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噂と約束
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「なあ、田所のやつ最近急にキレイになったんじゃない? あれ、絶対男だよな?」
茶道部部長の風祭さんは文化祭の準備に追われる中、親友の小坂井さんに話しかけているのを僕は耳にした。
「また、杏里ったら人のプライベートなことに口出さないの。女の子はいつでもキレイになろうとするものでしょ」
袴田さんの力おそるべし。
「ああ、唯の事ですか? 姐御。クラスでも噂になってますよ。夏休み明けから急にあか抜けて、合コンに誘ってもこないから彼氏ができたんじゃないかって。あの子狙ってる男の子、結構いたんですけどね。そういえば竹中先輩って唯の彼氏だって噂ありましたよね」
田所の同期の波多野が風祭さんの話に乗っかる。
「それの話は説明しただろう。はい、口じゃなくて、手を動かす」
僕は先輩として波多野に注意する。
「しかし気になる。今度、どんな男か聞きだしてやる」
風祭さんがの目がいやらしく光る。
「私らが聞いても彼氏なんていないってすっとぼけられてるんですよ。姐御からお願いします」
「まかしとけって」
風祭さんは胸をどんとたたく。
「だ~か~ら~人のプライベートに首突っ込まないの」
風祭さんの良心はすべて小坂井さんがしょい込んでるみたいだ。
しかし結構モテるみたいだな、あいつ。
あの日から田所がうちに来る回数が増えた。
お互いのバイトの日以外はほとんどうちに来ている。三十分くらいで帰ることもあり、気を使わせているのだろう。コウもたまに来るが、奴は奴で忙しいなかマメにメールをくれる。
もうすぐひと月が過ぎ、僕も落ち着きを取り戻していた。
「なあ、田所」
「なんですか? そうやって話しかけてあたしの集中力を乱そうとしても無駄ですよ。このままトップでゴールしますからね」
「お前、なんで合コンに行かないんだ? 誘われたりするんだろ。波多野が言ってたぞ」
「ん~。一回行ったんですよ。飲み会自体は楽しいんですけど、何というかあの裏での男女の駆け引きというかそういうのがちょっと~。よっしゃ!」
田所は宣言通りトップでチェッカーフラッグを受けてガッツポーズをする。
「僕に気を使ってるなら、もう大丈夫だぞ」
「あたしが先輩の家に来るのって迷惑ですか?」
不安そうな顔で僕を見る。
「迷惑じゃない。飯も作ってくれるし、ありがたいよ。だけど無理してるんだったら心苦しい。僕はもう大丈夫だから田所の好きにしてほしいんだ」
「じゃあ、これからも来ますよ。はじめっからあたしはあたしの好きに行動させていただいてますからね」
田所は何言ってるんだかこの人は、と言ってるように呆れた顔で僕を見る。
「そういえばお前、コウの事好きだよな」
「ええ、好きですよ。それがどうしたんですか?」
田所はコーヒーを淹れに台所に行った。
「袴田さんを紹介されてショックじゃなかったのか?」
「あ! あ~そっちの好きですか? それは無いですよ。あの人を恋人にするとめんどくさそうじゃないですか。かっこいいですけど付き合っててもマイペースでほっとかれてイライラしそう。袴田さんみたいな年上の人が似合っていますよ」
両手にコーヒーを持って帰ってきた。
「しかしたっくん先輩もどうしたんですか? 最近、みんなから彼氏ができたのかって聞かれるんですよ」
「そりゃあ、田所が急にきれいになったからじゃないか?」
田所が目を細めてニヤつく。この顔になったときは僕をからかおうとしている時だ。
しまった!
「たっくん先輩もあたしがきれいになったと思ってます~?」
いかんこれは孔明の罠だ!
