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クリスマスイブと帰省
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クリスマスイブには街のイルミネーションで彩られていた。色とりどりのライト、行き交うカップル同様、二人でイルミネーションを見ていた。
「長崎の夜景を思い出すな」
「綺麗でしたよね」
僕たちは手を繋いでイルミネーションを見て回っていると、唯の手は冷たくなっていた。
「そろそろ戻ろうか?」
「そうですね。寒くなってきちゃいました」
僕はケーキを片手にもう片方の腕に愛しい彼女がいる状態で僕の部屋に戻る。
エアコンとコタツのスイッチを入れて冷えた部屋と体が温めるのを待つ。
「美味しかったですね。あの店」
僕たちはちょっとおしゃれで学生でも手が届く、イタリアンレストランで食事を済ませた後、イルミネーションを見て帰って来た。
「でも高くなかったですか?」
初めは唯が家で料理を作ると言っていたが、せっかくの初クリスマスだ、男の見栄を張らせてもらった。
割り勘にすると言っていた唯を説得し、クリスマスケーキは唯持ちと言う妥協点を見出した。
「楽しかったですけど、この部屋がやっぱり落ち着きますね」
唯はベージュのコートを脱ぎ、コタツに入る。もうすっかり自分の家のようにくつろいでいる。
「コーヒー入れますね」
「ああ、それで本当に今日、泊まっていくのか?」
「ええ、両親には言ってあるから大丈夫ですよ」
僕たちは長い金髪の女の子のアニメDVDを見ながら、唯はイチゴたっぷりのショートケーキ、僕はアップルパイを食べている。
「たっくん、クリスマスにアップルパイってちょっと地味じゃないですか?」
「地味もなにもアップルパイ好きなんだよ。言っとくけどアップルパイって意外と店によって味が違うんだからな」
「へ~ちなみにたっくんはどんなアップルパイが好きなんですか?」
「まず、りんごジャムのアップルパイは論外だ。りんごの酸味と歯ごたえを残したコンポートの甘さ、カスタードのコク、パイのサクサクさのその三位が調和したアップルパイが好きだな」
「たっくん。めんどくさ~い。それでそのアップルパイはどうなんですか?」
僕はアップルパイを差し出す。
「まず、食べてみな」
「いただきますね。あ、美味しい」
「そうだろう。ここのアップルパイはなかなか美味いだろう。これを温めてバニラアイスと一緒に食べるとさらに美味いぞ」
「確かに次はバニラアイスも買ってきましょう。こっちも美味しいですよ」
「こっちも美味いな。いちごのケーキは王道だよな」
唯がケーキの後片付けをしてる間に僕はお風呂の準備をする。
「先に風呂入りなよ」
「はい」
そして僕たちは初めての朝を迎えた。
「たっくん。朝ですよ。起きてください」
「やだ、もう少しこのままでいたい」
そう言って僕はきめ細やかな唯の肌に抱きつく。
暖かく、優しい唯をいつまでも抱きしめていたくなる。
「明日から、実家に戻られるんですね」
「ああ、両親のことも気になるからな」
「そうですよね」
唯は少し表情に影を落としたが、すぐにいつもの唯に戻った。
次の日、名残惜しかったが僕は四国の実家に戻った。
弟の葬式から初めての帰省はどんな顔をしていいかわからなかった。
「おかえり」
母親が普通に迎えてくれくれた。
僕も変に身構えるのをやめた。
「ああ、ただいま」
僕は荷物を置き、お土産を仏壇に供えた。
少し静かになった実家、少し年老いた両親、その少しは二度と戻らない変化だった。
「どうだ、そっちは」
「ああ、元気にやってるよ」
普段は何も言わない父親が話しかけてきた。
「親父達は元気だったか?」
「ああ、少しは落ち着いてきたよ」
当たり障りのない話しをして過ごした。
僕がもどる日、両親は玄関まで見送りにきた。
「次はいつ戻ってくるの?」
