89 / 186
第二章
盗賊
しおりを挟む
俺はハッと目を覚ますと兼光の顔がどアップで目に飛び込む。
「うわぁ!」
『わぁ!』
俺は思わず声を出すとつられて兼光も声を上げる。
「俺を食おうとした!?」
「目が覚めた? キヨ」
「ご主人様!」
俺は落ち着いてあたりを見回すと、俺の周りに兼光のほかにレイティアとソフィアが心配そうな顔をしていた。
賊達は赤髪の親方を含め、数人が縛りあげられていた。どうやらはじめに話しかけた狐男は逃げてしまっているようで見当たらない。
「どうなった? みんなは無事か?」
「ムサシマルがボスを捕まえた途端に逃げ出したわよ。負傷している人はとりあえず縛ってるわ。あなた以外は大した怪我はしてないわよ。体は大丈夫なの、キヨ?」
そうだ、俺は足と右腕に魔法を受けて……。
しかしあまり痛みは無い。手も足もちゃんと動く。
「兼光ちゃんの言うことは本当だったのね。良かった」
レイティアはホッとしてその金色の瞳に涙を浮かべる。
「どう言うことだ?」
兼光はとっくに姫鶴の方に行ってしまっていた。
「わたし達、誰も回復系の魔法を持ってないでしょう。回復薬も気絶してると飲めないし、包帯にしみこませるにしてもあまりにもひどい状態だったの。そうすると兼光ちゃんが『舐めときゃ治るよ』って言ってキヨの傷を舐めたら、みるみる傷が治り始めて……」
ドラゴンの唾液が治療薬になってる? そういえばリーが言ってたな、ドラゴンの体は希少な素材になるとはこう言うことか! 兼光に助けられたな。
しかし、さっきの夢は元々の世界での記憶か?
「キヨ、大丈夫?」
「ああ、ありがとう」
俺は立ち上がろうとすると両脇からレイティアとソフィアが支えてくれた。
荷の無事を確認して一安心する。無事にレイティアと姫鶴が守ってくれたようだ。
「師匠、どうする?」
ムサシマルは盗賊達をひとまとめにして、武具を取り上げている。
「賞金首なら警備隊に引き渡すんじゃがな」
「そうでなければ、どうする?」
ムサシマルはその剣をこちらを睨む女性の首に当てる。
「盗賊団を皆殺しにするんじゃよ。逆恨みされんようにな逃げたやつらを含めて」
姫鶴の顔が曇る。
「賞金首じゃなくても、近くの街の警備隊に引き渡す方がいいわ。無抵抗な人間の命を奪い合うのは気が引けるわ」
レイティアは姫鶴を気にしながら提案をする。
「殺してしまった方が手っ取り早いがのう。まあそうすると逃げた奴らも全て追わんといけんし、それも面倒じゃな。……任せる!」
そうすると賞金首かどうか、残党はどのくらいいるかなど情報を手に入れる必要があるな。
俺は赤髪の親方の前に行くと猿ぐつわを外す。
肌は日に焼けて浅黒く、年は三十前後といったところだろう。髪の色と同じ赤い気の強そうな目が俺を睨む。
「聞こえていたと思うが、返答次第では全員の首をはねる。いいな」
「あんたら何者だい! ただの行商人じゃ無いのかい?」
「お前に質問する権利は無い。状況が飲み込めていないなら、一人選べ。実際首をはねてやる!」
俺はムサシマルに目配せをする。
「悪かった! なんでも聞いてくれ」
俺は無言のまま、指で首を切るポーズをする。
それを見た親方は慌てて言い直す。
「申し訳ありません。なんでもお聞きください!」
「やっと状況が飲み込めたか? まず名前とお前たち盗賊団の名前を言え。それとアジトはどこだ!」
「名前はマルゴットです。盗賊団の名前と言っても特にありません。みんなミクス村に住んでいます」
「村を乗っ取っているのか! レイティア、この辺りはどこの街の管轄になるんだ? 警備隊に連絡を」
「いえ、そうではございません!」
俺の言葉をマルゴットは慌てて遮る。
「少しお話させていただいてよろしいでしょうか?」
「うわぁ!」
『わぁ!』
俺は思わず声を出すとつられて兼光も声を上げる。
「俺を食おうとした!?」
「目が覚めた? キヨ」
「ご主人様!」
俺は落ち着いてあたりを見回すと、俺の周りに兼光のほかにレイティアとソフィアが心配そうな顔をしていた。
賊達は赤髪の親方を含め、数人が縛りあげられていた。どうやらはじめに話しかけた狐男は逃げてしまっているようで見当たらない。
「どうなった? みんなは無事か?」
