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第一章

モグラ野郎

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「マナ量を増やす方法はある……」
「ほんとうか?」

 俺は身を乗り出した。その方法があれば男でも魔法が使えるのではないか?

「……と聞いてる」

 なんだよそれ。

「マナ量を増やす秘儀はモグラ野郎が持ってるらしいんだ」
「モグラ野郎? 人の名前か?」

 俺は頭の上にハテナマークを付けた。

「おそらくドワーフ族の事です。ご主人様」

 それまで静かに聞いていたソフィアがそっと俺に教えてくれた。

「ああ、奴らの秘儀でマナ量を増やす方法があるらしいんだが詳しくはオレもしらないや」
「そうか、ありがとう。ドワーフ族がいたら聞いてみるよ」

 リーは嫌そうな顔をした。

「モグラ野郎がそんなに簡単に教えてくれるとは思えないけどね。あいつらくそ頑固らしいし、まあ、何かわかったらオレにも教えてくれよ」
「ああ分かった。他には魔法について気を付けておいた方がいいことはあるか?」
「マナ石のことは知ってるか?」
「持ってるとマナの補充が早くなるって石か?」
「まあ、そうなんだけど、あの石には他にもいろいろな効力があるらしい。このあたりもモグラ野郎が詳しいんだけどな。あと、マナ石自体マナを放出しきっても使わなければ少しずつマナをため込んでいくから捨てたりするなよ。希少な物だし」

 そうは言ってもマナ石自体見たこともないしな。

「わかったありがとう。勉強になった。またちょくちょく遊びに来るな。お、そうだ。これお土産にでもしてくれ」

 俺は途中で取った山鳩をリーに渡した。

「サンキューな。お安い御用だ。俺たちもう友達だろう。じゃあ、手紙はお願いな」
「わかった。まかしとけ」


 俺たちはエルフの小屋を後にする。
 再度、来れるように周りの景色や目印を覚えたが、次の時も来れるか心配だな。
 帰りがてらソフィアにリーから教えてもらったことを意識させながら、動物たちに魔法を使わせることにした。
 同時に二か所まで魔法が使えるようになったおかげで兎が二羽、カラスが四羽、山鳩が二羽捕まえることができた。
 三人で分けると大した額にはならないが、今回は金が目当てより、リーの約束とソフィアの魔法の練習がメインなので十分な収穫だ。
 それと途中で珍しく梅の木を見つけ、ムサシマルが大喜びで梅の実を取っていた。

「梅干し作るぞ。キヨ」

 そう言って大はしゃぎしていたが、俺はそんなに梅干しに執着はないぞ。
 まあ、保存食としては優れたものだし反対はしないが、食べるのは俺とムサシマルだけだろう。
 街に戻った俺たちはなじみの肉屋に獲物を卸し、宿に戻った頃には夕方と呼ぶにはまだ早い時間だった。
 ソフィアとはそのまま別れ、俺たちは日課の稽古をムサシマルにつけてもらった。
 今日の夕飯はいつもの酒場に行ける。レイティアとの仲も進展させたいのでまたデートに誘うか。しかし、何を理由に誘うかな。ストレートにレイティアの事がもっと知りたい。君ともっと一緒にいたい。この世界の娯楽はダンスホール以外に何があるんだ?
 そんなことを考えながら、稽古の後に宿へ戻った。

「おかえりなさいませ。ご主人様」
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