「分からない。夏休みに戻って来れるかどうかかな?」
「そう。……達也」
「なに?」
「体には気をつけてね」
「ああ」
僕は玄関の扉を閉めた。
「長崎の夜景を思い出すな」
「綺麗でしたよね」
僕たちは手を繋いでイルミネーションを見て回っていると、唯の手は冷たくなっていた。
「そろそろ戻ろうか?」
「そうですね。寒くなってきちゃいました」
僕はケーキを片手にもう片方の腕に愛しい彼女がいる状態で僕の部屋に戻る。
エアコンとコタツのスイッチを入れて冷えた部屋と体が温めるのを待つ。
「美味しかったですね。あの店」
僕たちはちょっとおしゃれで学生でも手が届く、イタリアンレストランで食事を済ませた後、イルミネーションを見て帰って来た。
「でも高くなかったですか?」
初めは唯が家で料理を作ると言っていたが、せっかくの初クリスマスだ、男の見栄を張らせてもらった。
割り勘にすると言っていた唯を説得し、クリスマスケーキは唯持ちと言う妥協点を見出した。
「楽しかったですけど、この部屋がやっぱり落ち着きますね」
唯はベージュのコートを脱ぎ、コタツに入る。もうすっかり自分の家のようにくつろいでいる。
「コーヒー入れますね」
「ああ、それで本当に今日、泊まっていくのか?」
「ええ、両親には言ってあるから大丈夫ですよ」
僕たちは長い金髪の女の子のアニメDVDを見ながら、唯はイチゴたっぷりのショートケーキ、僕はアップルパイを食べている。
「たっくん、クリスマスにアップルパイってちょっと地味じゃないですか?」
「地味もなにもアップルパイ好きなんだよ。言っとくけどアップルパイって意外と店によって味が違うんだからな」
「へ~ちなみにたっくんはどんなアップルパイが好きなんですか?」
「まず、りんごジャムのアップルパイは論外だ。りんごの酸味と歯ごたえを残したコンポートの甘さ、カスタードのコク、パイのサクサクさのその三位が調和したアップルパイが好きだな」
「たっくん。めんどくさ~い。それでそのアップルパイはどうなんですか?」
僕はアップルパイを差し出す。
「まず、食べてみな」
「いただきますね。あ、美味しい」
「そうだろう。ここのアップルパイはなかなか美味いだろう。これを温めてバニラアイスと一緒に食べるとさらに美味いぞ」
「確かに次はバニラアイスも買ってきましょう。こっちも美味しいですよ」
「こっちも美味いな。いちごのケーキは王道だよな」
唯がケーキの後片付けをしてる間に僕はお風呂の準備をする。
「先に風呂入りなよ」
「はい」
そして僕たちは初めての朝を迎えた。
「たっくん。朝ですよ。起きてください」
「やだ、もう少しこのままでいたい」
そう言って僕はきめ細やかな唯の肌に抱きつく。
暖かく、優しい唯をいつまでも抱きしめていたくなる。
「明日から、実家に戻られるんですね」
「ああ、両親のことも気になるからな」
「そうですよね」
唯は少し表情に影を落としたが、すぐにいつもの唯に戻った。
次の日、名残惜しかったが僕は四国の実家に戻った。
弟の葬式から初めての帰省はどんな顔をしていいかわからなかった。
「おかえり」
母親が普通に迎えてくれくれた。
僕も変に身構えるのをやめた。
「ああ、ただいま」
僕は荷物を置き、お土産を仏壇に供えた。
少し静かになった実家、少し年老いた両親、その少しは二度と戻らない変化だった。
「どうだ、そっちは」
「ああ、元気にやってるよ」
普段は何も言わない父親が話しかけてきた。
「親父達は元気だったか?」
「ああ、少しは落ち着いてきたよ」
当たり障りのない話しをして過ごした。
僕がもどる日、両親は玄関まで見送りにきた。
「次はいつ戻ってくるの?」
「分からない。夏休みに戻って来れるかどうかかな?」
「そう。……達也」
「なに?」
「体には気をつけてね」
「ああ」
僕は玄関の扉を閉めた。
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