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第三章
三つ巴の戦い
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黒いウロコが付いたままの兼光の抜け殻がモナの目の前に落ちる。
『あああああ!!!!』
モナの悲鳴が響く。
『キサマ! きさま! 貴様!』
バハムートの叫び声が地鳴りとなる。
『殺したのか! 愛しい我が子を!』
「違う! モナ様! 話を聞いてくれ!」
俺はバハムートの恐怖と戦いながら言葉を吐く。
しかし、届かない。
『貴様ら、殺してやる!』
漆黒の死の化身が大きく翼を広げる。
「キヨ! 逃げるぞ! 乗れ!」
アレックスが馬車で叫ぶ。
ここで逃げるわけにはいかない。
全ては誤解だ。
兼光は無事だ。
そして姫鶴も誘拐犯では無い。
三人を会わせるためにも、ここは引くわけにはいかない。
「アレックスは逃げろ! 俺は説得する!」
「そうはいかない! 無理にでも連れて帰る!」
アレックスが俺を捕まえようと馬車から降りる。
俺はそれを無視して憤怒のバハムートに向かう。
「モナ様! 聞いてください! 兼光は、あなたの子は……」
「女王に続くゴブ!」
俺の言葉を遮る第三者の声を合図に、大軍の足音が辺りに響き渡る。
「我らがリーダーを取り戻すゴブ!」
うぉー!
どこに隠れていたのかゴブリンの大群が現れた。
なんてタイミングで現れるんだ!
いや、ゴブリンの言葉からバハムートの攻撃に合わせて街を襲う計画だ。
ずっとタイミングを見計らっていたのか!?
『貴様、ゴブリン共とまで、手を組んでいたのか!』
「誤解です! モナ様! 全て誤解なんです! 私の話を聞いてください」
『ウルサイ! うるさい! 五月蝿い!』
モナは大きく首を振り、口を大きく開ける。
その凶暴な牙を持つ口の中で火花が散る。
「キヨ!」
アレックスは俺を小脇に抱えて馬車に飛び乗る。
ドラゴンブレス!
モナの口から火炎放射器のように炎が撒き散らかされる。
あのままいたら、俺は丸焦げだっただろう。
地面は黒く焼け焦げて、焼けた草のにおいが漂ってくる。
「このまま、街に戻るぞ」
「……なんとか、もう一度話し合いができないか?」
「話し合いって言うのは、相手がこちらの話を聞く意思があるときに使う言葉だぞ。それに見てみろ」
アレックスが指し示す街の方向から、ドラゴンとゴブリンに対抗すべく警備隊がすでに出陣していた。
「もう手遅れだ」
俺は失敗したのだ。
もう少しだったのに……。
いや、過程は関係ない。
結果だ。
結果としてモナを怒らせてしまった。
結果として警備隊の総攻撃の引き金を引いてしまった。
俺は失敗した。
失敗したのだ。
それによって多くの死傷者が出る。
それを避けたかったのだが、すでに戦いは始まってしまった。
警備隊、バハムート、ゴブリンの三つ巴だが、警備隊はバハムートとゴブリンが手を組んでいると思っている。
ゴブリンもバハムートを味方につけていると思っている。
バハムートだけが、警備隊とゴブリンが手を組んでいると思っている。
変則的な三つ巴の戦い。
警備隊は部隊ごとに隊列を組み、魔法を放つ。
ゴブリンは数を頼りに警備隊に襲いかかる。
バハムートは尻尾を振り回し、火を吐き、無差別に攻撃する。
丘の上が阿鼻叫喚の戦場となる。
倒れている者のほとんどがゴブリンではあるが、警備隊側にも被害が出始めている。
「僕は部隊に戻るけど、君は大人しく街に戻るんだよ」
警備隊の後ろまで馬車を走らせると手綱を俺に渡して、アレックスは戦場におもむく。
「……すまん。気をつけてくれ」
「君にそんな言葉をもらうのは、なんかむず痒いな」
俺は警備隊に守られた門へと駆け込む。
「キヨ、怪我はない?」
背の低い女性が金色の髪を揺らせて心配をしてくれる。
「アレックスのお陰で怪我はない。あとでお礼を言わないとな……」
「キヨ、落ち込まないで。あなたは出来ることをやったのでしょう」
表情から隠したつもりだったのだが、レイティアには直ぐにバレてしまう。
「あのバハムートは兼光の母親だ。兼光を探しているんだ。なんとか言葉を届けられれば、止められるはずなんだ」
「それがなんで、あんなことになったの?」
「兼光の抜け殻を見られた。それで俺が兼光を殺したと勘違いされたんだ」
レイティアは俺の話を聞いて首をひねる。
「母親なら、脱皮するのは知ってるんじゃないの? それがなんで殺したと勘違いしたの?」
『あああああ!!!!』
モナの悲鳴が響く。
『キサマ! きさま! 貴様!』
バハムートの叫び声が地鳴りとなる。
『殺したのか! 愛しい我が子を!』
「違う! モナ様! 話を聞いてくれ!」
俺はバハムートの恐怖と戦いながら言葉を吐く。
しかし、届かない。
『貴様ら、殺してやる!』
漆黒の死の化身が大きく翼を広げる。
「キヨ! 逃げるぞ! 乗れ!」
アレックスが馬車で叫ぶ。
ここで逃げるわけにはいかない。
全ては誤解だ。
兼光は無事だ。
そして姫鶴も誘拐犯では無い。
三人を会わせるためにも、ここは引くわけにはいかない。
「アレックスは逃げろ! 俺は説得する!」
「そうはいかない! 無理にでも連れて帰る!」
アレックスが俺を捕まえようと馬車から降りる。
俺はそれを無視して憤怒のバハムートに向かう。
「モナ様! 聞いてください! 兼光は、あなたの子は……」
「女王に続くゴブ!」
俺の言葉を遮る第三者の声を合図に、大軍の足音が辺りに響き渡る。
「我らがリーダーを取り戻すゴブ!」
うぉー!
