのか? もらっておこうぜ。家とここを行き来するのに馬があった方が便利だろう」
「そうニャ。何かと便利だニャ」
「き、きさま!」
俺とネーラが残った馬のことを穏やかに話し合っていると一人残った税収者が俺たちに叫んだ。
「ああ、あんた。まだいたんだ。それで、なんだったけ?」
「私は領主の代行者にて税を徴収する高貴なる者。貴様ら下郎が、簡単に話をしていい存在じゃないぞ! 村長! この無礼な輩のクビを跳ねろ! さもなくば、今年の税金は倍にするぞ」
男は自ら俺をどうしようとするのではなく、村長の力を借りようとする。先ほども吹き飛ばされた剣士にやらせろうとしただけだった。つまり、こいつ自身なんの力も無い。
「おい、このネーラもこの村も、俺の仲間だ。帰って領主に伝えろ。この村はもう、お前達に税金を払うつもりはない!」
「貴様、そんなことで引き下がれるか。私がただの税収者だと思うな! アグ、レル、ト、来たれアング、レミ、ローダン!!」
男の手のひらには炎の玉が現れた。
「あんた、魔法使いか?」
「ふふふ、今更、泣いて命乞いをしても無駄だぞ。骨の髄まで焼き尽くせ~~~!!!」
男は炎の玉を俺に投げつけてきた。子供のキャッチボールくらいの速度で。
その炎の玉を俺は左手で受け取り、吸収する。
ナイスキャッチ!
『エネルギー充填率972%』
エネルギー上昇率0%か。なんだ、こいつの魔法は弱くないか?
まあいいか……あ! そうだ、貴重な魔法使い。こいつを使わない手はない。
「な、なんだ、貴様は……ゲッフ!」
俺はパンチ一発、腹にたたき込んで気絶をさせる。
「村長、ポンプの動力を確保したぞ。生かさず殺さず、上手く搾り取ってくれ」
こうして、俺たちは村の水問題を一気に解決したのだった。
「なにも起こらないわよ」
「ちょっと待っていろ」
ノアールの疑問に、俺がそう言うが早いか、ポンプから勢いよく水が吹き上がった。
「よし、これで魔力をもつ者が一人いたら水問題は解決だろう。このポンプから配管をつないで、水を村と畑に回せば村人の負担も減って、農作業もできるだろう。必要だったら、ポンプはまだ作れるからな」
俺は村長を見ると口を開けてびっくりしていた。
ノアールもネーラも同じ顔をしていた。
「おーい。三人とも、俺の話を聞いているか?」
「あ、すまん、すまん。確かに、これがあれば水問題は解決だ。水くみの時間が減った分、畑の開墾に人手を回せる。なんとかしてみよう」
「分かってくれましたか。村長」
村長とノアールが仲直りをしている時、俺たちを非難する声が聞こえた。
「なんだ、これは! 高貴な私に水をかけるなんて!」
その声は上から聞こえてきた。俺は上の道路の方を見ると、男が馬に乗ったままこちらを見ていた。
そして同じようにその男を見た村長が、声を上げた。
「げっ!」
「村長、知り合いか?」
それまで喜びに満ちていた顔が、一瞬にして苦虫を潰したような顔に変わる。
「ええ、ここアルパカ領主……いや、元領主の税収者だ。儂らから税金を搾り取るだけ搾り取って、儂らに何にも残さない最悪の輩じゃ」
「そうか」
俺は垂れ目の税収者の方を向き直った。
「おーい。悪かったな。そんなところに人がいたなんて、思わなかったからな」
「貴様、高貴な私のそんな下から話をするのは見上げた心持ちだが、あまりにも遠い。ここに来て、金と土下座を持って許しを請うべきだ。そうしなければ、この村の税金をこれまでの三割増しにする。まあ、土下座をしたとしても高貴な私に水をかけた事で二割増しは決定だがな」
金色の長い髪を後ろにまとめた男は、意地悪そうにそう言った。
ああ、こういう奴か。俺は村長が行った言葉を理解した。
元領主の使いの者。つまりは現王国からの独立した俺たちにとって敵対する存在。つまり、ここから追い出すべき存在。
俺はとりあえず、税収者と話し合いをするために川の上の道路に移動する。まあ、道路を歩いていて急に水をかけられたら、俺も怒るだろう。お帰り願うにしても、そこは謝っておくべきだろう。
「すみませんね。水をかけて」
俺は馬上の男に素直に頭を下げる。
男の後ろには護衛らしく防具を着けた剣士が二人、同じように馬に乗っていた。
「お前は私の言葉が聞こえていなかったのか? 下賤な者。私は土下座と言ったのですよ」
嫌みったらしく、傲慢に言い放った男の言葉にネーラがかみついた。
「あんた、マモルに何を言っているニャ」
「あなたはなにを……お、お前は魔族! なんでこんな所に! お前達、こいつを殺せ!」
