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第一章
お風呂
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俺はソフィアと二人、ソフィアの家の前に着く。
そしてその家のデカさに驚いた。ソフィアさん、魔法技術院は高給取りって聞いてましたけど、こんな家が買えるほど何ですか?
唖然としている俺の様子を見てソフィアが説明してくれた。
「この家はもともとお父様の別荘だったんですよ。お母様と喧嘩した時の逃げ込みようだとか言って笑っていましたけど。それをあたしに譲ってくれたのです。さあ、中に入ってください」
ぱっと外から見ても二階建ての十部屋以上はありそうな上、綺麗なレンガ造りの壁に窓には凝った装飾があちらこちらに見られる。
重厚な樫の木に美しい花の装飾が施されたドアを開き、中に招き入れてくれた。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
家の中には先程、金の入った鞄を持っていた女性が待っていた。
女性は俺を部屋へ案内してくれる。
部屋は客間らしくあまり使われている様子はなかった。かと言って掃除などがされていないわけではない綺麗な部屋は壁には澄んだ湖畔に佇む女性の絵が飾られている。見ただけで高そうな革の椅子に俺がこの家に来たのは急なはずなのに丸テーブルの上には花が活けられていた。
荷物をふかふかの絨毯を敷いてある床に置き、先程説明された風呂場に行く。
そもそも個人の家に風呂場があること自体が少ない上に、数人が一緒に入れる石張りの大浴場はこの家の大きさに見合った豪華なものだった。
久しぶりにたっぷりの湯船につかった。暑い日々が続くとはいえ、お湯につかれる幸せはありがたい。
特に明日からは水浴びすらできない日々が続くだろう。
脱衣室のドアが開く音が聞こえた。
「ご主人様、こちらに着替えを置いときますね」
浴槽の扉の向こうでソフィアの声が響く。
「ああ、ありがとう」
そしてドアが閉まる音が聞こえた。
しかしこっちの世界に来て体が引き締まったが、傷も増えた。こちらの知識は増えていくが、来る前の記憶は部分的にしか思い出せない。魔法習得に必要なあの技術のみははっきりと細部まで思いだしたということは、それを生業にしていたのだろうか? ほかに前の世界での知識がこの世界で役に立てないのだろうか? 何とか記憶の糸をたどろうとしても吐き気を催す頭痛でその行為を中断させられる。
そういえば、ソフィアは明日、俺についてきてくれと言っていたが、どこに行くのだろうか?
それにそもそもソフィアって何者なんだ? ただの人見知りで思い込みの激しい頑固な女性では無いようだ。金持ちかもしくは貴族? そのどちらもという可能性はある。俺は改めてソフィアのことを何も知らないことに気がついた。
俺は風呂から上がり、部屋に戻る。
明日はソフィアの付き添いの後はムサシマルに合流し、警備隊本部へ行ってレイティア達と合流してからすぐゴブリンの巣に向かう。約一日と言っていたから到着はどうしても明後日になってしまうだろう。それまで無事でいてくれるといいのだが……。
そんなことを考えているとドアがノックされた。
「ソフィアです。ご主人様。まだ起きていらっしゃいますか?」
「ああ、どうぞ」
明日の事について確認もしておきたかったのでちょうどよかった。
ソフィアは白いゆったりとした寝巻を着ていた。
風呂上りなのだろう顔が少し赤く、髪の毛もしっとりとしている。
薄手の寝巻のためただでさえ破壊力のある胸が余計強調され、歩くたびに見え隠れする足もなまめかしかった。
「夜も更けておりますが明日の事についてお話をしておいた方が良いかと思いまして……」
「ああ、実はそれが気になってたんだ。明日はどこに行くんだ。そして俺は何をすればいい?」
ソフィアは清潔なふわふわの白いシーツにくるまれたベットに腰かけた。
「明日はあたしのお母様のところに行こうと思っております。あたしが魔法を使えるようになったと報告したとき、ご主人様に会いたいと言ってました。ですのでご主人様と一緒の方がお母様も機嫌良くこちらの話しを聞いてくれると思うのです」
