魔法の数はステータス!? 転移した先は女性ばかりが魔法を使う世界!

三原みぱぱ

文字の大きさ
上 下
136 / 186
第二章

コーディネーター

しおりを挟む
「誰?」

 初めに声を出せたのは姫鶴だった。

「あ~ら、あ~しの姿を見せても誰かわからないにゃん?」

 何やら猫のポーズをとる。
 気持ち悪い。

「力士かのう?」
「オネェビルダー」
「ただの変態やろ」

 俺たちは三人は自分の心に素直に思ったことを口にすると、奴はくねくねと身をよじり始めた。

「いみふ~。激おこプンプン丸男!」
「ああ、悪かったのう、激おこプンプン丸男殿。それでなぜ儂らをここに呼んだんじゃ?」

 ムサシマル、気持ちはわかるが、おそらくそれは名前じゃないから。

「それは名前じゃないにゃん。あ~しの名前はアタリステラシメリアソミニアテラルシにゃん」
「アタリメタベタラオイシカッタ殿、儂らを呼んだ理由を聞きたい」
「だから、あーしはアタリステラシメリアソミニアテラルシにゃん。アタリメタベタラオイシカッタじゃないわよ~ん」

 この変態の言葉を聞いていると、ちょっと腹が立ってきた。
 誰がそんな長い名前、すぐ覚えられるか!

「すみません。名前が長いんで何か愛称で呼ばせていただけませんか?」
「あら、そう? 長い? まだファーストネームだけにょりんよ。そうね。だったら、初めと真ん中と最後を取ってアツシって呼んでほしいかな。うふ。(はあと)」

 アとシはわかるが、ツって入ってたか?
 いや、ここで突っ込むとまた話が最初からになりそうだ。

「それでアツシさんは、どんな用で俺たちをここに呼んだんですか?」

 アツシは鳩のような胸の前で丸太のような腕を組んで首を傾げた。
 まさか、呼んでない!?

「あ~しの名前にツって入ってたっけ?」
「あんたが言ったんやないんかーい!」

 姫鶴が思わず突っ込んだ! 耐えられなかったか~。

「のう、キヨ。あやつ切っていいか?」
「気持ちはわかる。俺も同じ気持ちだが、もうちょっとだけ話を聞いてみよう」

 ムサシマルがイラつくのもわかるが、この超常的雰囲気、ずっと俺たちの頭より高く宙に浮いていることから普通の存在でないことは明白だ。その姿と話し方以上に。

「アツシさん、いい加減に本題に入ってくれ。俺たちは明日も早いんだ」
「おケマル水産! 実はあ~しは貴方達をこの世界に呼んだ張本人だっちゃ」

 え! この変態によって俺たちはこの世界に飛ばされた?

「それはつまり、サイゾウも……と言うことか?」
「そうで~す。大正解、かい、大マテ貝!」
「何のために?」
「サイゾウちゃん、貴方達の言う催眠術も使えて、剣術、体術それに医術まで使えちゃったりしちゃったりしてたから~この世界に面白い影響を及ぼしてくれると思ったんですけどね~」

 この世界に影響を及ぼす? 異世界の人間を入れることによって世界に変革を及ぼそうと考えているのか?
 それならそのサイゾウ殺してしまった俺たちに、何かペナルティを与える気か?

「それが~な~んかサイゾウちゃんったら、暴走ばっかりさせちゃって、有力な子達を次々にぺちゃんこ、潰したちゃって困りんこだったざんすよ。それでムサシマルちゃん、おいでしちゃりんこ」
「??? キヨ、何言ってるかわかるかのう?」
「姫鶴、任せた」
「無茶ぶりせんといて! 多分、サイゾウをこの世界に召喚したけど、ろくなことせえへんかったから、退治させようと師匠をこの世界に召喚したってことやと思うで」

 無茶ぶりと言いながらちゃんと理解してるじゃないか。さすが現役JKか。

「大正解、大清快、霧が~ゲフンゲフン」

 何故か途中で咳き込むアツシ。超常的存在にも何か大きな力が働くのだろう。

「じゃあ、俺と姫鶴も誰かを殺させるためにこの世界に呼んだのか?」
「ノン、ノン、ノンの助。ダーリンはそのままフリーに生きてもらっておケケよ」

 人差し指を分厚い真っ赤な唇の前で左右に振って否定する。
 気持ち悪さ倍増だ。
 ダーリンということは男。つまり俺のことか。では姫鶴は?

「じゃあ、姫鶴は誰かを討伐させるために召喚したのか?」
「それそれ、ソーランソーラン」
「それは誰のことだ?」
「秘密の花園よ。ちゅっ」

 ああ、話すだけでめんどくさい。イライラゲージが溜まる。

「はい、いいえで答えてくれ。ムサシマルはサイゾウを討伐させるためにこの世界に召喚した」
「おケマル」
「俺はこの世界を活性させるために召喚された」
「おケマル」
「姫鶴も討伐のために召喚されたが、相手は明かせない」
「おケマル、マル」

 はい、いいえで答えろって言ったのに全く無視しやがって。

「召喚した理由はわかったが、なんで今頃俺たちの前に現れた? ムサシマルはこの世界に来てもう数年経っているはずだ」
「そ~れ~は~」

 なぜか、アイドルのようにくるりっと回って両手を広げた。レイティアがしたなら天使のターンだろうが、目の前にいるのはオネェビルダーだ。なんの罰ゲームだ?

