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第二章

盗賊

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 俺はハッと目を覚ますと兼光の顔がどアップで目に飛び込む。

「うわぁ!」
『わぁ!』

 俺は思わず声を出すとつられて兼光も声を上げる。

「俺を食おうとした!?」
「目が覚めた? キヨ」
「ご主人様!」

 俺は落ち着いてあたりを見回すと、俺の周りに兼光のほかにレイティアとソフィアが心配そうな顔をしていた。
 賊達は赤髪の親方を含め、数人が縛りあげられていた。どうやらはじめに話しかけた狐男は逃げてしまっているようで見当たらない。

「どうなった? みんなは無事か?」
「ムサシマルがボスを捕まえた途端に逃げ出したわよ。負傷している人はとりあえず縛ってるわ。あなた以外は大した怪我はしてないわよ。体は大丈夫なの、キヨ?」

 そうだ、俺は足と右腕に魔法を受けて……。
 しかしあまり痛みは無い。手も足もちゃんと動く。

「兼光ちゃんの言うことは本当だったのね。良かった」

 レイティアはホッとしてその金色の瞳に涙を浮かべる。

「どう言うことだ?」

 兼光はとっくに姫鶴の方に行ってしまっていた。

「わたし達、誰も回復系の魔法を持ってないでしょう。回復薬も気絶してると飲めないし、包帯にしみこませるにしてもあまりにもひどい状態だったの。そうすると兼光ちゃんが『舐めときゃ治るよ』って言ってキヨの傷を舐めたら、みるみる傷が治り始めて……」

 ドラゴンの唾液が治療薬になってる? そういえばリーが言ってたな、ドラゴンの体は希少な素材になるとはこう言うことか! 兼光に助けられたな。
 しかし、さっきの夢は元々の世界での記憶か?

「キヨ、大丈夫?」
「ああ、ありがとう」

 俺は立ち上がろうとすると両脇からレイティアとソフィアが支えてくれた。
 荷の無事を確認して一安心する。無事にレイティアと姫鶴が守ってくれたようだ。

「師匠、どうする?」

 ムサシマルは盗賊達をひとまとめにして、武具を取り上げている。

「賞金首なら警備隊に引き渡すんじゃがな」
「そうでなければ、どうする?」

 ムサシマルはその剣をこちらを睨む女性の首に当てる。

「盗賊団を皆殺しにするんじゃよ。逆恨みされんようにな逃げたやつらを含めて」

 姫鶴の顔が曇る。

「賞金首じゃなくても、近くの街の警備隊に引き渡す方がいいわ。無抵抗な人間の命を奪い合うのは気が引けるわ」

 レイティアは姫鶴を気にしながら提案をする。

「殺してしまった方が手っ取り早いがのう。まあそうすると逃げた奴らも全て追わんといけんし、それも面倒じゃな。……任せる!」

 そうすると賞金首かどうか、残党はどのくらいいるかなど情報を手に入れる必要があるな。
 俺は赤髪の親方の前に行くと猿ぐつわを外す。
 肌は日に焼けて浅黒く、年は三十前後といったところだろう。髪の色と同じ赤い気の強そうな目が俺を睨む。

「聞こえていたと思うが、返答次第では全員の首をはねる。いいな」
「あんたら何者だい! ただの行商人じゃ無いのかい?」
「お前に質問する権利は無い。状況が飲み込めていないなら、一人選べ。実際首をはねてやる!」

 俺はムサシマルに目配せをする。

「悪かった! なんでも聞いてくれ」

 俺は無言のまま、指で首を切るポーズをする。
 それを見た親方は慌てて言い直す。

「申し訳ありません。なんでもお聞きください!」
「やっと状況が飲み込めたか? まず名前とお前たち盗賊団の名前を言え。それとアジトはどこだ!」
「名前はマルゴットです。盗賊団の名前と言っても特にありません。みんなミクス村に住んでいます」
「村を乗っ取っているのか! レイティア、この辺りはどこの街の管轄になるんだ? 警備隊に連絡を」
「いえ、そうではございません!」

 俺の言葉をマルゴットは慌てて遮る。

「少しお話させていただいてよろしいでしょうか?」
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