「なあ、ソフィア。君と君の両親はどう言った人なんだ? こんな大きな家を別荘にしていたり、あんな大金をポンと出せたり。教えてくれないか?」
「……わかりました」
ソフィアは自分の事を話し始めた。
母親はもう引退しているが警備隊副本部長までなった人らしく、現在はこの街の商人ギルドの代表者だそうだ。父親は下級貴族の息子らしい。その両親の長女であるソフィアは小さい頃から大きな期待をされていた。魔法習得の儀のあの日までは……。期待が大きかっただけにソフィアの両親は自分達のせいで魔法を習得できなかったのではないかと、つい先日までソフィアに対しうしろめたい気持ちがあったらしい。そのため魔法がなくても生きていけるように学問から舞踏や教養を身につけさせたらしい。
ソフィアはソフィアで自分のせいで両親が苦しんでいるのを見てどうにかしたいと、もがいていた。
そのため親子間にお互いがお互いを避けるようななんとも言えない微妙でお互いが居心地の悪い空気が続いて、とうとうソフィアは家を出たらしい。
「それで先日ご主人様のおかげでそのわだかまりが解けました。ありがとうございます」
両親にとっても俺は恩人であるらしい。
ソフィアの俺に対する態度や明日、俺を連れていく理由が何となく納得できた。
恩人が困ってるのを母親も放ってはいないだろうと言うことか。
それならば金額次第ではあるが支援してもらえる可能性は高い。
「わかった。それでは朝一番にソフィアの両親に会いに行こう。俺からもぜひお願いしたい」
「はい」
「明日のことはわかった。明日も早いし、もう寝ようか?」
俺がそう言ってもソフィアは立ち上がらない。
「ご、ご主人様。……お願いが、……あります」
そしてその家のデカさに驚いた。ソフィアさん、魔法技術院は高給取りって聞いてましたけど、こんな家が買えるほど何ですか?
唖然としている俺の様子を見てソフィアが説明してくれた。
「この家はもともとお父様の別荘だったんですよ。お母様と喧嘩した時の逃げ込みようだとか言って笑っていましたけど。それをあたしに譲ってくれたのです。さあ、中に入ってください」
ぱっと外から見ても二階建ての十部屋以上はありそうな上、綺麗なレンガ造りの壁に窓には凝った装飾があちらこちらに見られる。
重厚な樫の木に美しい花の装飾が施されたドアを開き、中に招き入れてくれた。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
家の中には先程、金の入った鞄を持っていた女性が待っていた。
女性は俺を部屋へ案内してくれる。
部屋は客間らしくあまり使われている様子はなかった。かと言って掃除などがされていないわけではない綺麗な部屋は壁には澄んだ湖畔に佇む女性の絵が飾られている。見ただけで高そうな革の椅子に俺がこの家に来たのは急なはずなのに丸テーブルの上には花が活けられていた。
荷物をふかふかの絨毯を敷いてある床に置き、先程説明された風呂場に行く。
そもそも個人の家に風呂場があること自体が少ない上に、数人が一緒に入れる石張りの大浴場はこの家の大きさに見合った豪華なものだった。
久しぶりにたっぷりの湯船につかった。暑い日々が続くとはいえ、お湯につかれる幸せはありがたい。
特に明日からは水浴びすらできない日々が続くだろう。
脱衣室のドアが開く音が聞こえた。
「ご主人様、こちらに着替えを置いときますね」
浴槽の扉の向こうでソフィアの声が響く。
「ああ、ありがとう」
そしてドアが閉まる音が聞こえた。
しかしこっちの世界に来て体が引き締まったが、傷も増えた。こちらの知識は増えていくが、来る前の記憶は部分的にしか思い出せない。魔法習得に必要なあの技術のみははっきりと細部まで思いだしたということは、それを生業にしていたのだろうか? ほかに前の世界での知識がこの世界で役に立てないのだろうか? 何とか記憶の糸をたどろうとしても吐き気を催す頭痛でその行為を中断させられる。
そういえば、ソフィアは明日、俺についてきてくれと言っていたが、どこに行くのだろうか?