あ、忘れていた。ネーラは人間に敵対する魔族だった。この村では俺の仲間だったため、特に周りから敵意を向けられることがなかったから、すっかり忘れていた。
馬に乗ったまま、剣士達は抜刀して、ネーラに襲いかかる。
「ちょっと待て、って言っても聞かないか。蒸着!」
俺はコンバットスーツを装着すると剣士二人を殴り飛ばした。縦にくるくる回りながら飛んでいく二人の剣士。
「大丈夫か? ネーラ?」
「マモル、ありがとうニャ」
「お、この馬、良い馬じゃないのか? もらっておこうぜ。家とここを行き来するのに馬があった方が便利だろう」
「そうニャ。何かと便利だニャ」
「き、きさま!」
俺とネーラが残った馬のことを穏やかに話し合っていると一人残った税収者が俺たちに叫んだ。
「ああ、あんた。まだいたんだ。それで、なんだったけ?」
「私は領主の代行者にて税を徴収する高貴なる者。貴様ら下郎が、簡単に話をしていい存在じゃないぞ! 村長! この無礼な輩のクビを跳ねろ! さもなくば、今年の税金は倍にするぞ」
男は自ら俺をどうしようとするのではなく、村長の力を借りようとする。先ほども吹き飛ばされた剣士にやらせろうとしただけだった。つまり、こいつ自身なんの力も無い。
「おい、このネーラもこの村も、俺の仲間だ。帰って領主に伝えろ。この村はもう、お前達に税金を払うつもりはない!」
「貴様、そんなことで引き下がれるか。私がただの税収者だと思うな! アグ、レル、ト、来たれアング、レミ、ローダン!!」
男の手のひらには炎の玉が現れた。
「あんた、魔法使いか?」
「ふふふ、今更、泣いて命乞いをしても無駄だぞ。骨の髄まで焼き尽くせ~~~!!!」
男は炎の玉を俺に投げつけてきた。子供のキャッチボールくらいの速度で。
その炎の玉を俺は左手で受け取り、吸収する。
ナイスキャッチ!
『エネルギー充填率972%』
エネルギー上昇率0%か。なんだ、こいつの魔法は弱くないか?
まあいいか……あ! そうだ、貴重な魔法使い。こいつを使わない手はない。
「な、なんだ、貴様は……ゲッフ!」
俺はパンチ一発、腹にたたき込んで気絶をさせる。
「村長、ポンプの動力を確保したぞ。生かさず殺さず、上手く搾り取ってくれ」
こうして、俺たちは村の水問題を一気に解決したのだった。
0
お気に入りに追加
77
あなたにおすすめの小説
前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります
京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。
なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。
今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。
しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。
今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。
とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。
地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…
小桃
ファンタジー
商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。
1.最強になれる種族
2.無限収納
3.変幻自在
4.並列思考
5.スキルコピー
5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。
世界最強の勇者は伯爵家の三男に転生し、落ちこぼれと疎まれるが、無自覚に無双する
平山和人
ファンタジー
世界最強の勇者と称えられる勇者アベルは、新たな人生を歩むべく今の人生を捨て、伯爵家の三男に転生する。
しかしアベルは忌み子と疎まれており、優秀な双子の兄たちと比べられ、学校や屋敷の人たちからは落ちこぼれと蔑まれる散々な日々を送っていた。
だが、彼らは知らなかったアベルが最強の勇者であり、自分たちとは遥かにレベルが違うから真の実力がわからないことに。
そんなことも知らずにアベルは自覚なく最強の力を振るい、世界中を驚かせるのであった。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる