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第二章
姫鶴 対 サイゾウ
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姫鶴は一つ深く息を吐き出すと、正眼に剣を構えなおす。
背筋をピンと伸ばし、右足を前に重心を中心に剣は中段。
相対するサイゾウは短剣を持つ両手をだらりと下ろし、腰を低くいつでもどの方向にでも動ける構えをしている。
一瞬の静寂の後、先に動いたのはサイゾウだった。
低い体勢から一気に間合いを詰め、右の短剣を切り上げる。
姫鶴は後ろヘ下がりながら、剣を振り上げる。
そこへ左の短剣を薙ぎ払いながら、再度間合いを詰める。
姫鶴はそれを剣で受ける。
右、左、右、右と不規則に左右の短剣を打ち込むサイゾウ。
上段、下段、中段。突き、薙ぎ払い、袈裟切り。次々と緩急をつけて舞のように打ち込む姿を俺は過去に見たことがある。
百鬼阿修羅!
姫鶴が催眠状態で繰り出し技。
何種類かある切れ目なく繰り出されるように決められた斬撃を舞う。そのためどの種類かが分かれば次に繰り出される技が分かるはずだ。
足元を狙う左を足を上げて避けながら右の切り上げに合わせて姫鶴は剣を突き立てる。
「もろた~!」
ガッ!
姫鶴の剣が床に刺さる!
サイゾウの姿が消え、まるで残像に剣を突き刺したように。
「うしろッ!」
サイゾウは前転で姫鶴の後ろへ移動し、姫鶴の位置を確認もせず、体をひねらせ螺旋状に刃を走らせる。
飛び散る真っ赤な鮮血!
刃は身体深く食い込み、サイゾウの動きを止める。
「シリルゥゥゥ!!」
キャラメルブラウンの髪は前半分赤く染まり、その愛らしい口元からは血が噴き出した。
その小さな腕は自らの体に突き刺さった凶刃と手をつかみ離さない。
姫鶴は振り向きざま上段よりサイゾウの脳天へ剣を振り下ろす。
「離せ!」
身を捻じってその必殺の一撃を避けようとするサイゾウの右腕が二の腕から切り離される。
叫び声とともに血を吹き出し、床に転がる男。
血まみれになるのをいとわず、腹から胸あたりまで切られ臓物の一部が飛び出し破損した少年を抱きかかえ、その名前を叫ぶ少女。
「シリル! シリル!」
「ゴフォッ、ぶじ……で、よか……」
「しゃべるな!」
俺はバックからポーションを取り出し、傷口にかける。
綺麗な布を取り出して傷口を押さえるも、すぐ真っ赤になりしたたり落ちる。
布の上からもポーションをかけるが傷口が深すぎるのか、血が止まらない。
「兼光! 兼光はどこ行った! あいつならどうにかできる!」
このままではシリルの命が零れ落ちる。
「そや、兼光! 兼光! どこおるんや! すぐ戻ってきぃー!」
血と涙でぐちゃぐちゃになったまま、ドラゴンを呼ぶ姫鶴。
「よくもやってくれましたね! まだ未完成ですが、そんなことはもういいです」
右手を失った男は口笛を吹く。
床を大きく揺らして”それ”は現れた。
四つ足の硬そうな皮膚を持つ象の体の上に毛むくじゃらで鋭い爪と牙を持つ熊の上半身、尻尾には毒の滴る牙で威嚇する大蛇が三匹の異形の生物、キメラ。
見上げるほどの大きな体を持つ化け物が現れた。
「キヨにぃ、うちの人を頼む」
姫鶴はそっとシリルを俺に預けて立ち上がる。
「ふざけるな!!」
姫鶴は剣を引きずりながら、サイゾウへ走りよる。
渾身の右からの切り上げを残った左手で受け止める。
「舐めないでください!」
左手一本で姫鶴の剣を押し返す。
宙を舞う姫鶴の剣!
上段より襲いかかる右足のカカト!
紙一重で首を傾け、肩で受けるサイゾウ。
それと同時に頭を掴みながら左の膝が跳ね上がり、サイゾウの顎を砕く!
その勢いのまま、左足も肩にかけ、裏表逆の肩車になる。
姫鶴は砕けた顎と頭を抱え、自分の体ごと天地逆転にひねる。
ゴキッ!
首の骨が折れる音と同時に天地逆転のまま、サイゾウの握りしめていた短剣をつかみ、その心臓に突き刺さす!
まるで虎が獲物の頭に噛み付いたまま、首の骨を折り、最後に牙を突き立てたようだ。
虎口捻り!
