僕とコウ

三原みぱぱ

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大人の階段と失恋

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 結論から言うと、すっごく良かった。
 僕たちは何度もおじさん達にお礼を言った。
 大人の階段ってこうやって上がっていくんだな。

「何でコウも便乗してんだよ」
「俺だってソープ行ったことないんだもん。いいだろう」


 そんな夏の日本一周の旅を僕たちは一緒に経験した。
 僕たちが旅行から帰ってくると残りの夏休みは数日だった。
 お互い旅行の後片付けと新学期に向けて急ぐ、次にあったのは新学期の授業だった。

「えらく元気が無いけど、どうした?」

 僕はコウに声をかけた。

「愚痴りたいから今日、飲みに行こうぜ」

 旅行明けでお金はあまりなかったがこんなコウは珍しく、僕はOKした。


「で、どうした?」

 僕はビールを一口飲むとコウに聞いた。

「振られた」
「振られたってあの美人の先輩に? 何でまた」

 僕は内心ウキウキしていた。人の失恋話しは酒が進む。

「夏休みに俺たち日本一周してただろう。その間に横取りされた」

 コウはビールを煽る。

「初めての彼との夏休みなのにほったらかしだったので寂しかったのだとよ」

 まあ、遠距離恋愛は無理だって言った本人が目の前にいるからその気持ちもわからないでは無い。

「それで夏休みずっと遊んでくれてた男友達から告白されてOKしちまったらしい。あの浮気女め!」

 唐揚げに当たるな。唐揚げに罪は無い。

「それで俺の合コンの約束はどうなるんだ?」
「たっくん、それ今言うか? いいじゃないか、初体験済ませたんだから」
「素人童貞はやだ。それに純粋に彼女が欲しい」
「わかった! なんとかする。だから今日は愚痴らせてくれ」

 それから愚痴とのろけが入り混じった彼女の愚痴を俺は適当に相槌を打った。

「あ~スッキリした」

 腹のなかの鬱憤(うっぷん)を吐き出したコウは言った。

「それでたっくんは部活やめてどうするんだ?」
「それな。チャラテニスサークルに入り直すか、文化系サークルに入るかな」
「うち来るか?」
「だから音楽は無理だって。コウは振られた女がいるサークルによくそのままいれるな?」
「俺が辞めたらなんか俺が悪いみたいじゃ無いか。向こうが辞めるのが筋だろう。でも早くしないとただでさえ夏休み合宿なんかしてるところだとサークル内の結束ができて入りにくくなるぞ。それに何もやらないっていうのももったいないしな」
「女が多いサークル!」
「茶道部、華道部あたりは?」
「花は無理、さっぱりわからん。茶道部か~。ツテあるか?」
「先輩に聞いてみる。ツテあったら合コンはたっくんが組んでくれよ」
「善処する」


 結局、僕は茶道部とテニスサークルに入った。
 運良くコウの先輩の知り合いが茶道部にいた。男大歓迎だそうだ。お茶会の準備で男手があると大助かりだそうだ。ただし活動は週二回の上、運動不足も心配なので参加自由のゆるいテニスサークルに入った。
 茶道は興味があったが全くの素人だとちゃんと説明した。
 歓迎会を開いてくれたが、テニス部とは違い無理に飲まされる事もなく穏やかだった。

「竹中君、夏休みは何してたの?」

 同級の女の子がそう聞いてきた。
 僕が茶道部に入って一番に目をつけた子だった。
 髪を染めるでなく、爽やかな明るい子だった。
 僕は日本一周の話をかいつまんで話した。

「へ~。すごいね。男の子二人で二カ月近く遊びまわってたら彼女かわいそうに」

 なぜ彼女いる前提?

「そこは大丈夫。僕は彼女いないから。永井さんは彼氏いるの?」
「いるよ。高校から付き合ってる彼氏が」

 告白する前から振られた気分でこのあと彼氏とののろけ話を延々と聞かされる羽目となった。

 涙。
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