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第二章

シリル

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 見慣れぬ天井に一瞬、混乱する。
 そうか、ミクス村か。
 さっきの夢は前の世界の記憶か。しかし夢に出てきた人物は誰だろうか?
 隣のベッドをみるとすでに、ムサシマルはいなかった。

「体はいかがですか? ご主人様」

 ベッドから起きた時にちょうどソフィアが部屋に入ってきた。
 軽く体を動かしてみる。

「だいぶ良くなったみたいだ」

 ソフィアは柔らかな表情でにっこりと笑い、俺に近づいてくる。

「それはよかったです。ただ大丈夫かどうか、一度確認させてください」

 そう言って俺の服を脱がそうとしてくる。

「ちょっと待て、自分で脱げるから」
「そうですか。ご主人様の服を脱がすのも好きなんですけど……」

 悲しそうな目をするソフィアを無視して上半身裸になる。
 ソフィアは俺の右手を中心に火傷の具合を確認する。

「見た感じは大丈夫そうですね。念のため回復薬を染み込ませた包帯を巻いておきますね」

 回復師のマナと薬草で作られた回復薬は飲んで良し、塗って良しの万能薬なのだが、その分高価なのが痛いところだ。もともと売り物として持ってきたのだが、背に腹は代えられない。

「次は足を見ますので、ズボンを脱がせますね」
「いや、足はもう大丈夫だよ」
「ご主人様」

 ソフィアは一言で俺を批判する。

「わかったよ。ただし自分で脱ぐから」

 俺はソフィアに背を向け、右足の部分が焦げたズボンを下ろす。
 パンツのみの姿になった俺は振り向くと、そこには一糸まとわぬ姿のソフィアがいた。
 肉付きのよい、柔らかそうな裸体がそこにあった。

「お前! 何やってるの?」
「ご主人様だけ脱ぐのは恥ずかしいかなって思いまして」

 そう言いながら胸と股を手で隠して、恥ずかしそうに顔を赤らめている。
 手で隠しきれてないぞ、その胸。

「お前が恥ずかしがってるじゃないか! 服を着ろ!」
「ご主人様を見るのが先です!」

 ソフィアは強引に俺の右足を触る。
 炎の矢が刺さり、火傷を負ったはずの俺の右足は傷も埋まり大したことがないように見える。
 しかし上から見ても大きな胸だな~。
 綺麗な茶色の長い髪がふわりと俺の足にふれ、その隙間から柔らかそうな大きな胸が見え隠れする。

「大丈夫そうですが、痛みがあれば言ってくださいね。こちらも同じ処置をしておきます」

 そう言って包帯を巻くソフィア。
 服さえ着てれば献身的な淑女の構図なのにな。

「ご主人様。こちらの処置はいかがいたしましょうか?」

 ソフィアは膨らんだパンツを指差して、艶やかに潤んだピンク色の瞳を上目遣いで問いかける。
 俺の男の部分が反応してしまっていた。

「そこは見て見ぬふりをしといてくれ~」
「え~! せっかくですのに~」

 ブツブツ言っているソフィアを無視して、俺は慌ててベットの上の服をソフィアに渡し、自分も服を着る。
 頬をふくらましたまま、服を着終わったソフィアを確認して部屋を出る。

「きゃ~! シリルくんの髪の毛さらっさら~。姉ちゃんもそう思うやろ」
「本当にさらさらね」

 俺がリビングに行くと十歳くらいの小さな男の子が二人にもみくちゃにされていた。
 姫鶴の膝の上でそのキャラメルブラウンの髪の毛を撫でられて恥ずかしそうに俯いていた。

「よう、起きたか。先にいただいておるぞ」

 ムサシマルはマルゴットにお酌をされながら酒を飲んでいた。

「何がどうなってるんだ?」
「そこの子が案内役らしいんじゃが、なんか姫鶴が舞い上がってのう」
「その子はシリルと言ってまだ小さいですが、ワードッグとの混じり者ですので鼻が利きますので案内役には最適です」

 マルゴットの言葉に犬耳がピクリと反応する。
 そしてあどけない顔をこちらに向け、そのシルバーアイをまばたきさせる。

「はじめましてシリルと申します。よろしくお願いいたします」

 鶴姫の膝の上のシリルは可愛らしい子供特有の高い声で挨拶をする。

「今、何時だ?」
「三時くらいです」

 昼前に村に着いたから、結構寝ていたんだな。

「マルゴット、誰か村の案内を頼む。警備隊に依頼するにしても状況が分からないことには頼みようがないだろう」

 俺が眠っている間にのんきにしているみんなに苛ついたのか、気持ちがモヤモヤする。
 マルゴットは真っ白な長い髪で、すらりとした二十歳過ぎくらいの女性を連れてきた。

「それではタマラ、この方を村を案内しなさい。言われた事には従うように」
「わかりました。親方様」

 そう言ってタマラは無表情のまま、赤い目でじっと俺を見た。
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