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大人の女性と花火
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「こっちは彼女の袴田咲(はかまださき)。たっくんと田所さんだ」
コウがお互いを紹介する。
袴田さんは年のころは二十五、六くらいだろうか。大人の魅力を醸し出している美人だ。明るい色のセミロングの髪はふんわりとしたウェーブがかかっている。ロングのスカートにオフショルダーのブラウスには豊満な胸が強調されていた。
「初めまして、袴田です。今日はよろしくい願いします」
僕たちがあっけにとられていると袴田さんに先に挨拶をされてしまった。
「はじめまして竹中達也です。コウと大学の同級生です。よろしくお願いします」
「はじめまして田所唯です。竹中先輩の茶道部の後輩です」
僕たちも慌てて挨拶をすると袴田さんはにっこりとほほ笑んで、田所をじっと見た。
「あら可愛い浴衣ね。お肌もきれい。うちにおいで? いい化粧品紹介してあげるわよ」
「こらこら、何いきなり営業してんだよ。ごめんな田所さん。咲は美容販売員なんだよ」
袴田さんは化粧品売り場で化粧をしてくれたり、アドバイスをしているプロらしく、田所と化粧品の事で盛り上がっていた。
仕方なく僕とコウ、袴田さんと田所という組み合わせで会場へ移動することになった。
一人浴衣の田所に合わせてゆっくりめに歩く。
「なあどこであんな美人と知り合ったんだ?」
「アルバイト先のバーだよ」
新歓の時に行ったあのバーか。落ち着いたあの店に似合いそうな美人だ。
「よく社会人を口説けたな」
年が近くても社会人と学生では見ている世界が違う。
「あの店ってたまに女性にひとり客が来るんだ。だいたいグチの聞き相手になってるといい感じになるんだよ。はじめは向こうも俺が学生だと思わないからな。特に店のユニフォームを着てるとな」
確かに黒いバーテンダー服をピシッと着ている姿は男の僕の目から見ても三割増しにかっこよく見える。
「それより、唯ちゃんがせっかく浴衣で来てるんだからたっくんも決めちゃえよ」
コウは僕と田所をずっとくっつけたがっている。不憫だな田所よ。好きな相手からこんな風に思われるってけっこうきついものがおると思うが、サポートぐらいはしてやれるが基本的に人の恋愛には関与しないことにしている。そもそも自分が付き合った事もない僕が人の恋愛に自分で首を突っ込む事自体おこがましい事なんだけどね。
「だから何度も言ってるけど田所はただの後輩だって」
そろそろ人が多くなり、屋台も見え始めてきた。
女性の艶やかな浴衣姿が多く見られる中、男性の浴衣姿もポツポツと見られる。当然、浴衣姿の男性の隣には浴衣姿の女性がセットでいるのだが。
「私も唯ちゃんみたいに浴衣着てくれば良かったわ。失敗したわ」
袴田さんは田所をうらやましそうに言う。
「袴田の浴衣姿ってきれいなんでしょうね。あたしも見てみたかったな~」
なんか二人はすっかり打ち解けているみたいだった。
花火大会開始までの間、僕たちは屋台のフライドポテトや焼きそば、唐揚げなどをつまみに軽い宴会を開いていた。
「そうだ。今度、バーベキューでもしませんか?」
袴田さんがそう提案してきた。
「バーベキューか。いいね。手ぶらで行けるところもあるって言ってたな」
コウがそう言って携帯で調べ始めた。
「咲は水曜日の方がいいんだよな。八月最後の週の水曜日にしようか? たっくんと唯ちゃんは大丈夫か?」
「僕は最後の週はバイトを入れてないから大丈夫だ」
「あたしも大丈夫です。何か準備するものありますか? あたしバーベキュー始めてなんです」
田所は目をキラキラさせていた。
バーベキューのことを調べたり、話していると花火の時間になった。
大きな音とともに艶やかに咲く夜空の花々。色とりどりの光に風に乗ってやってくる火薬の匂い。歓声や拍手が時々あがり、隣からはすご~い、綺麗! と田所が興奮している様子が感じられる。
その田所の顔は花火のせいか、艶やかなオレンジの唇が色っぽく感じられ、その屈託のない笑顔は素直に可愛く感じられた。
「大丈夫か?」
田所が鼻緒の部分で靴づれを起こしていた。
「バンソコいただいたので、だいぶ楽にはなりました。すみません」
コウは袴田を送って行ったため、僕は田所を送って行くことになった。
「花火、迫力あって綺麗でしたね。あんな近くで見たの初めてですよ」
まだ興奮冷めやらない田所は痛みも忘れて話している。
「花火、見に行ったことないのか?」
「無くはないんですが、小さい頃は大きな音が苦手で遠くからしか見れなかったんです。中、高の時は部活で見に行けなかったんですよ。なのでこんな大きな花火大会は初体験です」
「初体験の相手が僕で良かったのか?」
「え、むしろたっくんせんぱいで……」
ニヤニヤ笑う僕を見て田所が止まる。
「ほんとアホですね! セクハラですか? 死にますか?」
