21 / 25
ナンパと打ち上げ
しおりを挟む
「すみません。さなえちゃんが占いやってくれるって言ってたんですけど」
「まあ、友達に紹介されたと思えば気にならないよ」
気にならないわけではないが、そんなことぐらいで楽しい文化祭を台無しにするわけにはいかない。
僕たちは屋台で焼きそばやフランクフルトなどを買って、一緒に文化祭を満喫した。
「ちょっとトイレ行ってくる」
そろそろ、コウ達の軽音部が出てくる時間までもうすぐなのでステージに移動していた。
「じゃあ、ここで待ってますね」
落ち着いた着物姿の唯がそう言って手を振る。
トイレに行くと運悪く、数人待っていた。仕方がないのでおとなしく順番待ちをして用を済ませる。
外に出ると唯が男性二人と話している。
友人だろうか? 僕は声をかけるべきか様子を見ていると唯が僕に気がつく。
僕に手を振り、こちらに来ると腕を引っ張ってその場を離れる。
「いいのか? 友達は」
「知らない人です。ナンパですよ。本当にいるんですねあんな人」
着物姿の可愛い唯の事だ、声をかけられてもおかしくない。人の彼女に声をかけて腹が立つ反面、ナンパされるほど他から見てもやっぱりかわいいんだろうなという気持ちが入り混じって変な気持ちになった。
「唯選手、初ナンパのお気持ちはいかがでしょうか?」
「う~ん、そうですね。世の中には物好きがって何言わせるんですか? アホアナウンサーですか?」
さっきまで硬かった唯の表情が柔らかくなった。
「そろそろ、ステージに行くか。始まるぞ」
「はい!」
二年目にもなるとコウも落ち着いたようだ。
袴田さんを探したが、この人数の中で探すにはちょっと無理があったので、僕はあきらめて唯とライブを楽しむ。
ハードな曲とバラードの二曲で他のメンバーと交代した。
「演奏している時のコウさんってかっこいいですね」
「そりゃ~もてるために軽音部に入ったやつだ。原動力が違うよ」
「音楽が好きで、じゃないんですか?」
「音楽が好きプラスもてたいで二乗のパワーだよ」
「なんか男の人って単純なんですね」
いやいや女性はそのパワーの向け先が美容や化粧じゃないのか? という言葉はぐっと飲みこんだ。
文化祭最終日、茶道部で打ち上げを行った。
「それでお前ら、クリスマスはイチャイチャするのか?」
すっかり出来上がった風祭部長が僕たちに絡んできた。
「初めての二人のクリスマスですもの。期待してますよ、たっくん」
唯がそう言っていたずらっ子のような表情で僕を見る。
「ま、任せとけ!」
「嘘ですよ。二人でいれればあたしは満足です!」
「唯……」
僕は唯を見つめる。
「おうおう、このバカップルは~! いいねえ、若いもんは~」
「そういう姐御はどうするんですか? クリスマス」
話の矛先を変えよう。
「クリスマス? 毎年のごとく春奈と一緒に飲んで、二人でリア充滅べ~って叫ぶのさ。その中にはお前たちも入ってるけどな」
悪魔の笑顔をした風祭部長の頭がぱこ~んと叩かれる。
「叫んでるのは杏里だけでしょう。私はそんなこと言わないわよ」
見かねた小坂井さんが助けに来てくれた。
黒い長い髪の小坂井さんはおとなしい、ワンピースを着ていた。
お嬢様風の小坂井さんとおっさん女と名高い風祭さんがなぜ気が合うのかが、今の茶道部の最大の謎だ。
「毎年二人でクリスマス過ごしているって、二人とも彼氏はいないんですか?」
唯、いいぞ! その空気を読まない質問。
「残念ながらね。そうなのよ~。かわいそうでしょ。竹中君もらっていい?」
そう言って小坂井さんが僕に近づく。
「だめです!」
そう言って僕を引っ張る唯。
「裏切者!」
そう言って小坂井さんを引っ張る風祭さん。
「冗談よ、冗談。杏里、ラブラブなカップルの邪魔しちゃだめよ。あっちに行きましょう」
そう言ってふたりは別の場所に行ってしまった。
「浮気者」
「え! なに?」
「なんでもないです!」
その後しばらく唯は不機嫌だった。
「まあ、友達に紹介されたと思えば気にならないよ」
気にならないわけではないが、そんなことぐらいで楽しい文化祭を台無しにするわけにはいかない。
僕たちは屋台で焼きそばやフランクフルトなどを買って、一緒に文化祭を満喫した。
「ちょっとトイレ行ってくる」
そろそろ、コウ達の軽音部が出てくる時間までもうすぐなのでステージに移動していた。
「じゃあ、ここで待ってますね」
落ち着いた着物姿の唯がそう言って手を振る。
トイレに行くと運悪く、数人待っていた。仕方がないのでおとなしく順番待ちをして用を済ませる。
外に出ると唯が男性二人と話している。
友人だろうか? 僕は声をかけるべきか様子を見ていると唯が僕に気がつく。
僕に手を振り、こちらに来ると腕を引っ張ってその場を離れる。
「いいのか? 友達は」
「知らない人です。ナンパですよ。本当にいるんですねあんな人」
着物姿の可愛い唯の事だ、声をかけられてもおかしくない。人の彼女に声をかけて腹が立つ反面、ナンパされるほど他から見てもやっぱりかわいいんだろうなという気持ちが入り混じって変な気持ちになった。
「唯選手、初ナンパのお気持ちはいかがでしょうか?」