「ご褒美タ~イム! 邪魔なサイゾウちゃんを片付けたあなたたちにご褒美をあげりんこ!」

 褒美? もしかして……。

「ムサシマルちゃんを元の世界に返しちゃいま~す」

 やはりそうか。

「アツシさん。その褒美について聞きたいことがあるんだが」
「なんちょりん?」
「元の世界への帰還はムサシマルでなくてもいいのか?」
「おケマル、ケッケ」
「ムサシマルが元の世界に帰るとして、俺たちにも褒美があるのか?」
「あ~しのハグだけなにゃん」

 いや、それは褒美じゃなくて罰ゲームだ。遠慮したい。

「最後の質問だ。帰還を別の褒美にできないか。例えばこの世界の住人を生き返らせるとか」
「そんなことあ~しにはできないにゃん。神様じゃないと無理にゃん」
「世界を移動させる力があるのにアツシさんは神様じゃないのか? じゃあ、あなたは何者なんだ? もしかして悪魔か?」

 黒光りする筋肉のよろい。ごつい男顔に化粧。そのくせビキニ姿にギャル(?)語。悪魔と言われた方がしっくりする姿と佇まい。
 俺の言葉にムサシマルと姫鶴に緊張が走る。
 
「あ~しが神様や悪魔様だなんて、おだててもキスぐらいしかしてあげないわよ」

 だからそれは拷問だ。いらないわ!

「あ~しはコーディネーターよ。この星の担当のね」
「星じゃと! 星とは空で光っておるあれじゃろう。どういうことじゃ?」
「師匠、詳しくはあとで説明するから、とりあえずアツシさんの話を聞こう」

 若干不満そうな表情をしていいたが、ムサシマルは素直に聞いてくれた。

「コーディネーターとはそのままの意味だと調整者と考えていいのか?」
「そうにゃりん。あ~しはこの星を調整して楽しい星にするにゃりんよ。それで神様に楽しんでもらうにゃんよ」
「アツシさんから神様に頼んでシリルを生き返らせてもらえないか?」
「神様はそんなことに興味を示さないにゃん。無数にある星の中のたった一人になんて興味ないにゃん。無理りんこ。今の神様は見るだけにゃん、見て楽しむだけにゃん。星の住人がどうなるか、星そのものがどうなるか。演劇の舞台を見るように見てるだけりんこ」

 つまりは神様ならば生き返らせることは可能だが、その願いを神様が願い届けることは不可能ということか。結論として人を生き返らせることは出来ない。

「わかった。少しだけ相談させてくれ」
「おけかぶり」

 だから投げキッスをするな、具合が悪くなる。
しおりを挟む
第三第章進行中!年内完結予定(予定)予定だよ。酷評上等! ただし具体的にね。表紙は「かわいいおんなのこメーカー」で作ってみたレイティアです。イメージですけどね。
感想 3

あなたにおすすめの小説

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

八十神天従は魔法学園の異端児~神社の息子は異世界に行ったら特待生で特異だった

根上真気
ファンタジー
高校生活初日。神社の息子の八十神は異世界に転移してしまい危機的状況に陥るが、神使の白兎と凄腕美人魔術師に救われ、あれよあれよという間にリュケイオン魔法学園へ入学することに。期待に胸を膨らますも、彼を待ち受ける「特異クラス」は厄介な問題児だらけだった...!?日本の神様の力を魔法として行使する主人公、八十神。彼はその異質な能力で様々な苦難を乗り越えながら、新たに出会う仲間とともに成長していく。学園×魔法の青春バトルファンタジーここに開幕!

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

レジェンドテイマー ~異世界に召喚されて勇者じゃないから棄てられたけど、絶対に元の世界に帰ると誓う男の物語~

裏影P
ファンタジー
【2022/9/1 一章二章大幅改稿しました。三章作成中です】 宝くじで一等十億円に当選した運河京太郎は、突然異世界に召喚されてしまう。 異世界に召喚された京太郎だったが、京太郎は既に百人以上召喚されているテイマーというクラスだったため、不要と判断されてかえされることになる。 元の世界に帰してくれると思っていた京太郎だったが、その先は死の危険が蔓延る異世界の森だった。 そこで出会った瀕死の蜘蛛の魔物と遭遇し、運よくテイムすることに成功する。 大精霊のウンディーネなど、個性溢れすぎる尖った魔物たちをテイムしていく京太郎だが、自分が元の世界に帰るときにテイムした魔物たちのことや、突然降って湧いた様な強大な力や、伝説級のスキルの存在に葛藤していく。 持っている力に振り回されぬよう、京太郎自身も力に負けない精神力を鍛えようと決意していき、絶対に元の世界に帰ることを胸に、テイマーとして異世界を生き延びていく。 ※カクヨム・小説家になろうにて同時掲載中です。

命の恩人の恩人は私だった!?

hayama_25
恋愛
借金取りに連れていかれそうになったところを、見ず知らずの方が肩代わりをしてくださったのですが… お礼を伝えたところ、その方に「ようやく恩返しができた」と言われました。 …どうやら、命の恩人の恩人は私だったようです。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

処理中です...