魔法の数はステータス!? 転移した先は女性ばかりが魔法を使う世界!

三原みぱぱ

文字の大きさ
上 下
122 / 186
第二章

姫鶴の意地

しおりを挟む
「レイティア! マックスのファイアボムはあと何発打てる?」

 俺は広場の周りを観察しながら問いかける。

「二つは連続で大丈夫よ。ちょっと時間もらえればもう一つ打てるわ! 何故かマナの溜まりが早いのよ」
「マナを貯めておいてくれ」

 暴れ象を避けながら、レイティアは軽く手を上げて答える。

「師匠、姫鶴! 四つ足の胴体を真っ二つにしてくれ!」
「師匠!うちに合わせてや」
「どいつもこいつも無茶ばかり言いよる」

 姫鶴が左に回り込み、ムサシマルは右へ移動する。

「いっくで~~~! マジックウエポン!」

 姫鶴の合図とともに姫鶴が象の胴体を半分くらい切る。再生の間を与えず、ムサシマルが残った部分を骨ごと切り離す。
 象の胴体はローストビーフを切ったかのような綺麗な断面で二つに分かれる。それは象の足を持つ熊が一匹出来上がったのと壁で隠れてしまったような象のお尻のふたつを見ているようだ。
 黒いモヤがそのふたつの生物をまた、一つに戻そうとしていた。

「ファイアボムを熊の足元に打て!!」

 合図を待っていたレイティアは左手を熊の足元の床に打つ。
 レイティアの最大パワーのファイアボムは木の床で爆発的に燃え上がっる。

 ガックン!

 古く乾いた床はその強力な熱量に負けて一気に炭化し、その強度を失い巨体が沈み込む。

 よし!

 しかし、キメラも落ちまいと床に爪をかけて抵抗する。

「バイブレーション!」
「ファイアボム!」

 しがみつく化け物に魔法でとどめを刺す二人。
 地を揺るがす叫び声あげながら、その巨体は奈落の底へと落ちていった。

 象のお尻は胴体の断面から黒いモヤがかかり、上半身を探すように怪しくうごめいている。

「レイティア!」
「少し待って!」

 無駄とわかっていながら、俺はボーガンで矢を打つ。少しでも再生が遅れればそれで良い。
 流石に連戦の疲れのため、姫鶴が肩で息をしていた。

「姫鶴! 無理をするな。さがれ!」
「うちはあの人を守るって約束したんや! こんくらいのことで……こんくらいでへばってられるか!!」

 姫鶴……。
 気持ちもわかるが、すでに気力だけで動いているのが、素人目にもわかる。これ以上は危ない。

「姫鶴、その先じゃ。その苦しみの先に剣の道が見えてくるはずじゃ。気力を燃やせ!」

 武術バカが!!
 レイティア! 早く!

 レイティアは後方でマナが貯まるのをじっと待っていた。
 暴れる象の下半身を避け、切り込もうとした瞬間、姫鶴の膝ががくりと折れる。体力の限界だ。
 ここぞとばかりに二匹の大蛇が姫鶴へ襲い掛かる。

 ガッキン!

 何とか俺が姫鶴の前に滑り込み、一匹を防ぐ。

「バイブレーション!」 

 もう一匹はソフィアが脳震とうを起こさせる。

「ひ、姫鶴さん……。あなたに……なにかあったら、シリルさんが悲しみますよ」

 ソフィアが勇気を振り絞って、姫鶴に話しかける。
 その真剣なまなざしのソフィアの気持ちが届いたのか、姫鶴は黙って化け物の半身から距離を取る。

「みんな下がって!」

 レイティアの言葉にムサシマルは化け物の残りの足を切り離し、動きを止める。

「ファイアボム!」

 上半身の時と同様、床木を大きく燃やし尽くすレイティアの炎は床とともにキメラも炎に包む。
 真っ赤に燃え上がったその体は漆黒の闇を照らしながら縦穴の底へ消えて行った。

 地下で上半身と合体するのだろうな。そんなことをぼんやりと考えながら、俺は不死の化け物を見送る。

「シリル!!!」

 姫鶴はすでに足が上がらなくなっているのか、何度か躓きながらシリルと兼光のもとへ走り寄った。
しおりを挟む
第三第章進行中!年内完結予定(予定)予定だよ。酷評上等! ただし具体的にね。表紙は「かわいいおんなのこメーカー」で作ってみたレイティアです。イメージですけどね。
感想 3

あなたにおすすめの小説

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

異世界遺跡巡り ~ロマンを求めて異世界冒険~

小狸日
ファンタジー
交通事故に巻き込まれて、異世界に転移した拓(タク)と浩司(コウジ) そこは、剣と魔法の世界だった。 2千年以上昔の勇者の物語、そこに出てくる勇者の遺産。 新しい世界で遺跡探検と異世界料理を楽しもうと思っていたのだが・・・ 気に入らない異世界の常識に小さな喧嘩を売ることにした。

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

処理中です...