僕とコウ

三原みぱぱ

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キタキツネと結婚

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 青森の港に着いた。
 バイクで北海道に行くには船に乗るしかない。
 大分から愛媛までは片道で良かったが北海道は往復乗るしかない。

「ここまできて北海道に行かないって言う選択肢はないだろう」
「船酔いはどうする」
「酔い止め飲む」

 確かに俺も北海道に行かない日本一周はないと思う。
 薬が効いたのか、コウの船酔いは思ったより軽くすんだ。
 しかし北海道について、しばらく休んだ。酔い止めの影響が怖いからだ。
 
 北海道はでっかいどう。
 
 はじめて意味がわかった。
 僕たちは恐ろしく走りやすい北海道の道を走る。これまで以上にライダーとすれ違った。
 ピースサインが飛び交う。
 テンションが上がる。
 野生のキタキツネを見てまたテンションが上がる。
 写真を撮りたかったが、バイクを止めて携帯を準備している間に逃げられた。
 そして車にはねられたのか道路に転がるキタキツネも見た。
 子ギツネなのか? 小さめだった。
 おそらくはねられて数日はたっているようだ。
 キタキツネには寄生虫がいると言うことを聞いていたので僕たちはそのまま通過することにした。


「日本一周か。若いっていいな」

 本場のきりたんぽ鍋が食べたいと言うコウのリクエストで入った居酒屋で隣のおじさんに声をかけられた。
 おじさん達も二人でカウンター席に座っていた。
 僕たちは九州から来たこと、北海道を回ってこれから南下する事なんかを話した。

「そっか秋田もいいとこだろ」
「ええ、そうですね」

 そう言い切れるほど秋田の事は知らないが自然と相槌をうっていた。

「冬に来るとこじゃないけどな」

 もう一人のおじさんがそう言って笑った。

「しかし野郎二人で夏休み中過ごすなんて二人とも彼女はいないのか?」
「俺はいますよ。こいつは真実の愛を探し中です」

 おじさん二人にうけてた。

「おじさん達こそ結婚してるんですか?」
「おじさんってまだかろうじて三十代だけどな」
「僕は愛と言う名の牢獄に捕まってるけど、こいつは逃げ出したんだよ」
「バツ一、独身で~す」
「ぶっちゃけ、結婚てどうですか?」
「まあ真面目な話、相手次第と子供がいるかいないかによっても変わるかな。こいつみたいに見た目だけで選んで失敗したら最悪かな」
「どう酷かったんですか?」
「コウ、失礼だろう」
「いいよ。終わった事だし。色々あるけど、夕飯一緒に食べないだよ」
「時間が合わないんですか?」
「いや、元嫁は偏食家でね。俺にはちゃんとしたご飯を用意してくれるんだけど自分はお菓子しか食べないんだ。だから俺が一人で食事をしてる間、彼女はソファーでお菓子食べてるんだ。おかげで会話が少ないよね。あとしょっちゅう服を買ってて貯金がほとんど出来ない。挙げ句の果ては浮気だよ」
「浮気はきついですね。でも偏食って結婚する前に分からなかったんですか?」
「外食は大丈夫だったんだよ。家ではつまみを作ってくれる上にお菓子買ってお酒飲んでたからね。今思うと自分が作ったつまみにあんまり手をつけてなかったな」

 おじさんはそう言ってビールをあおった。

「でもそう言う相性って結婚前にどうやって判断するんですか?」
「僕はカミさんと一年同棲してから結婚したね。お互い結婚を意識しはじめた時に同棲したんだ。お互い一人暮らしだったからね。生活費が浮くからそれを結婚資金に回したんだよな。そうするとお互いの生活のクセがわかったよ」
「生活のクセ?」
「そう、例えばうちの嫁は朝はパンじゃないとダメだとか。トイレは小でも座ってやれって言われたり、ちょっとした事なんだけどね。これのすれ違いがすれ違いのまま積み重なるといつかガッシャンと終わっちゃうんだよ」
「赤の他人が一つ屋根の下に住むんですもんね色々ありそうですね。それで結局、結婚っていいもんなんですか?」
「相手によるけど良いもんだと思う。自分が弱ってる時とか子供ができると特に思うよ」
「ところでそっちのにいちゃんは彼女いないって言ってたけど、経験はあるのか?」

 僕はビールを吹き出しそうになった。

「……。無いです」
「そうか、俺たちこれからソープ行くけど一緒に行くか?」
「僕たちお金無いですよ。貧乏旅なんで」
「それくらい出してやるよ。こっちは独身貴族様だ」

 おじさん達はいい具合に出来上がっていた。

「ゴチになります」

 僕の代わりにコウが元気に返事していた。
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