僕とコウ

三原みぱぱ

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送別会と地震

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 コウは無事に選考を通過したため、三年から休学をすることになった。

「明日から東京か?」
「ああ、荷物も今日、積み込んだしな。長いようで短かったな」
「あたしなんて一年ですからあっと言う間ですよ。寂しくなりますね」

 僕の家でコウの送別会をしていた。
 コウと僕と唯の三人きりの送別会。
 ほかにも学校の友人を呼ぼうかと提案したのだが、コウは僕たち二人だけでいいと断った。
 
「それでいつから海外に行くんだ?」
「今年いっぱいは訓練とかのはずだから、順調にいって来年初めくらいかな?」
「それまでは東京か? じゃあ、夏休みなら会えるな」
「それまでにはいい店探しとくぜ」

 僕はよろしくと缶ビールで乾杯した。

「海外はどこに行くつもりなんですか?」
「セネガルだよ」
「どこですか? そこ」

 サッカーもラリーも興味がない唯にはなじみのない国名だ。

「アフリカか。遠いな。向こうはサッカーが盛んなんだろう」
「みたいだな。俺も高校時代までやってたから、サッカーで現地の人と交流もしやすいだろう」
「まあ、お前だったらどこ行っても仲良くやれそうだけどな。病気にだけは気をつけろよ」

 こうしてコウは九州を離れてしまった。

 僕は三年になり、真剣に将来の事を考え始め、先生や先輩、インターネットなどから情報収集をして夏休みにはインターンにも行ったりした。
 そしてあっという間に二年が過ぎ、僕は社会人になった。

「遠距離恋愛は続かないよ」

 そう言ったコウの言葉が楔となり、僕は九州の会社に就職していた。
 そして入社して間もないころ、それは起こった。
 
 熊本地震

 僕がいたところはさほど揺れなかったが、福島の時にさんざんテレビに映し出された津波が頭をよぎる。

「唯、大丈夫か? 今どこにいる?」
「今、家です。結構揺れましたけど、こっちは大丈夫です。たっくんは大丈夫ですか? 海に近づいたらだめですよ」

 唯も同じ考えだったらしい。

「こっちも大丈夫だ。明日も仕事だから家でゆっくりしてた。さすがにアパートの二階にいれば大丈夫だろう。海からも結構離れているからな」

 それから津波警報が解除されるまで僕はいつでも逃げられるように準備をして起きていた。

 それまで大きな地震がほとんどないと言われていた九州でさえ、地震が起きる。
 南海トラフ地震、阿蘇山や富士山の噴火もいつ起こるかわからない。
 戦争が起こるかもしれない。
 そんな大きなことだけではない。弟のように事故に遭うこともある。病気になることだってある。
 その時に僕は後悔なくその時を迎えられるだろうか?
 コウは言っていた。

「やりたいこと全部やって、最後の楽しみで死ぬ瞬間を知りたい」

 そのためにコウは海外へ行った。僕は何をしたのだろう。何をしたいのだろう。
 僕は日曜日の昼、自分のアパートで繰り返しテレビに映し出されるニュースを見ながら自問自答をしていた。
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