113 / 186
第二章
山頂への道のり
しおりを挟む
そして俺たちは鳥の鳴き声一つしない緑の深い山を登り始めた。
一応、山頂へと続く道はあった。
元々、この山のマナ石採掘は山頂と今の中腹と二ヶ所で行なっていたらしい。この山で取れるマナ石は山頂に方が良質らしく、山頂で採掘したものを今の集落で加工をしていたらしい。そのため行き来ができるだけの道は整備されている。
その山頂の採掘場に犯人が立てこもっているらしい。
そんな話を聞きながら俺たちは山頂を目指した。
「ちょっと待ってくれ!」
一番初めに体力の限界が来たのはソフィアだった。
「だ、大丈夫……です。ま、だ歩け、ハァ、ハァますから」
特に荷物を持っているわけではないのだが、元々研究者であるソフィアは体力がない。
「兼光、乗せてやれるか?」
『え~なんで僕が?』
「兼光、乗せてやり~。あんた人一人くらい余裕やろ。かあちゃんがあの黒い玉見つけたら、食べさせてやるさかい」
姫鶴の言葉に渋っていた顔がパッと明るくなる。
『わかった! おばちゃん、乗っていいよ。だけど翼は触んないでね』
そう言ってソフィアが乗りやすいように両手両足を曲げてしゃがむ。翼はデリケートなのかピタリと閉じて、ソフィアが背中に乗るのを尻尾で助ける。
そういえば、こいつ翼を持ってるんだよな。
「なあ、兼光。お前は空を飛べないのか?」
ゴブリンの巣に向かうときに見たあの大型のドラゴンはかなりのスピードで飛んでいた。こんな山の頂上でも難なく飛べるだろう。そういえば兼光って地上種なのか、飛行種なのか聞いていなかったな。
『飛べるわけないじゃない。おじさんはおかしなことを言うんだね。ねえ、ママ』
「……兼光。あんた……飛べるで」
姫鶴は何か思い出したように言葉を絞り出した。
『どう言うこと? ママが飛んでるところ、僕は見たことないよ』
「あ~。そや! 男の子しか飛べないや。だから、うちは飛べへんけど、兼光は練習すれば飛べるんやで」
姫鶴の言葉にイマイチ納得していない兼光をほっておいて、俺は姫鶴に小さな声で尋ねる。
「どう言うことだ?」
姫鶴は兼光と初めて会った時のことを俺に説明する。親ドラゴンが飛んで姫鶴たちを追いかけて来た所まで。
「そやから、兼光もそのうち飛べるはずなんや」
「でも、どうやって飛び方なんて教えるんだ?」
「そんなん、うちに言われたかて、困るがな。キヨにぃが考えてよ」
「俺だって知るかよ! 鳥と同じようにちょっとした高さから少しづつ飛ばせばいいんじゃないのか?」
「そんなんでええんかいな?」
姫鶴は不審そうな顔で俺を見るが、俺だって分かんないと反論する。
「頼りないな~」
姫鶴はそういいながら、俺が言った通りのことを兼光に話す。
しばらくしてソフィアの体力が回復した頃、兼光はソフィアを降ろす。そしてピョンピョンとジャンプをしながら、体に比べて小さな翼をパタパタと羽ばたかせる。
しかし、飛ぶどころか、そのジャンプも五十センチくらいしか飛んでいない。こいつは本当に飛行種か?
そんな兼光の飛行訓練をしながら山を登っていると真っ黒な虎のような物が道を塞いでいた。
真っ黒な炎のように揺らめき、その顔からは一切の表情が読み取れない擬似生命体。
魔物!
通常の武器の効かないこいつに前回は苦戦したが、今回は対策をしている。
「マジックウエポン!」
姫鶴の剣が光のオーラに包まれ、魔剣を持ったムサシマルと一緒に魔物へ襲いかかる。
左右から同時に襲いかかる二人に迷ったのか、魔物はその場で仁王立ちをなる。
一閃!
