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第二章
山の夜明け
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深い眠りから揺り起こされる。
まだ、薄暗く朝の涼しい風が深緑の香りを運んできた。
風に揺れる木々の擦れる音が俺が山で寝ていたことを思い出させてくれる。
「ガンドが来たのか? ソフィア」
「はい、ご主人様。お疲れのところ申し訳ありません」
「いや、ありがとう」
そう言って大きく伸びをした俺は髭のない青年を見る。
ガンドは昨夜とは違い、胸からへそのあたりまである鉄の鎧を身に付け、漫画に出てくるバイキングが付けているような角の生えた鉄の兜をつけていた。手には自分よりちょうど俺の背丈ほどの槍を持っている。
「みんなを起こしてきてくれないか? 俺は朝食の準備をしておくから」
俺は焚き火でやかんと鍋にお湯を沸かし、じゃがいもを茹でる。
軽く焼いたパンの上に塩気のないバターを塗り、炙った干し肉を乗せ、七人分の朝食を作る。
やかんのお湯でコーヒーを入れるとレイティアたちが起きてきた。
「おはようさん。なんや今日はえろう早起きさんやな。ありゃ? 昨日の子供おっさんやないかい」
寝癖のついた短い黒髪を直しながら、朝食を食べる。
姫鶴よりも少しだけ背の低いドワーフ青年を子供おっさんと表現するこいつは相変わらず怖いもの知らずだ。
「食事をしながらでいいから聞いてくれ。このあと俺たちはここにいるガンドの依頼で山頂に向かう。そこで姫鶴、兼光それにシリルはどうする? ここで荷物番をしてくれてもいいんだぞ」
「みんな行くんやろ、うちも行くで。あちぃ」
『ママどこ行くの? ピクニック? 僕も行く~』
姫鶴は拳より少し小さいじゃがいもの皮をむきながら簡単に答え、それに兼光が同調する。
塩を少しつけて頬張り、小さく呟く。
「……それにシリルとふたりっきりはまだちょっとな」
「なんか言ったか?」
「何でもない。兼光も一緒に行くさかいな。荷物どうするんや?」
「シリルはここで荷物番をしてくれるか?」
空いたカップにコーヒーを注いで回るキャラメルブラウンの髪の幼さの残る可愛い男の子は俺の声に反応して、こちらを見る。
「僕も行きますよ。姫姉ちゃんが行くなら」
結局全員参加かよ。昨日俺が悩んでたのはなんなんだよ。付き合いがいいのか、何も考えていないのか。
そうなると問題は荷物だな。
「僕の工房があります。そこに荷物を置いていただければ安全ですよ」
「工房を持ってるの?」
ガンドの言葉にレイティアが反応する。
「はい。まだ駆け出しですが、いなくなったシド叔父さんの研究していた魔具の製作を引き継いでいるんです。お渡しした魔具はシド叔父さんが残した最後の一本で僕の研究用なんですよ」
「工房を持ってるというのはすごいのか?」
「まあ、職人の一人前の証だからね。若くて工房持ちって少ないんじゃない?」
朝の柔らかな光があたりを照らし始め、それまで暗い緑の葉が輝きを取り戻し始めた。
「それで頂上までの道は分かっているのか?」
「はい。三日に一度食料を頂上近くまで運びますので、道は分かります。そして今日その食料を運ぶ日になっています。僕がその役割を変わってもらったので、受け渡し場所で待っていれば奴が現れるはずです」
「受け渡し場所までどのくらいかかる? それと受け渡し時間は?」
「何もなければ六時間くらいです。受け渡し時間は決まってなく、通常は荷物を置いて下山します。おそらく夕方までには奴は現れると思います」
「時間的には余裕はあるのか」
「行くだけなら、十分ですが、私は奴が来る前に準備をしたいのですぐ出発していただけないでしょうか?」
朝食を終え、装備を整える仲間達を見る。
剣を鞘から抜かれた刃は夜明けの光に煌めき、その鋭利さを象徴する。
各々の装備の点検が終わる。
まだ、薄暗く朝の涼しい風が深緑の香りを運んできた。
