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第13話 異世界の王女の決意

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 俺たちは山に入り、ヤマタノオロチの巣を見つけた。
 あれだけの巨体故、移動の痕跡は消せない。なぎ倒された木々を逆にたどっていけば簡単に山の洞窟にたどり着く。

「なあ、ネーラ。あの大蛇がもう一匹この中にいるって言うことはないよな」
「それは分からないニャ。でも、ここから聞く限り、大きな物が動いている音は聞こえないニャ。いたとしても眠っているんじゃないかニャ」
「なにか異常があったら、すぐに知らせてくれ」
「わかったニャ!」

 ネーラは、その猫耳をパタパタさせて答えた。
 洞窟は薄暗く、しっとりとした冷たい、そして生臭い空気が流れていた。夜目の利くネーラに先導されて、奥へと進む。
 幸いなことに中に大蛇はいなかった。
 その代わり、どこから集めてきたのか分からないが、金貨や宝石などの財宝が置かれていた。

「ネーラ、これってどのくらいの価値がある?」
「かなりの価値ですよ。あたいたち四人くらいなら軽く一生暮らしていけます。子供もあたいが三人、ノアールが二人作っても大丈夫です」

 おい! なんでネーラとノアールの子供の話が出てくるんだよ。なんで俺がお前たちの子供の面倒を見なければいけないんだよ。子供の父親に養ってもらえよ。

「よく分からんが、分かった。かなりの価値があるという事だな。半分は村の発達に使おう。残り半分はあの屋敷に置いておく。メイさんの首輪を外さなきゃいけないしな」
「ちゃんと養育費は残しておいてくださいニャ。子供達に貧乏な思いはさせたくないニャ」
「おい、何で俺が、出来てもいない子供の心配をせにゃならないんだよ」
「認知……してくれないニャ?」
「おい、いい加減にしないと怒るぞ」

 俺がネーラの尻尾を引っ張ると、ネーラはようやく落ちついた。
 俺達は財宝を村へと持ち帰ると村長達は、驚いた様子でざわさわとお互いに何やら言い合っていた。
 当然だ。
 害獣であるヤマタノオロチを退治しただけでなく、その体を食事として村民みんなで腹一杯になった上に、財宝まで手に入ったのだ。

「この財宝はどこから?」
「山の洞窟に湧いていた」
「湧いていたということは財宝温泉?」
「鹿児島か!? ここは!」
「かごしま? なんですか? それは?」
「いい、忘れてくれ。それよりもこの金は、後日来るノアールと一緒に村の発展に役立ててくれ」

~*~*~

 その後、俺たちは屋敷に戻り、ノアールとメイに村での出来事を話した。そこの運営にノアールが加わる話もふくめて。

「わかりました。私のできる限り限りお手伝いします」
「何、言っているんだ?」
「え!? だめでしょうか?」
「だめに決まっているだろう。何を考えているんだ?」

 俺の言葉にノアールは、どうしたら良いか分からない顔をしている。
 そこにメイが優しい声で助け船を出す。

「ノアール。あなたの将来とマモルさんの思いをよく考えてみなさい。あなたが何をするべきか」
「わたくしの将来?」
「そうです」

 ノアールは考え込む。メイの言葉を飲み込むように。
 あの日の俺の言葉と一緒に咀嚼する。将来的に誰が王になるのか。

「分かりました。わたくしがその村をマモルさんの国の中枢になるように発展させます」
「よし、その粋だ。何か問題ごとがあったら、俺への相談を忘れないようにな」
「はい!」
「メイさん。ノアールのフォローをお願いします」
「分かりました」

 さて、こちらの体制は、やっとスタートラインに立ったな。
 まずは魔王軍側にこれを認めさせないとな。
 それとメイの首輪の件もまだ残っている。
 早いうちに魔王のところへ行く必要があるな。サラマンディーネに連絡を取らないとな。

~*~*~

「諜報部部長サラマンディーネ入ります」

 尻尾の切れた女性リザードマンが魔王室へと入ってきた。

「ご苦労さん。それで勇者の事は分かりましたか?」
「中間報告となりますが、勇者達についてまとめた物がこちらになります」
「ありがとう。ディーネは仕事が早くて助かるよ。それで我が国に危険な人物はいたかい?」
「危険度は不明ですが、風変わりなのが闇の勇者ですね。現在、王国と敵対しております。闇の王女と共に」
「王国に召喚されたのに? それは面白いね。そのうち一度会ってみたいな」
「それは結構ですが、勝手にお会いになるのは止めてくださいね」
「危険かい?」
「闇の勇者の強さは、それほどでもありませんが、何やら私達に知らない物を持っている不気味さを感じました」
「わかった。会うときはこの魔王城か、ザフィーネでも連れて行くよ」
「お約束ですよ」
「しかし、これで全員そろったのか。計画を見直さないとな」
「よろしくお願いします。それでは諜報部の最優先事項は引き続き、勇者の動向とします」
「ああ、任せた」

 そうして、静かに魔王室の扉は閉じられた。
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