魔法の数はステータス!? 転移した先は女性ばかりが魔法を使う世界!

三原みぱぱ

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第三章

服屋にて

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「ごめんなさい」

 金色の瞳に涙を浮かべ、頭をぺこりと下げた小さな女の子がそこにいた。

「マリアーヌ様!」
「わたくしの早とちりでそなたを牢屋送りにしてしまいました。そなたの言うとおり、これはわたくしの落ち度です。庶民の模範であるべきわたくしが謝罪一つできなくてなにが貴族ですか。本当にごめんなさい」

 憤慨している赤毛のサンドラとは対照的にしおらしいマリアーヌがいた。
 
 貴族にしてグランドマスター。
 次期国王に近い存在と言われる女の子。
 これまで謝罪をするということなど、そうそうなかっただろう。
 それも庶民で男に頭を下げるなんてことは、生まれて初めてではないのだろうか?
 俺はレイティアそっくりの可愛らしい女の子を泣かせてしまったことに罪悪感を感じ始めた。

「……わかった。俺も言いすぎた。頭を上げてくれ」
「ありがとう……サンドラ、それでは行きますわよ」

 そう言って剣を収めたサンドラの服を引っ張ってこの場を立ち去ろうとしていた。

「ちょっとまて」
「まだ何か用か! 流石にこれ以上は許さんぞ!」

 マリアーヌに対してまだ謝罪を要求しようとしていると勘違いしたサンドラが俺を睨みつける。

「あんたに用はない。マリアーヌ様、この店で食事がしたいんだよな」
「……はい、その通りですわ」
「それでは俺があなたを食事に誘ってもいいですか? 仲直りの印に……」
「え! いいのですか?」

 先程まで今にも泣き出しそうな顔をしていた顔がぱっと明るくなる。

「何か問題があるか?」

 俺は人間の姿に戻った獣人の女性に確認をとった。

「何の問題もございません。現状ですと……そうですね。最短で明後日の夜でいかがでしょうか? 装いもそれよりも早くは難しいと思われます」
「ということだが、どうする?」
「お、お願いいたしますわ! ぜひ!」

 アータルの店の門番はかしこまりましたと言って予約を受け付けた。
 俺はマリアーヌたちが泊まっているホテルを聞き、明後日の夕方迎えに行くと約束をする。

「ありがとうございます……ヒモさん?」

 マリアーヌは少し困ったようにオレを見つめた。

「おいおい、俺の名前も知らなかったのか? キヨだ。よろしくな」



 二人と別れた俺は急いで服屋へ向かう。
 紹介されたその店は富裕街のはずれにある小さな店だった。
 俺は看板と名刺を何度も見直してドアを開けた。

「やあ、いらっしゃい。今日はどんな御用で?」

 人の好さそうな青年が出迎えてくれた。
 俺はアータルの店でここを紹介されてきたことを簡単に説明した。

「そうですか、ありがとうございます。それでどのような服がよろしいでしょうか?」

 ん? 俺、アータルの店に行く服って説明したよね。

「ですから、レストラン ヘブンズドアへ行くための服が欲しいんですよ」

 ピシッ!

 なんか変な音がする。

「お客様。なぜ服が必要なのかはお聞きしました。ではお客様の好みの服はどのような服でしょうか?」

 店員の笑顔の瞳が笑っていない。何かイラついている……というより怒っている。
 ああ、この店は俺が行っている店のように「機能」で選ぶのではなく、「ファッション」で選ぶ店だ。客の好みと客に似合うものとの折り合いをつけるためには、俺の好みがわからなければ、アドバイスのしようがないということに遅ればせながら気が付いた。

「ああ、悪い。まず、女性をエスコートするので、あまり派手でない……そうだなジャケットは濃い目の紺色の服がいい。インナーは肌色に、ズボンは黒にしてくれ。折角なんで背が高く見えるようにジャケットの丈は少し短めにしてくれ」
「分かりました。では採寸させていただきますね。ちなみにいつ、ヘブンズドアへ行かれますか?」

 男はメジャーで俺の体の寸法を取り始めた。

「ああ、明後日の夜だ」

 カラン。

「ああ、失礼しました。すみません、もう一度よろしいでしょうか?」

 店員は落としたメジャーを拾いあげながら、再度聞いてくる。

「明後日の夜だが、いつごろできる?」
「お客さま、当店は仕立て屋でございます。通常、どんなに早くても一ヶ月は猶予をいただいております。それを明後日ですか!?」

 店員は目をカッと見開いて俺に詰め寄る。

「ええ、服を作るのってそんなに時間がかかるんですか? 俺、何も知らなくて……すみません。出直します」

 俺は慌てて店を出ようドアに手をかけたとき、店員が俺を呼び止めた。

「お待ちください。お客様、どうしても明後日までに間に合わせたいですか?」

 予約もしてしまった。マリアーヌとも約束をしている。この機会を逃せば、アータルの店に入れることもないだろうし、何よりマリアーヌとの関係は最悪になる気がする。

「できますか? この明後日は大事な人との食事なので、間に合うのであればお願いしたいのですが……」
「……分かりました。いくつか条件がございます。まず、三百万マルご用意できますか?」

 金は準備できるが、余りにも高すぎる。
 それは店員にも十分わかっている。
 わかっていて、俺の覚悟を見ている。

「わかった。服と引換でいいか?」
「ええ、それで結構です。次に仮縫いで何度かお伺いさせていただきますので、お付き合いください。また、この短期間での対応は他言無用でお願いいたします。裏技を使いますゆえ」
「わかった。約束します」
「では、採寸を続けさせていただきます」

 採寸を取り終えた店員はボタンの種類など細かな打ち合わせをして、俺は店を後にした時はすでに昼を回っていた。
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