「う~ん、そうですね。世の中には物好きがって何言わせるんですか? アホアナウンサーですか?」
さっきまで硬かった唯の表情が柔らかくなった。
「そろそろ、ステージに行くか。始まるぞ」
「はい!」
二年目にもなるとコウも落ち着いたようだ。
袴田さんを探したが、この人数の中で探すにはちょっと無理があったので、僕はあきらめて唯とライブを楽しむ。
ハードな曲とバラードの二曲で他のメンバーと交代した。
「演奏している時のコウさんってかっこいいですね」
「そりゃ~もてるために軽音部に入ったやつだ。原動力が違うよ」
「音楽が好きで、じゃないんですか?」
「音楽が好きプラスもてたいで二乗のパワーだよ」
「なんか男の人って単純なんですね」
いやいや女性はそのパワーの向け先が美容や化粧じゃないのか? という言葉はぐっと飲みこんだ。
文化祭最終日、茶道部で打ち上げを行った。
「それでお前ら、クリスマスはイチャイチャするのか?」
すっかり出来上がった風祭部長が僕たちに絡んできた。
「初めての二人のクリスマスですもの。期待してますよ、たっくん」
唯がそう言っていたずらっ子のような表情で僕を見る。
「ま、任せとけ!」
「嘘ですよ。二人でいれればあたしは満足です!」
「唯……」
僕は唯を見つめる。
「おうおう、このバカップルは~! いいねえ、若いもんは~」
「そういう姐御はどうするんですか? クリスマス」
話の矛先を変えよう。
「クリスマス? 毎年のごとく春奈と一緒に飲んで、二人でリア充滅べ~って叫ぶのさ。その中にはお前たちも入ってるけどな」
悪魔の笑顔をした風祭部長の頭がぱこ~んと叩かれる。
「叫んでるのは杏里だけでしょう。私はそんなこと言わないわよ」
見かねた小坂井さんが助けに来てくれた。
黒い長い髪の小坂井さんはおとなしい、ワンピースを着ていた。
お嬢様風の小坂井さんとおっさん女と名高い風祭さんがなぜ気が合うのかが、今の茶道部の最大の謎だ。
「毎年二人でクリスマス過ごしているって、二人とも彼氏はいないんですか?」
唯、いいぞ! その空気を読まない質問。
「残念ながらね。そうなのよ~。かわいそうでしょ。竹中君もらっていい?」
そう言って小坂井さんが僕に近づく。
「だめです!」
そう言って僕を引っ張る唯。
「裏切者!」
そう言って小坂井さんを引っ張る風祭さん。
「冗談よ、冗談。杏里、ラブラブなカップルの邪魔しちゃだめよ。あっちに行きましょう」
そう言ってふたりは別の場所に行ってしまった。
「浮気者」
「え! なに?」
「なんでもないです!」
その後しばらく唯は不機嫌だった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
みいちゃんといっしょ。
新道 梨果子
ライト文芸
お父さんとお母さんが離婚して半年。
お父さんが新しい恋人を家に連れて帰ってきた。
みいちゃんと呼んでね、というその派手な女の人は、あからさまにホステスだった。
そうして私、沙希と、みいちゃんとの生活が始まった。
――ねえ、お父さんがいなくなっても、みいちゃんと私は家族なの?
※ 「小説家になろう」(検索除外中)、「ノベマ!」にも掲載しています。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
思い出を売った女
志波 連
ライト文芸
結婚して三年、あれほど愛していると言っていた夫の浮気を知った裕子。
それでもいつかは戻って来ることを信じて耐えることを決意するも、浮気相手からの執拗な嫌がらせに心が折れてしまい、離婚届を置いて姿を消した。
浮気を後悔した孝志は裕子を探すが、痕跡さえ見つけられない。
浮気相手が妊娠し、子供のために再婚したが上手くいくはずもなかった。
全てに疲弊した孝志は故郷に戻る。
ある日、子供を連れて出掛けた海辺の公園でかつての妻に再会する。
あの頃のように明るい笑顔を浮かべる裕子に、孝志は二度目の一目惚れをした。
R15は保険です
他サイトでも公開しています
表紙は写真ACより引用しました
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
野良インコと元飼主~山で高校生活送ります~
浅葱
ライト文芸
小学生の頃、不注意で逃がしてしまったオカメインコと山の中の高校で再会した少年。
男子高校生たちと生き物たちのわちゃわちゃ青春物語、ここに開幕!
オカメインコはおとなしく臆病だと言われているのに、再会したピー太は目つきも鋭く凶暴になっていた。
学校側に乞われて男子校の治安維持部隊をしているピー太。
ピー太、お前はいったいこの学校で何をやってるわけ?
頭がよすぎるのとサバイバル生活ですっかり強くなったオカメインコと、
なかなか背が伸びなくてちっちゃいとからかわれる高校生男子が織りなす物語です。
周りもなかなか個性的ですが、主人公以外にはBLっぽい内容もありますのでご注意ください。(主人公はBLになりません)
ハッピーエンドです。R15は保険です。
表紙の写真は写真ACさんからお借りしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる