50 / 186
第一章
お金
しおりを挟む
「は?」
なんでここで金の話になる?
「アリシア殿の救出にいくら出せると聞いとるんじゃ」
「持ってる金を集めれば五十万マルくらいにはなると思う」
「それじゃ、全然足らん」
ムサシマルは首を横に振った。
「警備隊がダメなら冒険者や傭兵を雇うしかない。それにゴブリンの巣までどのくらいかかるか知らんが、そこまで行く馬や兵糧、その他の装備も揃えなけれならんじゃろ」
「お金を出せば警備隊に民間依頼として受理されれば、もしかしたら僕たちが動けるかもね」
アレックスが案を出した。
「それでどれくらい必要なんだ?」
「警備隊の場合、クエストにもよるけど、おそらく一人百万マルくらいかかるかもな。危険地域の派遣だからね」
「それじゃ一人も雇えないじゃないか」
「私、二百万マルある。お姉ちゃんと二人の貯金だけどお姉ちゃん帰って来ないと意味がないもの」
二人合わせても二百五十万マル。
「ごめん。わたし貯金ないんだよ。アリシアさんには悪いけど」
俺はムサシマルを見た。
「キヨ、悪いが儂は出せんぞ。ただし、雇われれば同行を拒否するつもりは無いぞ」
あと、考えられるのは借金か? しかし、どこから? 俺にツテがない。
「警備隊で分割払いは出来ないのか?」
「キヨ君よ。君はどれだけ警備隊に信用があるのかね」
「何か手は無いのか?」
どのくらい沈黙の時間が流れたのだろうか?
警備隊は動けない。二人の金を合わせてもムサシマルを雇う程度にしかならない。だが二人で警備隊精鋭三部隊を退けた相手に敵うのか? そもそも情報が少なすぎる。情報だけでも警備隊から得ないと無駄な時間ばかりすぎてしまう。
「大丈夫よ。お姉ちゃんは強いんだもん。きっと無事に帰って来るわ。わたしたちはわたしたちが出来ることをしましょう」
「レイティア、本当にそれでいいのか?」
「良いわけないじゃない! でもどうしようもないのよ」
レイティアの瞳にはそれまで我慢していた涙があふれ出していた。
そうだよな。平気なわけじゃない。
「わかった! 師匠。いや、ムサシマル。あんたを雇わせてくれ」
「良いが、二人ではまず、成功は難しいぞ。悪いが危ないと判断したら儂は逃げるからの」
その時、個室の扉が静かに開いた。
「お金でしたら、これで足りますか? ご主人様」
ソフィアは一人の女性を連れて入ってきた。
魔法習得の儀の時に迎えに来ていた女性だ。
革製の大きな鞄を開けるとそこには一万マル金貨が多量に入っている。
「いくらあるんだ!?」
俺が尋ねるとソフィアはもう一人の女性を見た。
「およそ一千万マルでございます。お嬢様」
「これを全てご主人様にお渡しします」
なんでここで金の話になる?
「アリシア殿の救出にいくら出せると聞いとるんじゃ」
「持ってる金を集めれば五十万マルくらいにはなると思う」
「それじゃ、全然足らん」
ムサシマルは首を横に振った。
「警備隊がダメなら冒険者や傭兵を雇うしかない。それにゴブリンの巣までどのくらいかかるか知らんが、そこまで行く馬や兵糧、その他の装備も揃えなけれならんじゃろ」
「お金を出せば警備隊に民間依頼として受理されれば、もしかしたら僕たちが動けるかもね」
アレックスが案を出した。
「それでどれくらい必要なんだ?」
「警備隊の場合、クエストにもよるけど、おそらく一人百万マルくらいかかるかもな。危険地域の派遣だからね」
「それじゃ一人も雇えないじゃないか」
「私、二百万マルある。お姉ちゃんと二人の貯金だけどお姉ちゃん帰って来ないと意味がないもの」
二人合わせても二百五十万マル。
「ごめん。わたし貯金ないんだよ。アリシアさんには悪いけど」
俺はムサシマルを見た。
「キヨ、悪いが儂は出せんぞ。ただし、雇われれば同行を拒否するつもりは無いぞ」
あと、考えられるのは借金か? しかし、どこから? 俺にツテがない。
「警備隊で分割払いは出来ないのか?」
「キヨ君よ。君はどれだけ警備隊に信用があるのかね」
「何か手は無いのか?」
どのくらい沈黙の時間が流れたのだろうか?
警備隊は動けない。二人の金を合わせてもムサシマルを雇う程度にしかならない。だが二人で警備隊精鋭三部隊を退けた相手に敵うのか? そもそも情報が少なすぎる。情報だけでも警備隊から得ないと無駄な時間ばかりすぎてしまう。
「大丈夫よ。お姉ちゃんは強いんだもん。きっと無事に帰って来るわ。わたしたちはわたしたちが出来ることをしましょう」
「レイティア、本当にそれでいいのか?」
「良いわけないじゃない! でもどうしようもないのよ」
レイティアの瞳にはそれまで我慢していた涙があふれ出していた。
そうだよな。平気なわけじゃない。
「わかった! 師匠。いや、ムサシマル。あんたを雇わせてくれ」
「良いが、二人ではまず、成功は難しいぞ。悪いが危ないと判断したら儂は逃げるからの」
その時、個室の扉が静かに開いた。
「お金でしたら、これで足りますか? ご主人様」
ソフィアは一人の女性を連れて入ってきた。
魔法習得の儀の時に迎えに来ていた女性だ。
革製の大きな鞄を開けるとそこには一万マル金貨が多量に入っている。
「いくらあるんだ!?」
俺が尋ねるとソフィアはもう一人の女性を見た。
「およそ一千万マルでございます。お嬢様」
「これを全てご主人様にお渡しします」
0
お気に入りに追加
61
あなたにおすすめの小説
山賊王女と楽園の涯(はて)
紺乃 安
ファンタジー
「悪」の起源と抵抗の物語。
ファンタジー要素はやや薄く、モンスターも亜人種も登場しません。中世北欧風の仮想歴史的な傾向が強くなっています。
「リードホルム王国を悩ませる、ティーサンリード山賊団。その首領はもと王女様だった――?
騙され、差別され、排除された者たちを束ね、差し向けられる刺客を次々に打ち破る山賊王女リースベット。だが積み重ねた勝利はやがて、二百年に渡る歪んだ世界の歴史にくさびを打ち込む。
山賊としての現在と王女としての過去が彼女を引き裂き、巻き起こった悲劇は世界のあり方を変えた」
排除された魂たちのあがきが三つの国を揺らす、凄絶なピカレスク・ファンタジー
※一部に残虐な描写があるため、R15としています。
まもののおいしゃさん
陰陽@2作品コミカライズと書籍化準備中
ファンタジー
まもののおいしゃさん〜役立たずと追い出されたオッサン冒険者、豊富な魔物の知識を活かし世界で唯一の魔物専門医として娘とのんびりスローライフを楽しんでいるのでもう放っておいてくれませんか〜
長年Sランクパーティー獣の檻に所属していたテイマーのアスガルドは、より深いダンジョンに潜るのに、足手まといと切り捨てられる。
失意の中故郷に戻ると、娘と村の人たちが優しく出迎えてくれたが、村は魔物の被害に苦しんでいた。
貧乏な村には、ギルドに魔物討伐を依頼する金もない。
──って、いやいや、それ、討伐しなくとも、何とかなるぞ?
魔物と人の共存方法の提案、6次産業の商品を次々と開発し、貧乏だった村は潤っていく。
噂を聞きつけた他の地域からも、どんどん声がかかり、民衆は「魔物を守れ!討伐よりも共存を!」と言い出した。
魔物を狩れなくなった冒険者たちは次々と廃業を余儀なくされ、ついには王宮から声がかかる。
いやいや、娘とのんびり暮らせれば充分なんで、もう放っておいてくれませんか?
