魔法の数はステータス!? 転移した先は女性ばかりが魔法を使う世界!

三原みぱぱ

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第二章

山頂への道のり

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 そして俺たちは鳥の鳴き声一つしない緑の深い山を登り始めた。

 一応、山頂へと続く道はあった。
 元々、この山のマナ石採掘は山頂と今の中腹と二ヶ所で行なっていたらしい。この山で取れるマナ石は山頂に方が良質らしく、山頂で採掘したものを今の集落で加工をしていたらしい。そのため行き来ができるだけの道は整備されている。
 その山頂の採掘場に犯人が立てこもっているらしい。

 そんな話を聞きながら俺たちは山頂を目指した。

「ちょっと待ってくれ!」

 一番初めに体力の限界が来たのはソフィアだった。

「だ、大丈夫……です。ま、だ歩け、ハァ、ハァますから」

 特に荷物を持っているわけではないのだが、元々研究者であるソフィアは体力がない。

「兼光、乗せてやれるか?」
『え~なんで僕が?』
「兼光、乗せてやり~。あんた人一人くらい余裕やろ。かあちゃんがあの黒い玉見つけたら、食べさせてやるさかい」

 姫鶴の言葉に渋っていた顔がパッと明るくなる。

『わかった! おばちゃん、乗っていいよ。だけど翼は触んないでね』

 そう言ってソフィアが乗りやすいように両手両足を曲げてしゃがむ。翼はデリケートなのかピタリと閉じて、ソフィアが背中に乗るのを尻尾で助ける。

 そういえば、こいつ翼を持ってるんだよな。

「なあ、兼光。お前は空を飛べないのか?」

 ゴブリンの巣に向かうときに見たあの大型のドラゴンはかなりのスピードで飛んでいた。こんな山の頂上でも難なく飛べるだろう。そういえば兼光って地上種なのか、飛行種なのか聞いていなかったな。

『飛べるわけないじゃない。おじさんはおかしなことを言うんだね。ねえ、ママ』
「……兼光。あんた……飛べるで」

 姫鶴は何か思い出したように言葉を絞り出した。

『どう言うこと? ママが飛んでるところ、僕は見たことないよ』
「あ~。そや! 男の子しか飛べないや。だから、うちは飛べへんけど、兼光は練習すれば飛べるんやで」

 姫鶴の言葉にイマイチ納得していない兼光をほっておいて、俺は姫鶴に小さな声で尋ねる。

「どう言うことだ?」

 姫鶴は兼光と初めて会った時のことを俺に説明する。親ドラゴンが飛んで姫鶴たちを追いかけて来た所まで。

「そやから、兼光もそのうち飛べるはずなんや」
「でも、どうやって飛び方なんて教えるんだ?」
「そんなん、うちに言われたかて、困るがな。キヨにぃが考えてよ」
「俺だって知るかよ! 鳥と同じようにちょっとした高さから少しづつ飛ばせばいいんじゃないのか?」
「そんなんでええんかいな?」

 姫鶴は不審そうな顔で俺を見るが、俺だって分かんないと反論する。

「頼りないな~」

 姫鶴はそういいながら、俺が言った通りのことを兼光に話す。

 しばらくしてソフィアの体力が回復した頃、兼光はソフィアを降ろす。そしてピョンピョンとジャンプをしながら、体に比べて小さな翼をパタパタと羽ばたかせる。
 しかし、飛ぶどころか、そのジャンプも五十センチくらいしか飛んでいない。こいつは本当に飛行種か?

 そんな兼光の飛行訓練をしながら山を登っていると真っ黒な虎のような物が道を塞いでいた。
 真っ黒な炎のように揺らめき、その顔からは一切の表情が読み取れない擬似生命体。

 魔物!

 通常の武器の効かないこいつに前回は苦戦したが、今回は対策をしている。

「マジックウエポン!」

 姫鶴の剣が光のオーラに包まれ、魔剣を持ったムサシマルと一緒に魔物へ襲いかかる。
 左右から同時に襲いかかる二人に迷ったのか、魔物はその場で仁王立ちをなる。

 一閃!

 姫鶴はその背の低さを利用して魔物の下半身を横殴りに切りつける。
 ムサシマルは肩から袈裟に切りつけ、片手まで切り離す。刃が魔物の体に吸い込まれたその瞬間のみ魔剣が光ったのを俺は見逃さなかった。必要最小限のみマナを流し、マナ切れを起こさないように工夫しているようだ。

「ファイアボール!」

 レイティアは動きが止まった魔物に向かって左手をかざす。その顔はいつもと違って眉間にシワを寄せて難しい顔をしていた。
 いつものようにレイティアの左手から放たれた炎の玉の爆発から逃れるように二人は魔物から大きく距離を取る。
 体を再度形成しようともがく魔物にぶつかった炎の玉はいつもとは比べ物にならないほど小さく爆発した。その大きさはリタが使っていたものより一回り大きい程度だった。

「出来たわ! マナ量の調整。キヨの言った通り流れ出す水の量を絞るイメージでやって見たわよ」

 昨晩、レイティアのマナ量の話をした時に、エルフのリーから教えてもらったマナ量の調整方法を思い出し、レイティアに説明しておいたのだが、上手くいったようだ。この大きさなら使い勝手が良くなる。
 炎が収まった後、魔物の腹部には核である黒い玉が表に浮かんでいた。

『いっただきま~す!』

 それを砕くことなく兼光が丸呑みをして魔物は消滅した。

「すごいです! 本当に魔物がこんなに簡単に退治できるなんて!」

 武器を構えて、魔盾を持つ俺と魔剣を持つソフィアの後ろでシリルと一緒に戦いを見ていたガンドが驚嘆の声を上げる。
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