僕とコウ

三原みぱぱ

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ナンパと打ち上げ

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「すみません。さなえちゃんが占いやってくれるって言ってたんですけど」
「まあ、友達に紹介されたと思えば気にならないよ」

 気にならないわけではないが、そんなことぐらいで楽しい文化祭を台無しにするわけにはいかない。
 僕たちは屋台で焼きそばやフランクフルトなどを買って、一緒に文化祭を満喫した。

「ちょっとトイレ行ってくる」

 そろそろ、コウ達の軽音部が出てくる時間までもうすぐなのでステージに移動していた。

「じゃあ、ここで待ってますね」

 落ち着いた着物姿の唯がそう言って手を振る。
 トイレに行くと運悪く、数人待っていた。仕方がないのでおとなしく順番待ちをして用を済ませる。
 外に出ると唯が男性二人と話している。
 友人だろうか? 僕は声をかけるべきか様子を見ていると唯が僕に気がつく。
 僕に手を振り、こちらに来ると腕を引っ張ってその場を離れる。

「いいのか? 友達は」
「知らない人です。ナンパですよ。本当にいるんですねあんな人」

 着物姿の可愛い唯の事だ、声をかけられてもおかしくない。人の彼女に声をかけて腹が立つ反面、ナンパされるほど他から見てもやっぱりかわいいんだろうなという気持ちが入り混じって変な気持ちになった。

「唯選手、初ナンパのお気持ちはいかがでしょうか?」
「う~ん、そうですね。世の中には物好きがって何言わせるんですか? アホアナウンサーですか?」

 さっきまで硬かった唯の表情が柔らかくなった。

「そろそろ、ステージに行くか。始まるぞ」
「はい!」

 二年目にもなるとコウも落ち着いたようだ。
 袴田さんを探したが、この人数の中で探すにはちょっと無理があったので、僕はあきらめて唯とライブを楽しむ。
 ハードな曲とバラードの二曲で他のメンバーと交代した。

「演奏している時のコウさんってかっこいいですね」
「そりゃ~もてるために軽音部に入ったやつだ。原動力が違うよ」
「音楽が好きで、じゃないんですか?」
「音楽が好きプラスもてたいで二乗のパワーだよ」
「なんか男の人って単純なんですね」

 いやいや女性はそのパワーの向け先が美容や化粧じゃないのか? という言葉はぐっと飲みこんだ。
 
 文化祭最終日、茶道部で打ち上げを行った。

「それでお前ら、クリスマスはイチャイチャするのか?」

 すっかり出来上がった風祭部長が僕たちに絡んできた。

「初めての二人のクリスマスですもの。期待してますよ、たっくん」

 唯がそう言っていたずらっ子のような表情で僕を見る。

「ま、任せとけ!」
「嘘ですよ。二人でいれればあたしは満足です!」
「唯……」

 僕は唯を見つめる。

「おうおう、このバカップルは~! いいねえ、若いもんは~」
「そういう姐御はどうするんですか? クリスマス」

 話の矛先を変えよう。

「クリスマス? 毎年のごとく春奈と一緒に飲んで、二人でリア充滅べ~って叫ぶのさ。その中にはお前たちも入ってるけどな」

 悪魔の笑顔をした風祭部長の頭がぱこ~んと叩かれる。

「叫んでるのは杏里だけでしょう。私はそんなこと言わないわよ」

 見かねた小坂井さんが助けに来てくれた。
 黒い長い髪の小坂井さんはおとなしい、ワンピースを着ていた。
 お嬢様風の小坂井さんとおっさん女と名高い風祭さんがなぜ気が合うのかが、今の茶道部の最大の謎だ。

「毎年二人でクリスマス過ごしているって、二人とも彼氏はいないんですか?」

 唯、いいぞ! その空気を読まない質問。

「残念ながらね。そうなのよ~。かわいそうでしょ。竹中君もらっていい?」

 そう言って小坂井さんが僕に近づく。

「だめです!」

 そう言って僕を引っ張る唯。

「裏切者!」

 そう言って小坂井さんを引っ張る風祭さん。

「冗談よ、冗談。杏里、ラブラブなカップルの邪魔しちゃだめよ。あっちに行きましょう」

 そう言ってふたりは別の場所に行ってしまった。

「浮気者」
「え! なに?」
「なんでもないです!」

 その後しばらく唯は不機嫌だった。
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