「ムサシマルがボスを捕まえた途端に逃げ出したわよ。負傷している人はとりあえず縛ってるわ。あなた以外は大した怪我はしてないわよ。体は大丈夫なの、キヨ?」
そうだ、俺は足と右腕に魔法を受けて……。
しかしあまり痛みは無い。手も足もちゃんと動く。
「兼光ちゃんの言うことは本当だったのね。良かった」
レイティアはホッとしてその金色の瞳に涙を浮かべる。
「どう言うことだ?」
兼光はとっくに姫鶴の方に行ってしまっていた。
「わたし達、誰も回復系の魔法を持ってないでしょう。回復薬も気絶してると飲めないし、包帯にしみこませるにしてもあまりにもひどい状態だったの。そうすると兼光ちゃんが『舐めときゃ治るよ』って言ってキヨの傷を舐めたら、みるみる傷が治り始めて……」
ドラゴンの唾液が治療薬になってる? そういえばリーが言ってたな、ドラゴンの体は希少な素材になるとはこう言うことか! 兼光に助けられたな。
しかし、さっきの夢は元々の世界での記憶か?
「キヨ、大丈夫?」
「ああ、ありがとう」
俺は立ち上がろうとすると両脇からレイティアとソフィアが支えてくれた。
荷の無事を確認して一安心する。無事にレイティアと姫鶴が守ってくれたようだ。
「師匠、どうする?」
ムサシマルは盗賊達をひとまとめにして、武具を取り上げている。
「賞金首なら警備隊に引き渡すんじゃがな」
「そうでなければ、どうする?」
ムサシマルはその剣をこちらを睨む女性の首に当てる。
「盗賊団を皆殺しにするんじゃよ。逆恨みされんようにな逃げたやつらを含めて」
姫鶴の顔が曇る。
「賞金首じゃなくても、近くの街の警備隊に引き渡す方がいいわ。無抵抗な人間の命を奪い合うのは気が引けるわ」
レイティアは姫鶴を気にしながら提案をする。
「殺してしまった方が手っ取り早いがのう。まあそうすると逃げた奴らも全て追わんといけんし、それも面倒じゃな。……任せる!」
そうすると賞金首かどうか、残党はどのくらいいるかなど情報を手に入れる必要があるな。
俺は赤髪の親方の前に行くと猿ぐつわを外す。
肌は日に焼けて浅黒く、年は三十前後といったところだろう。髪の色と同じ赤い気の強そうな目が俺を睨む。
「聞こえていたと思うが、返答次第では全員の首をはねる。いいな」
「あんたら何者だい! ただの行商人じゃ無いのかい?」
「お前に質問する権利は無い。状況が飲み込めていないなら、一人選べ。実際首をはねてやる!」
俺はムサシマルに目配せをする。
「悪かった! なんでも聞いてくれ」
俺は無言のまま、指で首を切るポーズをする。
それを見た親方は慌てて言い直す。
「申し訳ありません。なんでもお聞きください!」
「やっと状況が飲み込めたか? まず名前とお前たち盗賊団の名前を言え。それとアジトはどこだ!」
「名前はマルゴットです。盗賊団の名前と言っても特にありません。みんなミクス村に住んでいます」
「村を乗っ取っているのか! レイティア、この辺りはどこの街の管轄になるんだ? 警備隊に連絡を」
「いえ、そうではございません!」
俺の言葉をマルゴットは慌てて遮る。
「少しお話させていただいてよろしいでしょうか?」
0
お気に入りに追加
61
あなたにおすすめの小説
器用貧乏の意味を異世界人は知らないようで、家を追い出されちゃいました。
武雅
ファンタジー
この世界では8歳になると教会で女神からギフトを授かる。
人口約1000人程の田舎の村、そこでそこそこ裕福な家の3男として生まれたファインは8歳の誕生に教会でギフトを授かるも、授かったギフトは【器用貧乏】
前例の無いギフトに困惑する司祭や両親は貧乏と言う言葉が入っていることから、将来貧乏になったり、周りも貧乏にすると思い込み成人とみなされる15歳になったら家を、村を出て行くようファインに伝える。
そんな時、前世では本間勝彦と名乗り、上司と飲み入った帰り、駅の階段で足を滑らし転げ落ちて死亡した記憶がよみがえる。
そして15歳まであと7年、異世界で生きていくために冒険者となると決め、修行を続けやがて冒険者になる為村を出る。
様々な人と出会い、冒険し、転生した世界を器用貧乏なのに器用貧乏にならない様生きていく。
村を出て冒険者となったその先は…。
※しばらくの間(2021年6月末頃まで)毎日投稿いたします。
よろしくお願いいたします。
再び幸せが訪れる日。その瞬間まで父の教えを守ります!
