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第一章
魔法の基礎知識
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どこから情報が漏れるか分からない。
そのため、そもそもいつもの酒場はもちろん、レイティアと行ったことのある酒場は避けるつもりで、昨日、下調べはしておいた。
小洒落たレストランも候補として持っていたが、下調べしていた酒場へ行くことにする。ここは魚介が美味いと評判らしい。わざわざ遠い港町に支店を持ち、そこで独自に下処理した魚介を運んでくるらしい。そのため流石に新鮮さはないが、干物が美味いらしい。
魚介で金を稼げないか街の聞き込みをした時に見つけた店だ。
「美味しい!」
ソフィアは貝の蒸し焼きを食べながら、ワインを飲んでいた。
「酒場ってただ、安いお酒を飲んで騒ぐだけの場所かと思っていたけど、食事も美味しいんですね」
「酒場も来た事がないって言ってたけど、友達とか職場の人とかと来ないのか?」
ソフィアはホークをテーブルの上に置き、グラスのワインを一気に空けた。
「女のゼロってどう言う扱いを受けるかわかりますかよね。男の人からは生まれた子供がゼロになるのではと恋愛対象として見てもらえないんですよ。あたしは長女なんですけど、両親がお見合いを持って来てくれても、あたしがゼロと分かるとすぐ断られてしまうんです。ゼロの私より妹の方がいいと」
もう一杯ワインを空けた。
「大丈夫? そんなに一気に飲まなくても」
「だいじょうぶですよ。こう見えてお酒は強い方なんです。それより聞いてくださいよ。あたしだって好きでゼロになった訳じゃないんです。大きくなったらどんな魔法が使えるようになるのか、色々な本を読んで研究してたんですよ。それなのに、何も習得できなかった。分かりますか? この絶望が!」
ちょっと、ソフィアさん。酔ってません?
あの自信がなさそうなソフィアさんどこ行ったの?
「両親はそんなあたしに同情してくれて、勉強だけはさせてくれたの。だから両親のせいであたしがゼロになったんじゃない。ゼロは子供に移らないって証明したいの」
「それがソフィアの魔法技術院で働いている理由?」
「ええ、そう」
魔法に関して研究してると言うことは魔法について詳しいと言うことか。
「なあ、ソフィア。俺に魔法のことを教えてくれないか?」
「いいわよ。あたしが分かる範囲で禁忌に触れない内容なら」
魔法技術院の中には禁忌と呼ばれる魔法の知識があると言うことか?
「まず、なぜ女性しか魔法が使えない? 男性は使えてもなぜ、ロクな魔法が扱えない?」
「女性の方がマナ量が多いためと言われているわ。ただし、今の技術では人のマナ量は測れないから推測だけど」
「マナ量ってなに?」
ソフィアはグラスを回しながら不思議そうな顔をした。
「マナって概念は普通の人も知ってるはずだけど……。マナは魔法を使うためのエネルギーね。例えばどんなに凄い魔法を習得しても発動に必要なマナ量が無いと不発に終わるか、マナ不足で倒れるのよ。だから、魔法習得の時、恐らく自分のマナ量で発動出来る魔法しか習得できないようになってるんだと思う。魔法の種類と数は自分で決められないからね」
「じゃあ、女性のマナ量が多くて、男性のマナ量が少ない理由はあるのか?」
初めて聞く魔法の詳しい話に俺の好奇心が止まらない。
「これも魔法技術院の仮説だけど、マナは基本的に体の外からエネルギーを取り込み魔法として消費するのだけど、そもそも生物の生命活動のエネルギーとしても活用されるの。女性と男性の最大の違いって何?」
胸? 性器の違い? いや今は生命の話をしている、と言うことは。
「子供を産めるかどうか」
「その通りです。つまり、元々女性は生まれ持って新たな生命を生み出す力があり、生命活動エネルギーを溜め込める構造になっているからではないかと言われているわ。子作りの時、男性は体の外に出すのに対して、女性は体の中に入れるのという事を考えれば、分かるでしょう」
ほ~う。
「そうすると、マナ量が多いほど強力で多くの魔法が習得できるって事か。男はその体の構造上マナを溜めにくいため魔法が使えないという事か。そうすると魔法は連続で使えないのか?」