田所はプンスカ怒っていたが、最後には笑顔で帰って行った。
「それじゃあここで大丈夫です。バーベキュー楽しみですね」
コウがお互いを紹介する。
袴田さんは年のころは二十五、六くらいだろうか。大人の魅力を醸し出している美人だ。明るい色のセミロングの髪はふんわりとしたウェーブがかかっている。ロングのスカートにオフショルダーのブラウスには豊満な胸が強調されていた。
「初めまして、袴田です。今日はよろしくい願いします」
僕たちがあっけにとられていると袴田さんに先に挨拶をされてしまった。
「はじめまして竹中達也です。コウと大学の同級生です。よろしくお願いします」
「はじめまして田所唯です。竹中先輩の茶道部の後輩です」
僕たちも慌てて挨拶をすると袴田さんはにっこりとほほ笑んで、田所をじっと見た。
「あら可愛い浴衣ね。お肌もきれい。うちにおいで? いい化粧品紹介してあげるわよ」
「こらこら、何いきなり営業してんだよ。ごめんな田所さん。咲は美容販売員なんだよ」
袴田さんは化粧品売り場で化粧をしてくれたり、アドバイスをしているプロらしく、田所と化粧品の事で盛り上がっていた。
仕方なく僕とコウ、袴田さんと田所という組み合わせで会場へ移動することになった。
一人浴衣の田所に合わせてゆっくりめに歩く。
「なあどこであんな美人と知り合ったんだ?」
「アルバイト先のバーだよ」
新歓の時に行ったあのバーか。落ち着いたあの店に似合いそうな美人だ。
「よく社会人を口説けたな」
年が近くても社会人と学生では見ている世界が違う。
「あの店ってたまに女性にひとり客が来るんだ。だいたいグチの聞き相手になってるといい感じになるんだよ。はじめは向こうも俺が学生だと思わないからな。特に店のユニフォームを着てるとな」
確かに黒いバーテンダー服をピシッと着ている姿は男の僕の目から見ても三割増しにかっこよく見える。
「それより、唯ちゃんがせっかく浴衣で来てるんだからたっくんも決めちゃえよ」
コウは僕と田所をずっとくっつけたがっている。不憫だな田所よ。好きな相手からこんな風に思われるってけっこうきついものがおると思うが、サポートぐらいはしてやれるが基本的に人の恋愛には関与しないことにしている。そもそも自分が付き合った事もない僕が人の恋愛に自分で首を突っ込む事自体おこがましい事なんだけどね。
「だから何度も言ってるけど田所はただの後輩だって」
そろそろ人が多くなり、屋台も見え始めてきた。
女性の艶やかな浴衣姿が多く見られる中、男性の浴衣姿もポツポツと見られる。当然、浴衣姿の男性の隣には浴衣姿の女性がセットでいるのだが。
「私も唯ちゃんみたいに浴衣着てくれば良かったわ。失敗したわ」
袴田さんは田所をうらやましそうに言う。
「袴田の浴衣姿ってきれいなんでしょうね。あたしも見てみたかったな~」
なんか二人はすっかり打ち解けているみたいだった。
花火大会開始までの間、僕たちは屋台のフライドポテトや焼きそば、唐揚げなどをつまみに軽い宴会を開いていた。
「そうだ。今度、バーベキューでもしませんか?」
袴田さんがそう提案してきた。
「バーベキューか。いいね。手ぶらで行けるところもあるって言ってたな」
コウがそう言って携帯で調べ始めた。
「咲は水曜日の方がいいんだよな。八月最後の週の水曜日にしようか? たっくんと唯ちゃんは大丈夫か?」
「僕は最後の週はバイトを入れてないから大丈夫だ」
「あたしも大丈夫です。何か準備するものありますか? あたしバーベキュー始めてなんです」
田所は目をキラキラさせていた。
バーベキューのことを調べたり、話していると花火の時間になった。
大きな音とともに艶やかに咲く夜空の花々。色とりどりの光に風に乗ってやってくる火薬の匂い。歓声や拍手が時々あがり、隣からはすご~い、綺麗! と田所が興奮している様子が感じられる。
その田所の顔は花火のせいか、艶やかなオレンジの唇が色っぽく感じられ、その屈託のない笑顔は素直に可愛く感じられた。
「大丈夫か?」
田所が鼻緒の部分で靴づれを起こしていた。
「バンソコいただいたので、だいぶ楽にはなりました。すみません」
コウは袴田を送って行ったため、僕は田所を送って行くことになった。
「花火、迫力あって綺麗でしたね。あんな近くで見たの初めてですよ」
まだ興奮冷めやらない田所は痛みも忘れて話している。
「花火、見に行ったことないのか?」
「無くはないんですが、小さい頃は大きな音が苦手で遠くからしか見れなかったんです。中、高の時は部活で見に行けなかったんですよ。なのでこんな大きな花火大会は初体験です」
「初体験の相手が僕で良かったのか?」
「え、むしろたっくんせんぱいで……」
ニヤニヤ笑う僕を見て田所が止まる。
「ほんとアホですね! セクハラですか? 死にますか?」
田所はプンスカ怒っていたが、最後には笑顔で帰って行った。
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