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第二章

タマラ

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 突然の試合に中断した宴会は、試合を見に来た村人を巻き込んで大宴会へと発展した。
 村人たちは酒を飲み交わし話してみると、意外と気さくな人々ということがわかった。
 彼らに蕎麦や燻製肉の作り方を教えたり、村の郷土料理を教えてもらったりしてお互い交流を深めながら、宴会は夜遅くまで続いた。
 部屋はわざわざ一人一部屋準備してくれ、姫鶴と兼光だけは広めの同じ部屋となった。 
 女性三人は早々に宴会から引き揚げたが、ムサシマルは相変わらず酒を飲んでいる。
 今日一日の疲れのためか、俺も早々に部屋に引き上げることにした。

「しかし、なんだったんだ今日は~。一日にいろいろなことが起こりすぎだろう。イタタ」

 俺は一人、風呂に入りながら思わずつぶやく。
 右足と右手は兼光と回復薬でほぼ痛みは無くなっていたが、姫鶴につけられた顔と胸の痛み、それに兼光のタックルによる全身の擦り傷はまだそのままだ。
 重症ではないので高価な回復薬をケチったせいでもある。

 明日にはドワーフの集落だな。商売はそこからが本番か。
 朝早く立つことをムサシマルには言っているが、起きられるか心配だ。
 まあ、最悪馬車で眠ってくれとは言っているのでそれはどうにかするだろう。
 そんなことを考えながらベットに横になっていると、扉をノックする音が聞こえた。
 こんな夜遅くに来る人物を俺は一人しか知らない。

「なんだ、ソフィア。今日は疲れているんだからもう寝ろ」

 そう言いながら扉を開けた先には月明かりに照らされ、白く輝く髪と肌。暗闇に大きく開く赤い瞳。その背に白い尻尾がフリフリと揺れている。
 寝巻なのか薄手のワンピースに手には水差しを持っていた。

「もうお休みでしたか。申し訳ありません」
「いや、大丈夫だけど。どうかしたのか?」
「かなりお酒を飲まれていたようですので、水をお持ちしました」

 酒を飲んだ上に風呂上りということもあり、確かにのどが渇いている。

「失礼します」

 そう言って俺の横を通り抜けるタマラは風呂上りなのか石鹸のいい香りを漂わせていた。

「ああ、ありがとう」

 俺はベットに腰かけてタマラの注いだ水を勧められるままに飲むとタマラは俺の隣に座り、俺の顔を無表情なままでじっと見る。

「……何か話があるのか?」
「抱いていいですか?」

 ?????言葉の意味を理解できず、思考が固まる。
 タマラはあくまで無表情で真っすぐこちらを見ている。

「は? なんて言った?」
「抱いてもいいですか?」
「ハグのことか?」
「子作りです」

 聞き間違いでもなく、意味も間違いようもない言い方だ。

「ちょっと思考が追い付かないんだけど、どこからそんな話になった? ……マルゴットか? マルゴットの命令か?」
「親方からは村を案内すること。言われたことに従うことの命令は受けましたが、これはタマラの意志です。やりたくないですか? やさしくしますよ。初めてでもタマラに任せてくれれば満足させますよ」

 だれが初めてじゃい!

「いや、童貞じゃないし……」
「じゃあ、いいじゃないですか。何の問題があるんですか?」
「いやいや、そう言う問題じゃないだろ」
「ごちゃごちゃ言ってると無理矢理しますよ」

 そう言って俺を押し倒す。まずい、思ったより力がある。

「無理矢理されても立たないぞ」
「大丈夫。タマラ、自信があります」

 馬乗りになったタマラはワンピースを脱ぎ捨て、一糸まとわぬ姿になる。
 ソフィアほど大きくはないが、形のいい真っ白な乳房にキレイなピンクの乳首が艶やかだ。
 しなやかにくびれた腰。長い尻尾が俺の股間を優しくくすぐる。
 何の自信だ! 逆に興味が湧くじゃないか!

「抵抗すると魔法を使いますよ」
「レイプかよ。ちょっと待て、まず話しをしよう。こういうのはお互い同意の方がいいだろう」
「タマラとするのはそんなに嫌ですか? 混じり者はやっぱり嫌ですか?」

 タマラは無表情で俺に右手をかざす。

「ちょっと待て! 俺の話を聞け! 言った通り俺は混じり者っていうのはよくわからんし、初めて見る。だから好きも嫌いもない。タマラは綺麗だと思う。だけどそれと子作りは別だろう。俺には多額の借金があって今、その返済の為に行商をしてる。だからこの村には住めない。……好きな子もいるし」

 何で俺、最後の言葉が小さくなったんだ。

「そんなの関係ない。タマラがキヨとしたい! キヨとの子供を産んで育てたい! この村に父親のいない子なんていっぱいいる。だから気にする必要ない! それに村もよそ者の血を入れたがっている」

 人から蔑まれ、獣人は去って行くこの村では村人同士で子を作るのだろうが、そうすると近親交配に近くなり、よそからの血を入れたがっているのか?

「事情はなんとなく理解したが、ムサシマルがいるだろう。そっちに頼めばいいんじゃないか?」
「ムサシマルさんはタマラの好みじゃない。それにあっちは親方たちが相手してるから、タマラの入る余地がない」

 マルゴットたち? ムサシマルさ~ん。一体何人相手してるんだ。

「ムサシマルが好みじゃないって、子孫を残すなら強い方が良いだろう」
「……だってキヨは強いでしょう。心が」

 タマラは当たり前のように言った。

「だってあれだけコテンパンにやられた姫鶴さんの、それも狂獣化した相手に立ち向かえる人が弱いはずがない。タマラはそう言う心のの強さが好きなの。わかる?」

 赤い真っ直ぐに瞳に心が揺れる。

「ありがとう。タマラの気持ちはよくわかった。だけど俺もタマラのことをよく知りたい。明日の朝早くこの村を出発しないといけないが、蕎麦の件や警備隊の件、行商なんかでこれからちょくちょくこの村に来ることになる。お互いの事をよく知ってからでも良いか?」

 タマラは相変わらず、どう受け止めたかわからない無表情でしばらく考えていた。

「キヨの言うことはわかった。だから今日はこれだけで我慢する!」

 そう言ってタマラは俺の唇に奪った。

 両手で俺の頬を抑え、柔らかくきめ細やかな胸を押し付け、しっとりとした唇を俺に重なる。
 しなやかな舌が俺の口内に滑り込み、俺の舌を絡め取る。俺の舌は吸われ、甘噛みされる。
 唇をやさしく噛まれ、歯茎をなめられ、何度も舌と舌を絡まれ、タマラの甘い唾液が俺の口に注がれ、口内を犯しつくされる。
 脳がとろけるような甘い時間が過ぎ、やさしいキスを最後にタマラは唇を離した。

「それじゃあ、明日の朝、見送りに行くね」

 そう言うと惚けた俺を置いて部屋から出て行ってしまった。

 タマラ、すげ~!
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