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第一章
ユリ
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「お腹すいた~」
そのエルフは目を覚ますなりそう言って大きく伸びをする。次の瞬間、俺たちを見て叫び声を上げた。
「きゃ~、何あなたたち!?」
最悪だ。なにって言いたいのはこっちだ!!
「ユリさん! わたしです。レイティアです。アリシアの妹の」
レイティアは俺を押しのけてユリに近づいて、自分の顔を見せる。
「レ、レイティア?」
「そうです。レイティアです」
ユリはそこでやっと落ち着いて、レイティアの顔を確認する。
「レイちゃん? アーちゃんの妹の? え、なんでこんなところにいるの?」
レイちゃん? アーちゃん?
「ユリさんたちがここに取り残されたというので救出に来たんです。それでほかの人たちはどこですか?」
ぐ~。
ユリのお腹が鳴る。
「まずはこれでもどうぞ」
俺はシルバーの長い髪を後ろでみつあみに束ねた女性に飲み物とパンを渡す。
パンをほほ一杯にほおばりながらユリが言うことには、ほかの二部隊が撤退したのを確認して自分たちも撤退しようとしたのだが、ユリのみここに落ちてしまい今日まで隠れていたのだが、空腹に耐えかねて食料を探していたところオオムカデモドキに捕まってしまったらしい。
アリシアと副隊長の二人は最後まで残ったので状況はわからず、あとの二人は逃げたはずだということだ。
「数が多いとはいえ、なんでゴブリンごときにこんなことになったんですか?」
「ここは元々ドワーフの住処で採掘場だったみたいで、罠で寸断されて奇襲を受けたりアイテムを盗まれたりしたのよ。それにここのやつら妙に統率が取れててね。組織的に襲って来るのよ。決してゴブリンだからって油断してた訳じゃないのよ」
油断してたのか。
「それでもゴブリンのリーダーを見つけたんだけど、そこにはとんでもない奴が居たのよ」
「とんでもない奴って?」
「ミノタウロスよ。連戦でぼろぼろになって、装備も乏しくなった上にミノタウロスなんて予想してないから、一度体制を立て直すのに撤退したらこのざまよ。もう一つ干し肉ちょうだい」
ミノタウルスって牛のお化け? そんな奴がいるのか!
「アレックス達が危ない! すぐに合流しよう」
「でもどうやって上に上がるの?」
「ユリさん、どこか上がれるところはあるか?」
「あればさっさと逃げてるわよ」
ユリはほほを膨らませたまま首を横に振った。
ここが罠だとしてもドワーフ族も間違えて落ちる可能性もあるはずだ。そのための戻り口があるはずだ。
それも自分たちはわかり、他の種族にはわかりにくいところに。
「なあ、ドワーフ族の特徴を教えてくれ」
「モグラ野郎の?」
ユリは青い瞳を食いっと上にあげて嫌そうに言った。そういえばエルフ族とドワーフ族は仲が悪いんだったな。ん? 最近同じような事を考えたような?
「ドワーフ族は背が低く、がっしりした体格。珍しい鉱物を好み、いつも洞窟にこもっているので夜目が利くと聞いてるわ。力が強いけど魔法はあんまり得意じゃないらしいわ」
レイティアが説明してくれた。
「泳ぎはどうだ?」
「基本的に水に浮かないから泳げないわよ。あのモグラ達は。ふふふ」
川の中や川の向こうは出口は無いと考えていいか。
俺たちはしゃがんだり、四つん這いになりながら床や壁を探す。
あった! 岩陰に色の違う石があった。
石を押すと岩が動き道が現れる。
そのエルフは目を覚ますなりそう言って大きく伸びをする。次の瞬間、俺たちを見て叫び声を上げた。
「きゃ~、何あなたたち!?」
最悪だ。なにって言いたいのはこっちだ!!
「ユリさん! わたしです。レイティアです。アリシアの妹の」
レイティアは俺を押しのけてユリに近づいて、自分の顔を見せる。
「レ、レイティア?」
「そうです。レイティアです」
ユリはそこでやっと落ち着いて、レイティアの顔を確認する。
「レイちゃん? アーちゃんの妹の? え、なんでこんなところにいるの?」
レイちゃん? アーちゃん?
「ユリさんたちがここに取り残されたというので救出に来たんです。それでほかの人たちはどこですか?」
ぐ~。
ユリのお腹が鳴る。
「まずはこれでもどうぞ」
俺はシルバーの長い髪を後ろでみつあみに束ねた女性に飲み物とパンを渡す。
パンをほほ一杯にほおばりながらユリが言うことには、ほかの二部隊が撤退したのを確認して自分たちも撤退しようとしたのだが、ユリのみここに落ちてしまい今日まで隠れていたのだが、空腹に耐えかねて食料を探していたところオオムカデモドキに捕まってしまったらしい。
アリシアと副隊長の二人は最後まで残ったので状況はわからず、あとの二人は逃げたはずだということだ。
「数が多いとはいえ、なんでゴブリンごときにこんなことになったんですか?」
「ここは元々ドワーフの住処で採掘場だったみたいで、罠で寸断されて奇襲を受けたりアイテムを盗まれたりしたのよ。それにここのやつら妙に統率が取れててね。組織的に襲って来るのよ。決してゴブリンだからって油断してた訳じゃないのよ」
油断してたのか。
「それでもゴブリンのリーダーを見つけたんだけど、そこにはとんでもない奴が居たのよ」
「とんでもない奴って?」
「ミノタウロスよ。連戦でぼろぼろになって、装備も乏しくなった上にミノタウロスなんて予想してないから、一度体制を立て直すのに撤退したらこのざまよ。もう一つ干し肉ちょうだい」
ミノタウルスって牛のお化け? そんな奴がいるのか!
「アレックス達が危ない! すぐに合流しよう」
「でもどうやって上に上がるの?」
「ユリさん、どこか上がれるところはあるか?」
「あればさっさと逃げてるわよ」
ユリはほほを膨らませたまま首を横に振った。
ここが罠だとしてもドワーフ族も間違えて落ちる可能性もあるはずだ。そのための戻り口があるはずだ。
それも自分たちはわかり、他の種族にはわかりにくいところに。
「なあ、ドワーフ族の特徴を教えてくれ」
「モグラ野郎の?」
ユリは青い瞳を食いっと上にあげて嫌そうに言った。そういえばエルフ族とドワーフ族は仲が悪いんだったな。ん? 最近同じような事を考えたような?
「ドワーフ族は背が低く、がっしりした体格。珍しい鉱物を好み、いつも洞窟にこもっているので夜目が利くと聞いてるわ。力が強いけど魔法はあんまり得意じゃないらしいわ」
レイティアが説明してくれた。
「泳ぎはどうだ?」
「基本的に水に浮かないから泳げないわよ。あのモグラ達は。ふふふ」
川の中や川の向こうは出口は無いと考えていいか。
俺たちはしゃがんだり、四つん這いになりながら床や壁を探す。
あった! 岩陰に色の違う石があった。
石を押すと岩が動き道が現れる。
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