姫鶴はその背の低さを利用して魔物の下半身を横殴りに切りつける。
ムサシマルは肩から袈裟に切りつけ、片手まで切り離す。刃が魔物の体に吸い込まれたその瞬間のみ魔剣が光ったのを俺は見逃さなかった。必要最小限のみマナを流し、マナ切れを起こさないように工夫しているようだ。
「ファイアボール!」
レイティアは動きが止まった魔物に向かって左手をかざす。その顔はいつもと違って眉間にシワを寄せて難しい顔をしていた。
いつものようにレイティアの左手から放たれた炎の玉の爆発から逃れるように二人は魔物から大きく距離を取る。
体を再度形成しようともがく魔物にぶつかった炎の玉はいつもとは比べ物にならないほど小さく爆発した。その大きさはリタが使っていたものより一回り大きい程度だった。
「出来たわ! マナ量の調整。キヨの言った通り流れ出す水の量を絞るイメージでやって見たわよ」
昨晩、レイティアのマナ量の話をした時に、エルフのリーから教えてもらったマナ量の調整方法を思い出し、レイティアに説明しておいたのだが、上手くいったようだ。この大きさなら使い勝手が良くなる。
炎が収まった後、魔物の腹部には核である黒い玉が表に浮かんでいた。
『いっただきま~す!』
それを砕くことなく兼光が丸呑みをして魔物は消滅した。
「すごいです! 本当に魔物がこんなに簡単に退治できるなんて!」
武器を構えて、魔盾を持つ俺と魔剣を持つソフィアの後ろでシリルと一緒に戦いを見ていたガンドが驚嘆の声を上げる。
一応、山頂へと続く道はあった。
元々、この山のマナ石採掘は山頂と今の中腹と二ヶ所で行なっていたらしい。この山で取れるマナ石は山頂に方が良質らしく、山頂で採掘したものを今の集落で加工をしていたらしい。そのため行き来ができるだけの道は整備されている。
その山頂の採掘場に犯人が立てこもっているらしい。
そんな話を聞きながら俺たちは山頂を目指した。
「ちょっと待ってくれ!」
一番初めに体力の限界が来たのはソフィアだった。
「だ、大丈夫……です。ま、だ歩け、ハァ、ハァますから」
特に荷物を持っているわけではないのだが、元々研究者であるソフィアは体力がない。
「兼光、乗せてやれるか?」
『え~なんで僕が?』
「兼光、乗せてやり~。あんた人一人くらい余裕やろ。かあちゃんがあの黒い玉見つけたら、食べさせてやるさかい」
姫鶴の言葉に渋っていた顔がパッと明るくなる。
『わかった! おばちゃん、乗っていいよ。だけど翼は触んないでね』
そう言ってソフィアが乗りやすいように両手両足を曲げてしゃがむ。翼はデリケートなのかピタリと閉じて、ソフィアが背中に乗るのを尻尾で助ける。
そういえば、こいつ翼を持ってるんだよな。
「なあ、兼光。お前は空を飛べないのか?」
ゴブリンの巣に向かうときに見たあの大型のドラゴンはかなりのスピードで飛んでいた。こんな山の頂上でも難なく飛べるだろう。そういえば兼光って地上種なのか、飛行種なのか聞いていなかったな。
『飛べるわけないじゃない。おじさんはおかしなことを言うんだね。ねえ、ママ』
「……兼光。あんた……飛べるで」
姫鶴は何か思い出したように言葉を絞り出した。
『どう言うこと? ママが飛んでるところ、僕は見たことないよ』
「あ~。そや! 男の子しか飛べないや。だから、うちは飛べへんけど、兼光は練習すれば飛べるんやで」
姫鶴の言葉にイマイチ納得していない兼光をほっておいて、俺は姫鶴に小さな声で尋ねる。
「どう言うことだ?」
姫鶴は兼光と初めて会った時のことを俺に説明する。親ドラゴンが飛んで姫鶴たちを追いかけて来た所まで。
「そやから、兼光もそのうち飛べるはずなんや」
「でも、どうやって飛び方なんて教えるんだ?」
「そんなん、うちに言われたかて、困るがな。キヨにぃが考えてよ」
「俺だって知るかよ! 鳥と同じようにちょっとした高さから少しづつ飛ばせばいいんじゃないのか?」
「そんなんでええんかいな?」
姫鶴は不審そうな顔で俺を見るが、俺だって分かんないと反論する。
「頼りないな~」
姫鶴はそういいながら、俺が言った通りのことを兼光に話す。
しばらくしてソフィアの体力が回復した頃、兼光はソフィアを降ろす。そしてピョンピョンとジャンプをしながら、体に比べて小さな翼をパタパタと羽ばたかせる。
しかし、飛ぶどころか、そのジャンプも五十センチくらいしか飛んでいない。こいつは本当に飛行種か?
そんな兼光の飛行訓練をしながら山を登っていると真っ黒な虎のような物が道を塞いでいた。
真っ黒な炎のように揺らめき、その顔からは一切の表情が読み取れない擬似生命体。
魔物!