顔の上下が逆さまになり、心臓に突き刺さった短剣から血を噴水のように噴き出している死体を見ながら、俺の脳裏にその姫鶴の一連の動きから言葉が浮かんだ。
背筋をピンと伸ばし、右足を前に重心を中心に剣は中段。
相対するサイゾウは短剣を持つ両手をだらりと下ろし、腰を低くいつでもどの方向にでも動ける構えをしている。
一瞬の静寂の後、先に動いたのはサイゾウだった。
低い体勢から一気に間合いを詰め、右の短剣を切り上げる。
姫鶴は後ろヘ下がりながら、剣を振り上げる。
そこへ左の短剣を薙ぎ払いながら、再度間合いを詰める。
姫鶴はそれを剣で受ける。
右、左、右、右と不規則に左右の短剣を打ち込むサイゾウ。
上段、下段、中段。突き、薙ぎ払い、袈裟切り。次々と緩急をつけて舞のように打ち込む姿を俺は過去に見たことがある。
百鬼阿修羅!
姫鶴が催眠状態で繰り出し技。
何種類かある切れ目なく繰り出されるように決められた斬撃を舞う。そのためどの種類かが分かれば次に繰り出される技が分かるはずだ。
足元を狙う左を足を上げて避けながら右の切り上げに合わせて姫鶴は剣を突き立てる。
「もろた~!」
ガッ!
姫鶴の剣が床に刺さる!
サイゾウの姿が消え、まるで残像に剣を突き刺したように。
「うしろッ!」
サイゾウは前転で姫鶴の後ろへ移動し、姫鶴の位置を確認もせず、体をひねらせ螺旋状に刃を走らせる。
飛び散る真っ赤な鮮血!
刃は身体深く食い込み、サイゾウの動きを止める。
「シリルゥゥゥ!!」
キャラメルブラウンの髪は前半分赤く染まり、その愛らしい口元からは血が噴き出した。
その小さな腕は自らの体に突き刺さった凶刃と手をつかみ離さない。
姫鶴は振り向きざま上段よりサイゾウの脳天へ剣を振り下ろす。
「離せ!」
身を捻じってその必殺の一撃を避けようとするサイゾウの右腕が二の腕から切り離される。
叫び声とともに血を吹き出し、床に転がる男。
血まみれになるのをいとわず、腹から胸あたりまで切られ臓物の一部が飛び出し破損した少年を抱きかかえ、その名前を叫ぶ少女。
「シリル! シリル!」
「ゴフォッ、ぶじ……で、よか……」
「しゃべるな!」
俺はバックからポーションを取り出し、傷口にかける。
綺麗な布を取り出して傷口を押さえるも、すぐ真っ赤になりしたたり落ちる。
布の上からもポーションをかけるが傷口が深すぎるのか、血が止まらない。
「兼光! 兼光はどこ行った! あいつならどうにかできる!」
このままではシリルの命が零れ落ちる。
「そや、兼光! 兼光! どこおるんや! すぐ戻ってきぃー!」
血と涙でぐちゃぐちゃになったまま、ドラゴンを呼ぶ姫鶴。
「よくもやってくれましたね! まだ未完成ですが、そんなことはもういいです」
右手を失った男は口笛を吹く。
床を大きく揺らして”それ”は現れた。
四つ足の硬そうな皮膚を持つ象の体の上に毛むくじゃらで鋭い爪と牙を持つ熊の上半身、尻尾には毒の滴る牙で威嚇する大蛇が三匹の異形の生物、キメラ。
見上げるほどの大きな体を持つ化け物が現れた。
「キヨにぃ、うちの人を頼む」
姫鶴はそっとシリルを俺に預けて立ち上がる。
「ふざけるな!!」
姫鶴は剣を引きずりながら、サイゾウへ走りよる。
渾身の右からの切り上げを残った左手で受け止める。
「舐めないでください!」
左手一本で姫鶴の剣を押し返す。
宙を舞う姫鶴の剣!
上段より襲いかかる右足のカカト!
紙一重で首を傾け、肩で受けるサイゾウ。
それと同時に頭を掴みながら左の膝が跳ね上がり、サイゾウの顎を砕く!
その勢いのまま、左足も肩にかけ、裏表逆の肩車になる。
姫鶴は砕けた顎と頭を抱え、自分の体ごと天地逆転にひねる。
ゴキッ!
首の骨が折れる音と同時に天地逆転のまま、サイゾウの握りしめていた短剣をつかみ、その心臓に突き刺さす!
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虎口捻り!
顔の上下が逆さまになり、心臓に突き刺さった短剣から血を噴水のように噴き出している死体を見ながら、俺の脳裏にその姫鶴の一連の動きから言葉が浮かんだ。
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