「ああ、きれいきれい」
「心がこもってない! むかつきますね。天邪鬼ですか?」
「そうだ、今度どこか遊びに行かないか?」
慌てて話題を変える。
「……長崎! 動物と触れ合える動物園があるって頼子が言ってたの。カピパラが触れるって」
そう言えば波多野は長崎出身だったな。
「オッケー。動物園行って、ちゃんぽんも食べに行くか?」
「行く!」
可愛い笑顔で返事をした。
茶道部部長の風祭さんは文化祭の準備に追われる中、親友の小坂井さんに話しかけているのを僕は耳にした。
「また、杏里ったら人のプライベートなことに口出さないの。女の子はいつでもキレイになろうとするものでしょ」
袴田さんの力おそるべし。
「ああ、唯の事ですか? 姐御。クラスでも噂になってますよ。夏休み明けから急にあか抜けて、合コンに誘ってもこないから彼氏ができたんじゃないかって。あの子狙ってる男の子、結構いたんですけどね。そういえば竹中先輩って唯の彼氏だって噂ありましたよね」
田所の同期の波多野が風祭さんの話に乗っかる。
「それの話は説明しただろう。はい、口じゃなくて、手を動かす」
僕は先輩として波多野に注意する。
「しかし気になる。今度、どんな男か聞きだしてやる」
風祭さんがの目がいやらしく光る。
「私らが聞いても彼氏なんていないってすっとぼけられてるんですよ。姐御からお願いします」
「まかしとけって」
風祭さんは胸をどんとたたく。
「だ~か~ら~人のプライベートに首突っ込まないの」
風祭さんの良心はすべて小坂井さんがしょい込んでるみたいだ。
しかし結構モテるみたいだな、あいつ。
あの日から田所がうちに来る回数が増えた。
お互いのバイトの日以外はほとんどうちに来ている。三十分くらいで帰ることもあり、気を使わせているのだろう。コウもたまに来るが、奴は奴で忙しいなかマメにメールをくれる。
もうすぐひと月が過ぎ、僕も落ち着きを取り戻していた。
「なあ、田所」
「なんですか? そうやって話しかけてあたしの集中力を乱そうとしても無駄ですよ。このままトップでゴールしますからね」
「お前、なんで合コンに行かないんだ? 誘われたりするんだろ。波多野が言ってたぞ」
「ん~。一回行ったんですよ。飲み会自体は楽しいんですけど、何というかあの裏での男女の駆け引きというかそういうのがちょっと~。よっしゃ!」
田所は宣言通りトップでチェッカーフラッグを受けてガッツポーズをする。
「僕に気を使ってるなら、もう大丈夫だぞ」
「あたしが先輩の家に来るのって迷惑ですか?」
不安そうな顔で僕を見る。
「迷惑じゃない。飯も作ってくれるし、ありがたいよ。だけど無理してるんだったら心苦しい。僕はもう大丈夫だから田所の好きにしてほしいんだ」
「じゃあ、これからも来ますよ。はじめっからあたしはあたしの好きに行動させていただいてますからね」
田所は何言ってるんだかこの人は、と言ってるように呆れた顔で僕を見る。
「そういえばお前、コウの事好きだよな」
「ええ、好きですよ。それがどうしたんですか?」
田所はコーヒーを淹れに台所に行った。
「袴田さんを紹介されてショックじゃなかったのか?」
「あ! あ~そっちの好きですか? それは無いですよ。あの人を恋人にするとめんどくさそうじゃないですか。かっこいいですけど付き合っててもマイペースでほっとかれてイライラしそう。袴田さんみたいな年上の人が似合っていますよ」
両手にコーヒーを持って帰ってきた。
「しかしたっくん先輩もどうしたんですか? 最近、みんなから彼氏ができたのかって聞かれるんですよ」
「そりゃあ、田所が急にきれいになったからじゃないか?」
田所が目を細めてニヤつく。この顔になったときは僕をからかおうとしている時だ。
しまった!
「たっくん先輩もあたしがきれいになったと思ってます~?」
いかんこれは孔明の罠だ!
「ああ、きれいきれい」
「心がこもってない! むかつきますね。天邪鬼ですか?」
「そうだ、今度どこか遊びに行かないか?」
慌てて話題を変える。
「……長崎! 動物と触れ合える動物園があるって頼子が言ってたの。カピパラが触れるって」
そう言えば波多野は長崎出身だったな。
「オッケー。動物園行って、ちゃんぽんも食べに行くか?」
「行く!」
可愛い笑顔で返事をした。
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