どこに隠れていたのかゴブリンの大群が現れた。
なんてタイミングで現れるんだ!
いや、ゴブリンの言葉からバハムートの攻撃に合わせて街を襲う計画だ。
ずっとタイミングを見計らっていたのか!?
『貴様、ゴブリン共とまで、手を組んでいたのか!』
「誤解です! モナ様! 全て誤解なんです! 私の話を聞いてください」
『ウルサイ! うるさい! 五月蝿い!』
モナは大きく首を振り、口を大きく開ける。
その凶暴な牙を持つ口の中で火花が散る。
「キヨ!」
アレックスは俺を小脇に抱えて馬車に飛び乗る。
ドラゴンブレス!
モナの口から火炎放射器のように炎が撒き散らかされる。
あのままいたら、俺は丸焦げだっただろう。
地面は黒く焼け焦げて、焼けた草のにおいが漂ってくる。
「このまま、街に戻るぞ」
「……なんとか、もう一度話し合いができないか?」
「話し合いって言うのは、相手がこちらの話を聞く意思があるときに使う言葉だぞ。それに見てみろ」
アレックスが指し示す街の方向から、ドラゴンとゴブリンに対抗すべく警備隊がすでに出陣していた。
「もう手遅れだ」
俺は失敗したのだ。
もう少しだったのに……。
いや、過程は関係ない。
結果だ。
結果としてモナを怒らせてしまった。
結果として警備隊の総攻撃の引き金を引いてしまった。
俺は失敗した。
失敗したのだ。
それによって多くの死傷者が出る。
それを避けたかったのだが、すでに戦いは始まってしまった。
警備隊、バハムート、ゴブリンの三つ巴だが、警備隊はバハムートとゴブリンが手を組んでいると思っている。
ゴブリンもバハムートを味方につけていると思っている。
バハムートだけが、警備隊とゴブリンが手を組んでいると思っている。
変則的な三つ巴の戦い。
警備隊は部隊ごとに隊列を組み、魔法を放つ。
ゴブリンは数を頼りに警備隊に襲いかかる。
バハムートは尻尾を振り回し、火を吐き、無差別に攻撃する。
丘の上が阿鼻叫喚の戦場となる。
倒れている者のほとんどがゴブリンではあるが、警備隊側にも被害が出始めている。
「僕は部隊に戻るけど、君は大人しく街に戻るんだよ」
警備隊の後ろまで馬車を走らせると手綱を俺に渡して、アレックスは戦場におもむく。
「……すまん。気をつけてくれ」
「君にそんな言葉をもらうのは、なんかむず痒いな」
俺は警備隊に守られた門へと駆け込む。
「キヨ、怪我はない?」
背の低い女性が金色の髪を揺らせて心配をしてくれる。
「アレックスのお陰で怪我はない。あとでお礼を言わないとな……」
「キヨ、落ち込まないで。あなたは出来ることをやったのでしょう」
表情から隠したつもりだったのだが、レイティアには直ぐにバレてしまう。
「あのバハムートは兼光の母親だ。兼光を探しているんだ。なんとか言葉を届けられれば、止められるはずなんだ」
「それがなんで、あんなことになったの?」
「兼光の抜け殻を見られた。それで俺が兼光を殺したと勘違いされたんだ」
レイティアは俺の話を聞いて首をひねる。
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