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第二章
レイティアの決意
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夜、俺たちはいつもの酒場に行った。
俺にソフィア、レイティアにリタ、ムサシマルそしてアリシアさんとユリさん。
「それでリーはいつこっちに来るんですか? ユリさん」
「リーちゃんね、もうしばらくかかりそう。引っ越しの準備してるみたいなんだけど今のぼくの部屋だと狭いから新しい部屋に移ろうかと思うんだけど、いいところが見つからなくてね」
「そうか、そうすると俺たちと入れ替わりになるかもな」
「キヨ、街を出るの?」
レイティアが驚いた。
「まだはっきりしてないけど行商に出ようかと思ってる。今日、商業ギルドと冒険者ギルドに登録してきた。まあ、まだ準備等ですぐには行かないけどね」
「そうなの……」
不安そうな顔でこちらを見るレイティアに安心させるように言う。
「まずは近場から行こうと思ってるからそんなに長くは留守にするつもりはないよ」
「実はわたしね。……警備隊辞めようかと思ってるの」
「え! なんでまた? 街の人を守れるようにって警備隊に入ったんだろう? 良いのか?」
レイティアは首を横に振って自分の思いを吐き出す。
「お姉ちゃんの件でわたし気が付いたの。結局、わたしが守りたかったのは街の人じゃなくてわたしの周りの人だって事が。お姉ちゃんが警備隊にいる限り、警備隊はお姉ちゃんを守ってはくれないって事を身に染みて感じたのよ。今回はたまたまキヨとソフィアさんが助けてくれたからお姉ちゃん達を助けに行けたけど、これからはどうかって考えると警備隊を辞めた方が良いのかなって思ったのよ」
「お義姉さんはどう思ってるんだ」
俺はアリシアを見た。
「ア! リ! シ! アさんな!」
アリシアはその眼光だけで人を殺せそうな眼を俺に向けた。
まだお義姉さんと呼ばせてくれない。
「まあ、私はもともとレイティアの警備隊入りには反対だったのよ。危険が多い仕事っていうのは私が一番わかってたからね。それでもやるって聞かないもんだから仕方なく許可しただけだから、警備隊辞めるって事に反対はしないわよ」
アリシアはそう言って豪快にぶどう酒を飲む。
「まあ、確かに危険な職業ですからね。リタはどうするんだ?」
「わたし? 私は続けるよ。辞める理由無いし。まだ妹たちが小さいから稼がなきゃいけないのよ。私のお母さんは一番下の弟を産んでしばらくして亡くなってるのよ。だから頑張って稼がなきゃいけないのよ」
「じゃあ、レイティアが抜けたあと他の人を班に入れるのか?」
「まあ、そうなるわね。ただそれも上の指示によるわよ」
「それでわたしは警備隊辞めたら仕事がなくなるから、キヨについて行けるわよ」
レイティアはアリシアをちらっと見ながら提案してきた。
「結婚していない男女が何日も一緒にいても良いと思ってるの?」
「ア、アリシア様、ご主人様と奥様の夜をご心配でしたら、あ、あたしがしっかりと対応いたしますが、いかがでしょうか?」
ソフィアはアリシアにそう説明した。ソフィアの家のことを知っているアリシアはその言葉を無下にはできないはずだ。
しかし対応という言葉の意味の取り方がアリシアと俺では取り方が違う気がするが、とりあえず黙っていた。
「お姉ちゃん。わたし、お姉ちゃんの後を追いかけるだけじゃ、駄目なんじゃないかとも思ったの。だからキヨについて行ってもっと街の外の事を知ろうと思うの。だめかな?」
レイティアのその真剣なまなざしにアリシアはたじろぐ。
「わかったわ」
お姉ちゃんの負けだった。
俺にソフィア、レイティアにリタ、ムサシマルそしてアリシアさんとユリさん。
「それでリーはいつこっちに来るんですか? ユリさん」
「リーちゃんね、もうしばらくかかりそう。引っ越しの準備してるみたいなんだけど今のぼくの部屋だと狭いから新しい部屋に移ろうかと思うんだけど、いいところが見つからなくてね」
「そうか、そうすると俺たちと入れ替わりになるかもな」
「キヨ、街を出るの?」
レイティアが驚いた。
「まだはっきりしてないけど行商に出ようかと思ってる。今日、商業ギルドと冒険者ギルドに登録してきた。まあ、まだ準備等ですぐには行かないけどね」
「そうなの……」
不安そうな顔でこちらを見るレイティアに安心させるように言う。
「まずは近場から行こうと思ってるからそんなに長くは留守にするつもりはないよ」
「実はわたしね。……警備隊辞めようかと思ってるの」
「え! なんでまた? 街の人を守れるようにって警備隊に入ったんだろう? 良いのか?」
レイティアは首を横に振って自分の思いを吐き出す。
「お姉ちゃんの件でわたし気が付いたの。結局、わたしが守りたかったのは街の人じゃなくてわたしの周りの人だって事が。お姉ちゃんが警備隊にいる限り、警備隊はお姉ちゃんを守ってはくれないって事を身に染みて感じたのよ。今回はたまたまキヨとソフィアさんが助けてくれたからお姉ちゃん達を助けに行けたけど、これからはどうかって考えると警備隊を辞めた方が良いのかなって思ったのよ」
「お義姉さんはどう思ってるんだ」
俺はアリシアを見た。
「ア! リ! シ! アさんな!」
アリシアはその眼光だけで人を殺せそうな眼を俺に向けた。
まだお義姉さんと呼ばせてくれない。
「まあ、私はもともとレイティアの警備隊入りには反対だったのよ。危険が多い仕事っていうのは私が一番わかってたからね。それでもやるって聞かないもんだから仕方なく許可しただけだから、警備隊辞めるって事に反対はしないわよ」
アリシアはそう言って豪快にぶどう酒を飲む。
「まあ、確かに危険な職業ですからね。リタはどうするんだ?」
「わたし? 私は続けるよ。辞める理由無いし。まだ妹たちが小さいから稼がなきゃいけないのよ。私のお母さんは一番下の弟を産んでしばらくして亡くなってるのよ。だから頑張って稼がなきゃいけないのよ」
「じゃあ、レイティアが抜けたあと他の人を班に入れるのか?」
「まあ、そうなるわね。ただそれも上の指示によるわよ」
「それでわたしは警備隊辞めたら仕事がなくなるから、キヨについて行けるわよ」
レイティアはアリシアをちらっと見ながら提案してきた。
「結婚していない男女が何日も一緒にいても良いと思ってるの?」
「ア、アリシア様、ご主人様と奥様の夜をご心配でしたら、あ、あたしがしっかりと対応いたしますが、いかがでしょうか?」
ソフィアはアリシアにそう説明した。ソフィアの家のことを知っているアリシアはその言葉を無下にはできないはずだ。
しかし対応という言葉の意味の取り方がアリシアと俺では取り方が違う気がするが、とりあえず黙っていた。
「お姉ちゃん。わたし、お姉ちゃんの後を追いかけるだけじゃ、駄目なんじゃないかとも思ったの。だからキヨについて行ってもっと街の外の事を知ろうと思うの。だめかな?」
レイティアのその真剣なまなざしにアリシアはたじろぐ。
「わかったわ」
お姉ちゃんの負けだった。
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