それにそもそもソフィアって何者なんだ? ただの人見知りで思い込みの激しい頑固な女性では無いようだ。金持ちかもしくは貴族? そのどちらもという可能性はある。俺は改めてソフィアのことを何も知らないことに気がついた。
俺は風呂から上がり、部屋に戻る。
明日はソフィアの付き添いの後はムサシマルに合流し、警備隊本部へ行ってレイティア達と合流してからすぐゴブリンの巣に向かう。約一日と言っていたから到着はどうしても明後日になってしまうだろう。それまで無事でいてくれるといいのだが……。
そんなことを考えているとドアがノックされた。
「ソフィアです。ご主人様。まだ起きていらっしゃいますか?」
「ああ、どうぞ」
明日の事について確認もしておきたかったのでちょうどよかった。
ソフィアは白いゆったりとした寝巻を着ていた。
風呂上りなのだろう顔が少し赤く、髪の毛もしっとりとしている。
薄手の寝巻のためただでさえ破壊力のある胸が余計強調され、歩くたびに見え隠れする足もなまめかしかった。
「夜も更けておりますが明日の事についてお話をしておいた方が良いかと思いまして……」
「ああ、実はそれが気になってたんだ。明日はどこに行くんだ。そして俺は何をすればいい?」
ソフィアは清潔なふわふわの白いシーツにくるまれたベットに腰かけた。
「明日はあたしのお母様のところに行こうと思っております。あたしが魔法を使えるようになったと報告したとき、ご主人様に会いたいと言ってました。ですのでご主人様と一緒の方がお母様も機嫌良くこちらの話しを聞いてくれると思うのです」
「なあ、ソフィア。君と君の両親はどう言った人なんだ? こんな大きな家を別荘にしていたり、あんな大金をポンと出せたり。教えてくれないか?」
「……わかりました」
ソフィアは自分の事を話し始めた。
母親はもう引退しているが警備隊副本部長までなった人らしく、現在はこの街の商人ギルドの代表者だそうだ。父親は下級貴族の息子らしい。その両親の長女であるソフィアは小さい頃から大きな期待をされていた。魔法習得の儀のあの日までは……。期待が大きかっただけにソフィアの両親は自分達のせいで魔法を習得できなかったのではないかと、つい先日までソフィアに対しうしろめたい気持ちがあったらしい。そのため魔法がなくても生きていけるように学問から舞踏や教養を身につけさせたらしい。
ソフィアはソフィアで自分のせいで両親が苦しんでいるのを見てどうにかしたいと、もがいていた。
そのため親子間にお互いがお互いを避けるようななんとも言えない微妙でお互いが居心地の悪い空気が続いて、とうとうソフィアは家を出たらしい。
「それで先日ご主人様のおかげでそのわだかまりが解けました。ありがとうございます」
両親にとっても俺は恩人であるらしい。
ソフィアの俺に対する態度や明日、俺を連れていく理由が何となく納得できた。
恩人が困ってるのを母親も放ってはいないだろうと言うことか。
それならば金額次第ではあるが支援してもらえる可能性は高い。
「わかった。それでは朝一番にソフィアの両親に会いに行こう。俺からもぜひお願いしたい」
「はい」
「明日のことはわかった。明日も早いし、もう寝ようか?」
俺がそう言ってもソフィアは立ち上がらない。
「ご、ご主人様。……お願いが、……あります」
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第三第章進行中!年内完結予定(予定)予定だよ。酷評上等! ただし具体的にね。表紙は「かわいいおんなのこメーカー」で作ってみたレイティアです。イメージですけどね。
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