通常の武器の効かないこいつに前回は苦戦したが、今回は対策をしている。
「マジックウエポン!」
姫鶴の剣が光のオーラに包まれ、魔剣を持ったムサシマルと一緒に魔物へ襲いかかる。
左右から同時に襲いかかる二人に迷ったのか、魔物はその場で仁王立ちをなる。
一閃!
姫鶴はその背の低さを利用して魔物の下半身を横殴りに切りつける。
ムサシマルは肩から袈裟に切りつけ、片手まで切り離す。刃が魔物の体に吸い込まれたその瞬間のみ魔剣が光ったのを俺は見逃さなかった。必要最小限のみマナを流し、マナ切れを起こさないように工夫しているようだ。
「ファイアボール!」
レイティアは動きが止まった魔物に向かって左手をかざす。その顔はいつもと違って眉間にシワを寄せて難しい顔をしていた。
いつものようにレイティアの左手から放たれた炎の玉の爆発から逃れるように二人は魔物から大きく距離を取る。
体を再度形成しようともがく魔物にぶつかった炎の玉はいつもとは比べ物にならないほど小さく爆発した。その大きさはリタが使っていたものより一回り大きい程度だった。
「出来たわ! マナ量の調整。キヨの言った通り流れ出す水の量を絞るイメージでやって見たわよ」
昨晩、レイティアのマナ量の話をした時に、エルフのリーから教えてもらったマナ量の調整方法を思い出し、レイティアに説明しておいたのだが、上手くいったようだ。この大きさなら使い勝手が良くなる。
炎が収まった後、魔物の腹部には核である黒い玉が表に浮かんでいた。
『いっただきま~す!』
それを砕くことなく兼光が丸呑みをして魔物は消滅した。
「すごいです! 本当に魔物がこんなに簡単に退治できるなんて!」
武器を構えて、魔盾を持つ俺と魔剣を持つソフィアの後ろでシリルと一緒に戦いを見ていたガンドが驚嘆の声を上げる。
0
お気に入りに追加
61
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~
繭
ファンタジー
高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。
見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に
え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。
確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!?
ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・
気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。
誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!?
女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話
保険でR15
タイトル変更の可能性あり
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました
遥 かずら
ファンタジー
冒険者ギルドに所属しているエンジは剣と魔法の才能が無く、文字を書くことだけが取り柄であった。落ちこぼれスキル【転写】を使いギルド帳の筆記作業で生計を立てていた。そんなある日、立ち寄った勇者パーティーの貴重な古代書を間違って書き写してしまい、盗人扱いされ、勇者によってギルドから追放されてしまう。
追放されたエンジは、【転写】スキルが、物やスキル、ステータスや魔法に至るまで何でも【コピー】できるほどに極められていることに気が付く。
やがて彼は【コピー】マスターと呼ばれ、世界最強の冒険者となっていくのであった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
生活魔法は万能です
浜柔
ファンタジー
生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。
それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。
――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
覚悟ガンギマリ系主人公がハーレムフラグをへし折りつつ、クールな褐色女戦士をデレさせて異世界を救うパワー系ダークファンタジー/ヴァンズブラッド
鋏池穏美
ファンタジー
【絶望の中目覚めた『無詠唱特殊魔術』で崩壊世界を駆け抜ける──敵意や痛みを力に変える、身体強化系最強主人公の無双劇】
魔素が溢れ、暗がりで魔獣蠢く崩壊世界ミズガルズ──
この狂った世界で産み落とされたノヒンは、山賊一家に育てられ、荒んだ幼少期を過ごしていた。
初めて仕事を任されたその日、魔獣の力をその身に宿した少女『ヨーコ』と出会い、恋に落ちる。
束の間の平穏と幸せな日々。だがそれも長くは続かず──
その後ヨーコと離別し、騎士へとなったノヒンは運命の相手『ジェシカ』に出会う。かつて愛したヨーコとジェシカの間で揺れるノヒンの心。さらにジェシカは因縁の相手、ラグナスによって奪われ──
発動する数千年前の英雄の力
「無詠唱特殊魔術」
それは敵意や痛みで身体強化し、自己再生力を限界突破させる力。
明かされる神話──
NACMO(ナクモ)と呼ばれる魔素──
失われし東方の国──
ヨルムンガンドの魔除け──
神話時代の宿因が、否応無くノヒンを死地へと駆り立てる。
【第11回ネット小説大賞一次選考通過】
※小説家になろうとカクヨムでも公開しております。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる