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第一章
事件発生
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「レイティアはいるか?」
凄い勢いで、酒場に飛び込んで来た男が叫んだ。
いや、美男子に見えるが女だ。
「アレックス、どうしたの?」
レイティアはアレックスのただならぬ様子に一気に冷静になったようだ。
「親父、奥の個室を借りるぞ」
アレックスはレイティアを引っ張って奥に行った。
そのただならぬ様子に俺たちも一緒に部屋へ入る。
「なんでお前たちも来るんだ」
「いいのよ、アレックス。それより何があったの?」
いつもの芝居かかったしゃべり方でないアレックスを見て、みんな静かに言葉を待った。
「今、ゴブリン退治に行っていた部隊が帰って来た」
ゴブリン退治ということはレイティアの姉がいる部隊のことのはずだ。
「死人でも出たのか?」
俺は思わず口を挟んでしまった。
「いや、重傷者が多数だが、幸いにも死者は出てないらしい。ただ……」
「ただ?」
レイティアは心配そうに繰り返した。
「ただ、戻って来たのは二部隊のみ、アリシアさんのいる部隊は帰って来てない。ゴブリンの逆襲にあって、逃げる時にアリシアさんの部隊がしんがりになって残ったらしい」
「お姉ちゃん!」
レイティアが膝から崩れ落ちた。
俺はレイティアを支える。
「戻ってないだけで死んだわけじゃないんだろう! すぐに助けに行こう! 警備隊も増援を出してくれればいいじゃないか!」
俺のごく当たり前な言葉にアレックスは首を振った。
「警備隊本部では今回の件で、ゴブリンがこの街に攻め込んで来ることを警戒している。街の守りを最優先事項とするらしい。しばらくは街の外へ出るのも規制される予定だ」
街のために命をかけた人間を見殺しか!
「レイティア! 俺たちだけでも助けに行こう! 師匠もリタも手伝ってくれるよな!」
俺はみんなを見回した。しかし誰からも賛同の声は上がらなかった。
「なんでだよ!」
「キヨ! わたしとレイティア、アレックスも警備隊に所属しているの。勝手な行動は出来ないのよ。警備隊の第一目的は街の人々を守る事なの。アリシアさん達もそのために今回の討伐に出たのよ」
「じゃあ、アリシアさんはその守るべき街の人々に含まれないのかよ!」
「……警備隊に入った時点で保護対象者から外れるのよ」
レイティアが弱々しい声で言った。
「だからって見捨てていいわけじゃないだろう」
レイティアの唯一の肉親を何もできないまま、見捨ててなんか出来ない。
「いいのよ、キヨ。この仕事をしている以上、覚悟はしてるわ」
「覚悟はあっても、諦めちゃだろう。師匠! 師匠はついて来てくれるよな。あんたの目的はアリシアさんだろう」
それまで黙って聞いていたムサシマルはゆっくりと口を開いた。
「キヨ、金はどのくらい持ってるんじゃ?」
凄い勢いで、酒場に飛び込んで来た男が叫んだ。
いや、美男子に見えるが女だ。
「アレックス、どうしたの?」
レイティアはアレックスのただならぬ様子に一気に冷静になったようだ。
「親父、奥の個室を借りるぞ」
アレックスはレイティアを引っ張って奥に行った。
そのただならぬ様子に俺たちも一緒に部屋へ入る。
「なんでお前たちも来るんだ」
「いいのよ、アレックス。それより何があったの?」
いつもの芝居かかったしゃべり方でないアレックスを見て、みんな静かに言葉を待った。
「今、ゴブリン退治に行っていた部隊が帰って来た」
ゴブリン退治ということはレイティアの姉がいる部隊のことのはずだ。
「死人でも出たのか?」
俺は思わず口を挟んでしまった。
「いや、重傷者が多数だが、幸いにも死者は出てないらしい。ただ……」
「ただ?」
レイティアは心配そうに繰り返した。
「ただ、戻って来たのは二部隊のみ、アリシアさんのいる部隊は帰って来てない。ゴブリンの逆襲にあって、逃げる時にアリシアさんの部隊がしんがりになって残ったらしい」
「お姉ちゃん!」
レイティアが膝から崩れ落ちた。
俺はレイティアを支える。
「戻ってないだけで死んだわけじゃないんだろう! すぐに助けに行こう! 警備隊も増援を出してくれればいいじゃないか!」
俺のごく当たり前な言葉にアレックスは首を振った。
「警備隊本部では今回の件で、ゴブリンがこの街に攻め込んで来ることを警戒している。街の守りを最優先事項とするらしい。しばらくは街の外へ出るのも規制される予定だ」
街のために命をかけた人間を見殺しか!
「レイティア! 俺たちだけでも助けに行こう! 師匠もリタも手伝ってくれるよな!」
俺はみんなを見回した。しかし誰からも賛同の声は上がらなかった。
「なんでだよ!」
「キヨ! わたしとレイティア、アレックスも警備隊に所属しているの。勝手な行動は出来ないのよ。警備隊の第一目的は街の人々を守る事なの。アリシアさん達もそのために今回の討伐に出たのよ」
「じゃあ、アリシアさんはその守るべき街の人々に含まれないのかよ!」
「……警備隊に入った時点で保護対象者から外れるのよ」
レイティアが弱々しい声で言った。
「だからって見捨てていいわけじゃないだろう」
レイティアの唯一の肉親を何もできないまま、見捨ててなんか出来ない。
「いいのよ、キヨ。この仕事をしている以上、覚悟はしてるわ」
「覚悟はあっても、諦めちゃだろう。師匠! 師匠はついて来てくれるよな。あんたの目的はアリシアさんだろう」
それまで黙って聞いていたムサシマルはゆっくりと口を開いた。
「キヨ、金はどのくらい持ってるんじゃ?」
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