京
ファンタジー
王国中部の街マリーゴールドに住むピンクのセミロング髪の13歳の娘スズラン。
彼女は世界で初めての魔力放出病という珍しい病にかかっていた。
常時魔力が溜まらず子供でも魔術が使える世界で使うことはできなかった。
12年前に現れた突如現れた魔王が世界の西部の大半を侵略し、10年前のマリーゴールド防衛戦で父を魔物に殺されてしまう。
しかし彼女は父であるタイムの遺言であった「[花言葉]のように生きてほしい」という言葉を守って生きてきた。
いつの日か[再び幸せが訪れる]日を迎えるために・・・・
盤上の兵たちは最強を誇るドラゴン種…なんだけどさ
ひるま(マテチ)
SF
空色の髪をなびかせる玉虫色の騎士。
それは王位継承戦に持ち出されたチェスゲームの中で、駒が取られると同事に現れたモンスターをモチーフとしたロボット兵”盤上戦騎”またの名を”ディザスター”と呼ばれる者。
彼ら盤上戦騎たちはレーダーにもカメラにも映らない、さらに人の記憶からもすぐさま消え去ってしまう、もはや反則レベル。
チェスの駒のマスターを望まれた“鈴木くれは”だったが、彼女は戦わずにただ傍観するのみ。
だけど、兵士の駒"ベルタ”のマスターとなり戦場へと赴いたのは、彼女の想い人であり幼馴染みの高砂・飛遊午。
異世界から来た連中のために戦えないくれは。
一方、戦う飛遊午。
ふたりの、それぞれの想いは交錯するのか・・・。
*この作品は、「小説家になろう」でも同時連載しております。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
蓮華
釜瑪 秋摩
ファンタジー
小さな島国。 荒廃した大陸の四国はその豊かさを欲して幾度となく侵略を試みて来る。 国の平和を守るために戦う戦士たち、その一人は古より語られている伝承の血筋を受け継いだ一人だった。 守る思いの強さと迷い、悩み。揺れる感情の向かう先に待っていたのは――
錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。
いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成!
この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。
戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。
これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。
彼の行く先は天国か?それとも...?
誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。
小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中!
現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。
異世界転移したら……。~色々あって、エルフに転生してしまった~
伊織愁
恋愛
前世で勇者召喚に巻き込まれ、友人たち共に異世界転移を果たした小鳥遊優斗。 友人たちと従魔と力を合わせ、魔王候補を倒し、魔王の覚醒を防いだ。 寿命を全うし、人生を終えた優斗だったが、前世で知らずに転生の薬を飲まされていて、エルフとして転生してしまった。 再び、主さまに呼ばれ、優斗の新たな人生が始まる。
『【改訂版】異世界転移したら……。』『【本編完結】異世界転移したら……。~瑠衣はこういう奴である~』を宜しければ、参照してくださいませ。
異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが
倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、
どちらが良い?……ですか。」
「異世界転生で。」
即答。
転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。
なろうにも数話遅れてますが投稿しております。
誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。
自分でも見直しますが、ご協力お願いします。
感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる