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第二章

魔法少女

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「グァウン!」
「キャウヲン!」

 襲いかかった魔物が数匹、弾かれるように転がる。

 姫鶴! 無事だったか!

 弾かれたのは魔物だけではない。残った雷は魔物へ弾き返され、土煙が晴れる。

 そこに立つ一人の少女。

 紫に近い青い髪はウエーブがかかり、左右に赤いリボンで留められている俗に言うツインテール。
 切れ長の黒い瞳に長く伸びたまつ毛、唇には赤い紅が引かれていた。
 白地に赤い装飾の入ったフリフリの洋服は半袖にへそ出し、ミニスカートそして軽いハイヒールの入ったブーツ。
 決して戦闘向きではなさそうなその姿でその少女は魔法を弾き、魔物を殴りつけ、蹴散らしていた。

「魔法少女キュアプリィ!?」

 無意識に俺は誰に言うでもなく呟いていた。

「誰!? 姫鶴ちゃんはどこいったの?」

 魔法少女を見たレイティアの言葉に俺は我にかえった。

「と、とりあえず、彼女は俺たちの敵ではなさそうだ! とりあえず目の前の魔物を退治するぞ!」

 レイティアは俺たちを巻き込まないようにファイアボールを打ち込み、魔物を相手にする。
 そして気が付くとムサシマルは黙々と数匹の玉を砕いていた。

「キヨ!」

 魔物を相手にしながら俺を呼ぶ。

「ソフィア、少しの間、自分とガンドを守れ!」

 そう言い残して盾を構えてムサシマルの側に移動する。
 
「何個いる?」
「この調子だと二個じゃな」

 俺はムサシマルにマナ石を渡すと邪魔にならないようにソフィアの元へ戻りながら例の魔法少女をみると、兼光が魔法少女のそばで喜々として魔物の玉をついばんでいた。
 
 魔物の数がだいぶ減ってきた。もう一息だ。

「キヨ! 追加じゃ! レイティア、下のもんは任せろ! 上を頼む」

 その声に俺もレイティアも上を見た!

 柔らかな緑の木々の向こうに見える青空に黒いシミが点々と広がる。

 鳥型の魔物!
 虎型の魔物から空へ逃れられるはずの鳥の声が聞こえなくなっていた理由はこれか!

 古来から戦いにおいて高所を陣取ることは優位を示す。
 俺たちはレイティアのそばに移動する。レイティアに襲いかかる虎型は俺とソフィアで抑え、鳥型はファイアボールで落とそうとするが、ファイアアローと違ってスピードのないファイアボールはバカにされているかのように避けられる。

 逃げるか? 虎型さえ倒してしまえば、逃げられるか? いや、上空から魔法を使われれば一方的にやられてしまう。

「きゃ~! なんやねん。こいつら! 離し~!」

 声のする方を見ると魔法少女が数匹の鳥に捕まれ、空へ運ばれるところだった。
 肩や背中、腰についた真っ黒い羽は見方によっては堕天使のように見え、思わず見とれていると、魔法少女は十メートル近くまで持ち上げられていた。
 それを助けようと飛び出したキャラメルブラウンの影は軽快に勢いよく木を駆け上がる。

「姫姉ちゃんを~離せっ!!」

 そう言って木の頂上から魔法少女へ向かってジャンプをした。
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