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第二章
契約
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「それでは依頼内容を説明させていただいてよろしいでしょうか?」
二人きりとなった部屋に凛とした声が響く。
依頼の内容は要約するとこうだ。
北の海で製塩したものがこの商会にあり、それを南のドワーフの採掘場で売る。
そしてドワーフ達からマナ石を仕入れて帰る。
火事場仕事の多いドワーフ族は塩と水を大量に欲しがり、マナ石はドワーフ族の特産物だ。
どちらも需要が大きい。
塩とマナ石の概算の価格も確認した。
「それで、この件のリスクを教えてもらえないでしょうか?」
「二つございます」
マリアは当たり前のように話し始める。
「一つはドワーフの排他性です。ご存知のようにドワーフ族はよそ者を嫌います。そのため塩は彼らが必要なため売れるでしょうが、マナ石を手に入れられるかどうかはあなた方次第です」
それはどこに行っても同じリスクではあるがドワーフ族はそのリスクが非常に高いのだろう。
「もう一つは南の鉱山の周りには現在、魔物が多数目撃されております。通常の生物ではなくマナ溜りより生まれた擬似生物である魔物は通常の武器で退治するのは難しいでしょう。運がよければ魔物と合わないかもしれませんが、その可能性は低い状態です。あなた方は商人ですので討伐する必要はありません。ご自愛いただきますようお祈りいたします」
「塩一キロ、五十万マルですね。今の私たちの資金で受けられるのは六キロ程度が限界です」
「いえ、社長より塩百キロを受けて頂くよう申し受けております」
百キロ? 五千万マル分?
「申し訳ないですが、そのような資金は私どもにはありませんよ」
「存じております。その資金は弊社でお貸しいたします」
どうせ運ぶリスクは一緒だ。運ぶ量が大きいほど儲けも多くなる。
「ご納得いただければ、この契約書にサインをお願いいたします」
そう言って既にシルビアのサインが入った契約書を見せられた。
シルビアの手の上で踊らされているようだが、仕方がない。商会社長と駆け出し商人では経験値が違う。
契約内容自体には罠がないようだ。失敗して俺たちが死んだ場合、商業ギルドの保険で今回の借金は補填される。その保険金はシルビア流通商会持ちになっている。
「準備に一週間ほどいただきたい。荷物はその時に受け取りに来ます」
俺はサインをしたあと、ソフィアを探して社長室に入った。
「おね~さま~。ああ、やわらかいおね~さまのむね。すき、すき、だいすき~」
ソフィアの膝の上にいるシルビアは、その豊満な胸に顔をうずめていた。
「あら、ご主人様。商談は終わりましたか?」
ソフィアは俺に気がついた。
ぴょん!
シルビアはソフィアの膝の上から飛び降りた。
「それではお姉様、たまには遊びに来てくださいね」
シルビア流通商会の社長の顔に戻ったシルビアに見送られながら、俺たちはシルビア流通商会を後にした。
二人きりとなった部屋に凛とした声が響く。
依頼の内容は要約するとこうだ。
北の海で製塩したものがこの商会にあり、それを南のドワーフの採掘場で売る。
そしてドワーフ達からマナ石を仕入れて帰る。
火事場仕事の多いドワーフ族は塩と水を大量に欲しがり、マナ石はドワーフ族の特産物だ。
どちらも需要が大きい。
塩とマナ石の概算の価格も確認した。
「それで、この件のリスクを教えてもらえないでしょうか?」
「二つございます」
マリアは当たり前のように話し始める。
「一つはドワーフの排他性です。ご存知のようにドワーフ族はよそ者を嫌います。そのため塩は彼らが必要なため売れるでしょうが、マナ石を手に入れられるかどうかはあなた方次第です」
それはどこに行っても同じリスクではあるがドワーフ族はそのリスクが非常に高いのだろう。
「もう一つは南の鉱山の周りには現在、魔物が多数目撃されております。通常の生物ではなくマナ溜りより生まれた擬似生物である魔物は通常の武器で退治するのは難しいでしょう。運がよければ魔物と合わないかもしれませんが、その可能性は低い状態です。あなた方は商人ですので討伐する必要はありません。ご自愛いただきますようお祈りいたします」
「塩一キロ、五十万マルですね。今の私たちの資金で受けられるのは六キロ程度が限界です」
「いえ、社長より塩百キロを受けて頂くよう申し受けております」
百キロ? 五千万マル分?
「申し訳ないですが、そのような資金は私どもにはありませんよ」
「存じております。その資金は弊社でお貸しいたします」
どうせ運ぶリスクは一緒だ。運ぶ量が大きいほど儲けも多くなる。
「ご納得いただければ、この契約書にサインをお願いいたします」
そう言って既にシルビアのサインが入った契約書を見せられた。
シルビアの手の上で踊らされているようだが、仕方がない。商会社長と駆け出し商人では経験値が違う。
契約内容自体には罠がないようだ。失敗して俺たちが死んだ場合、商業ギルドの保険で今回の借金は補填される。その保険金はシルビア流通商会持ちになっている。
「準備に一週間ほどいただきたい。荷物はその時に受け取りに来ます」
俺はサインをしたあと、ソフィアを探して社長室に入った。
「おね~さま~。ああ、やわらかいおね~さまのむね。すき、すき、だいすき~」
ソフィアの膝の上にいるシルビアは、その豊満な胸に顔をうずめていた。
「あら、ご主人様。商談は終わりましたか?」
ソフィアは俺に気がついた。
ぴょん!
シルビアはソフィアの膝の上から飛び降りた。
「それではお姉様、たまには遊びに来てくださいね」
シルビア流通商会の社長の顔に戻ったシルビアに見送られながら、俺たちはシルビア流通商会を後にした。
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