※魔物は有名なものより、オリジナルなことが多いです。
一切バトルしませんが、そういうのが
お好きな方に読んでいただけると
嬉しいです。
甘×恋クレイジーズ
枕崎 純之助
ファンタジー
「私が修正してあげる」 そう言う彼女は脳専門のエクソシストだった。
異界との貿易を商売にする異界貿易士の甘太郎。
脳を不正アクセスされた自我を失った患者を治療する祓魔士の恋華。
二人の出会いはひとつの化学反応だった。
ブレイン・クラッキング(脳への不正アクセス)によって両親と妹を失った恋華は
家族を奪った仇を追い続けていた。
そんな彼女を助けるため、甘太郎はこの世とあの世を繋ぎ続ける。
大切な人々を奪い去った憎き悪魔に報いを受けさせることが出来るのか!
絆を胸に手を取り合う「甘太郎×恋華」のコンビの行く末やいかに。
*イラストACより作者「Kotah」様のイラストを使用させていただいております。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編
異世界で魔法使いとなった俺はネットでお買い物して世界を救う
馬宿
ファンタジー
30歳働き盛り、独身、そろそろ身を固めたいものだが相手もいない
そんな俺が電車の中で疲れすぎて死んじゃった!?
そしてらとある世界の守護者になる為に第2の人生を歩まなくてはいけなくなった!?
農家育ちの素人童貞の俺が世界を守る為に選ばれた!?
10個も願いがかなえられるらしい!
だったら異世界でもネットサーフィンして、お買い物して、農業やって、のんびり暮らしたいものだ
異世界なら何でもありでしょ?
ならのんびり生きたいな
小説家になろう!にも掲載しています
何分、書きなれていないので、ご指摘あれば是非ご意見お願いいたします
World a king~異世界転生物語~
bakauke16mai
ファンタジー
6/9 本編(?)が完結しました!!
30歳で亡くなった主人公の佐藤亮太は、女神の手違い(以下略)異世界に転生する。
その世界は、魔物も魔法も貴族も奴隷も存在する、ファンタジー全開な世界だった!!
国王による企みに嵌ったり、王国をチートで救ったり、自重する気は無い!?
世界の歯車が刻まれていく中で、亮太の存在はその歯車さえ狂わせる。
異世界に転生した彼が、快適な生活を手に入れるまでの、チートな生活が始まる!
な、はずだったけど!!なんだか最強街道を直進中!!イチャイチャとバトルだけが延々と繰り返されています!!
かぶっていた猫が外れたら騎士団にスカウトされました!
灯倉日鈴(合歓鈴)
ファンタジー
伯爵令息にプロポーズされて幸せ絶頂期だったエレノアは、恋敵に階段から突き飛ばされたことで並外れた身体能力がバレてしまい、婚約破棄されてしまう。
落ち込む彼女の前に、王国騎士団に所属する第三王子フィルアートが現れる。
「王国騎士団に入れ、エレノア・カプリース」
「やだ」
騎士とか剣術とか、そんな汗臭い熱血青春はお断り!
……それなのに、結局騎士団に入ることになって……。
ワケアリ令嬢と有能(だけど恋愛面ではポンコツ)王子、そして二人を取り巻く人々と魔獣の騒がしい日々。
※以前投稿した作品を長編用に設定を整え書き直しました。
※カクヨム様にも投稿しています。
森に捨てられた俺、転生特典【重力】で世界最強~森を出て自由に世界を旅しよう! 貴族とか王族とか絡んでくるけど暴力、脅しで解決です!~
WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
事故で死んで異世界に転生した。
十年後に親によって俺、テオは奴隷商に売られた。
三年後、奴隷商で売れ残った俺は廃棄処分と称されて魔物がひしめく『魔の森』に捨てられてしまう。
強力な魔物が日夜縄張り争いをする中、俺も生き抜くために神様から貰った転生特典の【重力】を使って魔物を倒してレベルを上げる日々。
そして五年後、ラスボスらしき美女、エイシアスを仲間にして、レベルがカンスト俺たちは森を出ることに。
色々と不幸に遇った主人公が、自由気ままに世界を旅して貴族とか王族とか絡んでくるが暴力と脅しで解決してしまう!
「自由ってのは、力で手に入れるものだろ? だから俺は遠慮しない」
運命に裏切られた少年が、暴力と脅迫で世界をねじ伏せる! 不遇から始まる、最強無双の異世界冒険譚!
◇9/25 HOTランキング(男性向け)1位
◇9/26 ファンタジー4位
◇月間ファンタジー30位
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる