魔法の数はステータス!? 転移した先は女性ばかりが魔法を使う世界!

三原みぱぱ

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第二章

コーディネーター

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「誰?」

 初めに声を出せたのは姫鶴だった。

「あ~ら、あ~しの姿を見せても誰かわからないにゃん?」

 何やら猫のポーズをとる。
 気持ち悪い。

「力士かのう?」
「オネェビルダー」
「ただの変態やろ」

 俺たちは三人は自分の心に素直に思ったことを口にすると、奴はくねくねと身をよじり始めた。

「いみふ~。激おこプンプン丸男!」
「ああ、悪かったのう、激おこプンプン丸男殿。それでなぜ儂らをここに呼んだんじゃ?」

 ムサシマル、気持ちはわかるが、おそらくそれは名前じゃないから。

「それは名前じゃないにゃん。あ~しの名前はアタリステラシメリアソミニアテラルシにゃん」
「アタリメタベタラオイシカッタ殿、儂らを呼んだ理由を聞きたい」
「だから、あーしはアタリステラシメリアソミニアテラルシにゃん。アタリメタベタラオイシカッタじゃないわよ~ん」

 この変態の言葉を聞いていると、ちょっと腹が立ってきた。
 誰がそんな長い名前、すぐ覚えられるか!

「すみません。名前が長いんで何か愛称で呼ばせていただけませんか?」
「あら、そう? 長い? まだファーストネームだけにょりんよ。そうね。だったら、初めと真ん中と最後を取ってアツシって呼んでほしいかな。うふ。(はあと)」

 アとシはわかるが、ツって入ってたか?
 いや、ここで突っ込むとまた話が最初からになりそうだ。

「それでアツシさんは、どんな用で俺たちをここに呼んだんですか?」

 アツシは鳩のような胸の前で丸太のような腕を組んで首を傾げた。
 まさか、呼んでない!?

「あ~しの名前にツって入ってたっけ?」
「あんたが言ったんやないんかーい!」

 姫鶴が思わず突っ込んだ! 耐えられなかったか~。

「のう、キヨ。あやつ切っていいか?」
「気持ちはわかる。俺も同じ気持ちだが、もうちょっとだけ話を聞いてみよう」

 ムサシマルがイラつくのもわかるが、この超常的雰囲気、ずっと俺たちの頭より高く宙に浮いていることから普通の存在でないことは明白だ。その姿と話し方以上に。

「アツシさん、いい加減に本題に入ってくれ。俺たちは明日も早いんだ」
「おケマル水産! 実はあ~しは貴方達をこの世界に呼んだ張本人だっちゃ」

 え! この変態によって俺たちはこの世界に飛ばされた?

「それはつまり、サイゾウも……と言うことか?」
「そうで~す。大正解、かい、大マテ貝!」
「何のために?」
「サイゾウちゃん、貴方達の言う催眠術も使えて、剣術、体術それに医術まで使えちゃったりしちゃったりしてたから~この世界に面白い影響を及ぼしてくれると思ったんですけどね~」

 この世界に影響を及ぼす? 異世界の人間を入れることによって世界に変革を及ぼそうと考えているのか?
 それならそのサイゾウ殺してしまった俺たちに、何かペナルティを与える気か?

「それが~な~んかサイゾウちゃんったら、暴走ばっかりさせちゃって、有力な子達を次々にぺちゃんこ、潰したちゃって困りんこだったざんすよ。それでムサシマルちゃん、おいでしちゃりんこ」
「??? キヨ、何言ってるかわかるかのう?」
「姫鶴、任せた」
「無茶ぶりせんといて! 多分、サイゾウをこの世界に召喚したけど、ろくなことせえへんかったから、退治させようと師匠をこの世界に召喚したってことやと思うで」

 無茶ぶりと言いながらちゃんと理解してるじゃないか。さすが現役JKか。

「大正解、大清快、霧が~ゲフンゲフン」

 何故か途中で咳き込むアツシ。超常的存在にも何か大きな力が働くのだろう。

「じゃあ、俺と姫鶴も誰かを殺させるためにこの世界に呼んだのか?」
「ノン、ノン、ノンの助。ダーリンはそのままフリーに生きてもらっておケケよ」

 人差し指を分厚い真っ赤な唇の前で左右に振って否定する。
 気持ち悪さ倍増だ。
 ダーリンということは男。つまり俺のことか。では姫鶴は?

「じゃあ、姫鶴は誰かを討伐させるために召喚したのか?」
「それそれ、ソーランソーラン」
「それは誰のことだ?」
「秘密の花園よ。ちゅっ」

 ああ、話すだけでめんどくさい。イライラゲージが溜まる。

「はい、いいえで答えてくれ。ムサシマルはサイゾウを討伐させるためにこの世界に召喚した」
「おケマル」
「俺はこの世界を活性させるために召喚された」
「おケマル」
「姫鶴も討伐のために召喚されたが、相手は明かせない」
「おケマル、マル」

 はい、いいえで答えろって言ったのに全く無視しやがって。

「召喚した理由はわかったが、なんで今頃俺たちの前に現れた? ムサシマルはこの世界に来てもう数年経っているはずだ」
「そ~れ~は~」

 なぜか、アイドルのようにくるりっと回って両手を広げた。レイティアがしたなら天使のターンだろうが、目の前にいるのはオネェビルダーだ。なんの罰ゲームだ?

「ご褒美タ~イム! 邪魔なサイゾウちゃんを片付けたあなたたちにご褒美をあげりんこ!」

 褒美? もしかして……。

「ムサシマルちゃんを元の世界に返しちゃいま~す」

 やはりそうか。

「アツシさん。その褒美について聞きたいことがあるんだが」
「なんちょりん?」
「元の世界への帰還はムサシマルでなくてもいいのか?」
「おケマル、ケッケ」
「ムサシマルが元の世界に帰るとして、俺たちにも褒美があるのか?」
「あ~しのハグだけなにゃん」

 いや、それは褒美じゃなくて罰ゲームだ。遠慮したい。

「最後の質問だ。帰還を別の褒美にできないか。例えばこの世界の住人を生き返らせるとか」
「そんなことあ~しにはできないにゃん。神様じゃないと無理にゃん」
「世界を移動させる力があるのにアツシさんは神様じゃないのか? じゃあ、あなたは何者なんだ? もしかして悪魔か?」

 黒光りする筋肉のよろい。ごつい男顔に化粧。そのくせビキニ姿にギャル(?)語。悪魔と言われた方がしっくりする姿と佇まい。
 俺の言葉にムサシマルと姫鶴に緊張が走る。
 
「あ~しが神様や悪魔様だなんて、おだててもキスぐらいしかしてあげないわよ」

 だからそれは拷問だ。いらないわ!

「あ~しはコーディネーターよ。この星の担当のね」
「星じゃと! 星とは空で光っておるあれじゃろう。どういうことじゃ?」
「師匠、詳しくはあとで説明するから、とりあえずアツシさんの話を聞こう」

 若干不満そうな表情をしていいたが、ムサシマルは素直に聞いてくれた。

「コーディネーターとはそのままの意味だと調整者と考えていいのか?」
「そうにゃりん。あ~しはこの星を調整して楽しい星にするにゃりんよ。それで神様に楽しんでもらうにゃんよ」
「アツシさんから神様に頼んでシリルを生き返らせてもらえないか?」
「神様はそんなことに興味を示さないにゃん。無数にある星の中のたった一人になんて興味ないにゃん。無理りんこ。今の神様は見るだけにゃん、見て楽しむだけにゃん。星の住人がどうなるか、星そのものがどうなるか。演劇の舞台を見るように見てるだけりんこ」

 つまりは神様ならば生き返らせることは可能だが、その願いを神様が願い届けることは不可能ということか。結論として人を生き返らせることは出来ない。

「わかった。少しだけ相談させてくれ」
「おけかぶり」

 だから投げキッスをするな、具合が悪くなる。
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