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動物園と夜景
しおりを挟む カルロの動揺に反応するようにアンドレが立ち上がる。
「懺悔の時間は終わりにしましょう。」
アンドレの低く野太い声が手入れされた斧が切り株に突き刺さるように強い意思と恐怖を含んで牢の空気を揺らした。
カルロは弾かれたようにアンドレを見る。
「アンドレ、お座りなさい。」
カルロの穏やかな声にアンドレは困った顔でカルロを見つめる。
「朝日が昇りました。こんな奴には勿体ないくらいの時間をさきましたぜ。
もう、戻りましょう。」
アンドレは立ったまま、カルロを急かした。
アンドレの不安がカルロの心に伝染する。早くなる脈拍を自覚しながらカルロは穏やかに微笑みを返した。アンドレは、カルロの言葉に囚われたように何も出来ずにカルロを悲しそうに見つめた。
「アンドレ、ビビるなよ。昼には私は、地獄に戻る。おまえさんとの付き合いもこれきりだ。
それに、私はこうして檻の中にいるじゃないか!怖がるなんて、お前らしくないぞ。」
プレアティは、くくっとバカにしたような軽い笑いを漏らしてアンドレを挑発する。が、3人の同僚を傷つけられたアンドレは耳を貸さなかった。
悪魔の言葉に耳を貸してはいけない。
アンドレはカルロを見つめたまま、カルロに問いかけるように大袈裟に十字を切り祈る。
「カルロ様、アイツは悪魔です。これ以上の慈悲などかける価値もありません。」
アンドレの意思の強さをカルロはその目に見た。
カルロは迷った。
プレアティの話を聞くのは今しかない。
特に現在、目の前にいるプレアティは、1440年のジル・ド・レ男爵の事件を思わせた。
少年の誘拐と殺戮。
それに、微妙に自著と食い違う過去のプレアティについても知りたかった。
レディ ヨランド・タラゴン…。国王殿下の義母が登場するとは穏やかではない。
「酷いな、アンドレ。私は、昼には殺されてしまうのだよ?生きながら焼かれて…もう少し慈悲の気持ちを向けてくれても良いのではないかな?」
プレアティは芝居がかった言い方でアンドレを煽る。が、食いついてくれないと悟ると、急に低く真面目な声色でこう言った。
「カルロ様、貴方は私を見棄てたりはしませんよね?
いいえ、それはもう不可能なのです。
20年前の、ジル様のイカサマ裁判に出席したあの時から、いいえ、ジャンヌ・ダルクの処刑を見ていたあの日から、貴方もこの話のシナリオに組み込まれていたのですから。」
と、ここでプレアティは一度言葉を区切った。
それから、とても満足そうな笑い声を漏らし、こうかたる。
「私は、これにて、おいとましますがね、その前に是非とも貴方様には聞いてもらいたいと思っていたのですよ。少女ジャンヌの夢を弟の代わりに果たした、偉大な御方と私の話をね。」
「懺悔の時間は終わりにしましょう。」
アンドレの低く野太い声が手入れされた斧が切り株に突き刺さるように強い意思と恐怖を含んで牢の空気を揺らした。
カルロは弾かれたようにアンドレを見る。
「アンドレ、お座りなさい。」
カルロの穏やかな声にアンドレは困った顔でカルロを見つめる。
「朝日が昇りました。こんな奴には勿体ないくらいの時間をさきましたぜ。
もう、戻りましょう。」
アンドレは立ったまま、カルロを急かした。
アンドレの不安がカルロの心に伝染する。早くなる脈拍を自覚しながらカルロは穏やかに微笑みを返した。アンドレは、カルロの言葉に囚われたように何も出来ずにカルロを悲しそうに見つめた。
「アンドレ、ビビるなよ。昼には私は、地獄に戻る。おまえさんとの付き合いもこれきりだ。
それに、私はこうして檻の中にいるじゃないか!怖がるなんて、お前らしくないぞ。」
プレアティは、くくっとバカにしたような軽い笑いを漏らしてアンドレを挑発する。が、3人の同僚を傷つけられたアンドレは耳を貸さなかった。
悪魔の言葉に耳を貸してはいけない。
アンドレはカルロを見つめたまま、カルロに問いかけるように大袈裟に十字を切り祈る。
「カルロ様、アイツは悪魔です。これ以上の慈悲などかける価値もありません。」
アンドレの意思の強さをカルロはその目に見た。
カルロは迷った。
プレアティの話を聞くのは今しかない。
特に現在、目の前にいるプレアティは、1440年のジル・ド・レ男爵の事件を思わせた。
少年の誘拐と殺戮。
それに、微妙に自著と食い違う過去のプレアティについても知りたかった。
レディ ヨランド・タラゴン…。国王殿下の義母が登場するとは穏やかではない。
「酷いな、アンドレ。私は、昼には殺されてしまうのだよ?生きながら焼かれて…もう少し慈悲の気持ちを向けてくれても良いのではないかな?」
プレアティは芝居がかった言い方でアンドレを煽る。が、食いついてくれないと悟ると、急に低く真面目な声色でこう言った。
「カルロ様、貴方は私を見棄てたりはしませんよね?
いいえ、それはもう不可能なのです。
20年前の、ジル様のイカサマ裁判に出席したあの時から、いいえ、ジャンヌ・ダルクの処刑を見ていたあの日から、貴方もこの話のシナリオに組み込まれていたのですから。」
と、ここでプレアティは一度言葉を区切った。
それから、とても満足そうな笑い声を漏らし、こうかたる。
「私は、これにて、おいとましますがね、その前に是非とも貴方様には聞いてもらいたいと思っていたのですよ。少女ジャンヌの夢を弟の代わりに果たした、偉大な御方と私の話をね。」
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