風に揺れる木々の擦れる音が俺が山で寝ていたことを思い出させてくれる。
「ガンドが来たのか? ソフィア」
「はい、ご主人様。お疲れのところ申し訳ありません」
「いや、ありがとう」
そう言って大きく伸びをした俺は髭のない青年を見る。
ガンドは昨夜とは違い、胸からへそのあたりまである鉄の鎧を身に付け、漫画に出てくるバイキングが付けているような角の生えた鉄の兜をつけていた。手には自分よりちょうど俺の背丈ほどの槍を持っている。
「みんなを起こしてきてくれないか? 俺は朝食の準備をしておくから」
俺は焚き火でやかんと鍋にお湯を沸かし、じゃがいもを茹でる。
軽く焼いたパンの上に塩気のないバターを塗り、炙った干し肉を乗せ、七人分の朝食を作る。
やかんのお湯でコーヒーを入れるとレイティアたちが起きてきた。
「おはようさん。なんや今日はえろう早起きさんやな。ありゃ? 昨日の子供おっさんやないかい」
寝癖のついた短い黒髪を直しながら、朝食を食べる。
姫鶴よりも少しだけ背の低いドワーフ青年を子供おっさんと表現するこいつは相変わらず怖いもの知らずだ。
「食事をしながらでいいから聞いてくれ。このあと俺たちはここにいるガンドの依頼で山頂に向かう。そこで姫鶴、兼光それにシリルはどうする? ここで荷物番をしてくれてもいいんだぞ」
「みんな行くんやろ、うちも行くで。あちぃ」
『ママどこ行くの? ピクニック? 僕も行く~』
姫鶴は拳より少し小さいじゃがいもの皮をむきながら簡単に答え、それに兼光が同調する。
塩を少しつけて頬張り、小さく呟く。
「……それにシリルとふたりっきりはまだちょっとな」
「なんか言ったか?」
「何でもない。兼光も一緒に行くさかいな。荷物どうするんや?」
「シリルはここで荷物番をしてくれるか?」
空いたカップにコーヒーを注いで回るキャラメルブラウンの髪の幼さの残る可愛い男の子は俺の声に反応して、こちらを見る。
「僕も行きますよ。姫姉ちゃんが行くなら」
結局全員参加かよ。昨日俺が悩んでたのはなんなんだよ。付き合いがいいのか、何も考えていないのか。
そうなると問題は荷物だな。
「僕の工房があります。そこに荷物を置いていただければ安全ですよ」
「工房を持ってるの?」
ガンドの言葉にレイティアが反応する。
「はい。まだ駆け出しですが、いなくなったシド叔父さんの研究していた魔具の製作を引き継いでいるんです。お渡しした魔具はシド叔父さんが残した最後の一本で僕の研究用なんですよ」
「工房を持ってるというのはすごいのか?」
「まあ、職人の一人前の証だからね。若くて工房持ちって少ないんじゃない?」
朝の柔らかな光があたりを照らし始め、それまで暗い緑の葉が輝きを取り戻し始めた。
「それで頂上までの道は分かっているのか?」
「はい。三日に一度食料を頂上近くまで運びますので、道は分かります。そして今日その食料を運ぶ日になっています。僕がその役割を変わってもらったので、受け渡し場所で待っていれば奴が現れるはずです」
「受け渡し場所までどのくらいかかる? それと受け渡し時間は?」
「何もなければ六時間くらいです。受け渡し時間は決まってなく、通常は荷物を置いて下山します。おそらく夕方までには奴は現れると思います」
「時間的には余裕はあるのか」
「行くだけなら、十分ですが、私は奴が来る前に準備をしたいのですぐ出発していただけないでしょうか?」
朝食を終え、装備を整える仲間達を見る。
剣を鞘から抜かれた刃は夜明けの光に煌めき、その鋭利さを象徴する。
各々の装備の点検が終わる。
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第三第章進行中!年内完結予定(予定)予定だよ。酷評上等! ただし具体的にね。表紙は「かわいいおんなのこメーカー」で作ってみたレイティアです。イメージですけどね。
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