僕とコウ

三原みぱぱ

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カラオケとバー

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「先輩、二次会行かないんですか?」

 新歓コンパの一次会が終わり、僕はフェードアウトしようとしたところを田所に捕まった。

「帰る」

 僕はなるべく周りの先輩たちに聞こえないように言った。

「なんでですか? カラオケ行きましょうよ」

 それが嫌なんだよ。

「音痴だから嫌だ」

 僕は素直に言った。

「……。じゃあ二人で二件目行きませんか?」

 背の低い田所は下斜め四十五度から俺にそう提案した。
 お前、天然でそれやってるなら泥棒猫って言われても仕方ないぞ。

「俺、ゴム持ってないぞ」
「先輩、アホですか? 酔っ払ってますか? 死にますか?」

 田所はぷんすか怒ったあと、ちょっと恥ずかしそうな顔で言った。

「そんなのコンビニで買えばいいじゃないですか」
「え、マジで」

 けらけら笑いだした。

「なに本気になってるんですか。アハハ。おっかし~い」

 やられた。


 結局、俺たちはバーに行った。

「いらっしゃいませ。お!」

 僕たちが少し暗い落ち着いた店に入ると金髪のバーテンダーが声をかけてきた。
 カウンターに座ると若いその金髪のバーテンダーがおしぼりを渡してくれた。

「珍しいね、たっくん。こちらは?」

 コウがそう言って田所にもおしぼりを渡す。

「茶道部の新入部員の田所……。なんだっけ? 下の名前」
「唯です。田所唯です。あ~この人が先輩の恋人さんですか?」
「こ、恋人!? どんな話してるんだ? 俺の名前はコウです。よろしく唯ちゃん」

 そう言ってコウはマスターに注文の確認に行った。

「先輩の彼氏さんって、いきなり下の名前で呼ぶんですね。何かキュンとしちゃいます」
「そうか? 唯」
「先輩が言うとなんか笑っちゃいますね」

 笑いのツボがわからん。
 コウは田所にサラトガクーラーを僕にはオールドパーの水割りを持ってきた。

「これは俺からのおごり」

 そう言ってミックスナッツを置いた。

「田所さん、食べ放題らしいから遠慮せずどうぞ」
「おいおい。俺のバイト代食べつくす気か?」
「ありがとうございます。コウさんもカクテル作れるんですか?」
「作れるのは作れるけど、うまいカクテルが飲みたければマスターに頼んだ方がいいよ。やっぱり長年のプロは違うから」

 僕は何度かこのバーに来たことがあるが確かにそうだ。
 友達だということでコウにマスターに同じカクテルを作って飲み比べをしたことがあった。
 何がどう違うかは素人の僕にはわからなかったが、明らかにマスターのカクテルの方がおいしかったのを覚えている。

「そういえば、なんでみんなと一緒にカラオケ行かなかったんだ?」
「先輩がぼっちで帰ろうとしてたから、なんか気になって声かけちゃったんですよ」
「ぼっちじゃねえよ。カラオケじゃなかったら二次会行ってたよ。まあ、帰ってゲームしたかったって言うのもあるけどな」
「ゲームですか? 対戦ゲーム持ってます?」

 なんか食いついてきたぞ?

「田所はゲームするんだ」
「弟がいるんで、格闘ゲームやスポーツものを二人で良くやってたんですよ。このあと先輩の家行って良いですか?」
「だからゴムがないんだってば」
「先輩、しつこい」

 田所はジト目で批判する。

「このあとうちでゲーム大会やるけどコウも来るか?」
「いいのか? 唯ちゃん」
「ゲームは大人数の方が楽しいですよ」
「オッケー。あと一時間くらいでバイト終わるから、そのあと合流するよ」
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