「その時の自分のマナの残量と使用する魔法の必要マナ量によるわよ。減ったマナは自然に溜まっていくからね」
そう言えば、オークとの戦いの時にリタとサラは初め、同時に魔法を使っていたが、そのあともう一度リタが魔法を使ったのにサラは魔法を使ってなかった。
魔法種類や本人のマナ量によっては初弾をどうにかすれば、肉弾戦に持ち込める可能性もあるのか。
「魔法の数は自分のマナ量だと理解できたけど、種類はなぜ選べないだ?」
「そこはよく分かってないの。多分、本人と魔法の相性だとしか言えないわ。ただし、相反する種類、例えば水と火の魔法を習得している人もいるらしいけど、大体同系列の魔法を習得するわね」
今日だけで魔法への疑問がこんなに解消するなんて、これで対魔法に対して対策が立てやすくなる。
「ありがとう、ソフィア。最後に教えてくれないか? 魔法習得の儀って具体的にどんな事をするんだ?」
「禁忌事項よ」
そのため、そもそもいつもの酒場はもちろん、レイティアと行ったことのある酒場は避けるつもりで、昨日、下調べはしておいた。
小洒落たレストランも候補として持っていたが、下調べしていた酒場へ行くことにする。ここは魚介が美味いと評判らしい。わざわざ遠い港町に支店を持ち、そこで独自に下処理した魚介を運んでくるらしい。そのため流石に新鮮さはないが、干物が美味いらしい。
魚介で金を稼げないか街の聞き込みをした時に見つけた店だ。
「美味しい!」
ソフィアは貝の蒸し焼きを食べながら、ワインを飲んでいた。
「酒場ってただ、安いお酒を飲んで騒ぐだけの場所かと思っていたけど、食事も美味しいんですね」
「酒場も来た事がないって言ってたけど、友達とか職場の人とかと来ないのか?」
ソフィアはホークをテーブルの上に置き、グラスのワインを一気に空けた。
「女のゼロってどう言う扱いを受けるかわかりますかよね。男の人からは生まれた子供がゼロになるのではと恋愛対象として見てもらえないんですよ。あたしは長女なんですけど、両親がお見合いを持って来てくれても、あたしがゼロと分かるとすぐ断られてしまうんです。ゼロの私より妹の方がいいと」
もう一杯ワインを空けた。
「大丈夫? そんなに一気に飲まなくても」
「だいじょうぶですよ。こう見えてお酒は強い方なんです。それより聞いてくださいよ。あたしだって好きでゼロになった訳じゃないんです。大きくなったらどんな魔法が使えるようになるのか、色々な本を読んで研究してたんですよ。それなのに、何も習得できなかった。分かりますか? この絶望が!」
ちょっと、ソフィアさん。酔ってません?
あの自信がなさそうなソフィアさんどこ行ったの?
「両親はそんなあたしに同情してくれて、勉強だけはさせてくれたの。だから両親のせいであたしがゼロになったんじゃない。ゼロは子供に移らないって証明したいの」
「それがソフィアの魔法技術院で働いている理由?」
「ええ、そう」
魔法に関して研究してると言うことは魔法について詳しいと言うことか。
「なあ、ソフィア。俺に魔法のことを教えてくれないか?」
「いいわよ。あたしが分かる範囲で禁忌に触れない内容なら」
魔法技術院の中には禁忌と呼ばれる魔法の知識があると言うことか?
「まず、なぜ女性しか魔法が使えない? 男性は使えてもなぜ、ロクな魔法が扱えない?」
「女性の方がマナ量が多いためと言われているわ。ただし、今の技術では人のマナ量は測れないから推測だけど」
「マナ量ってなに?」
ソフィアはグラスを回しながら不思議そうな顔をした。
「マナって概念は普通の人も知ってるはずだけど……。マナは魔法を使うためのエネルギーね。例えばどんなに凄い魔法を習得しても発動に必要なマナ量が無いと不発に終わるか、マナ不足で倒れるのよ。だから、魔法習得の時、恐らく自分のマナ量で発動出来る魔法しか習得できないようになってるんだと思う。魔法の種類と数は自分で決められないからね」
「じゃあ、女性のマナ量が多くて、男性のマナ量が少ない理由はあるのか?」
初めて聞く魔法の詳しい話に俺の好奇心が止まらない。
「これも魔法技術院の仮説だけど、マナは基本的に体の外からエネルギーを取り込み魔法として消費するのだけど、そもそも生物の生命活動のエネルギーとしても活用されるの。女性と男性の最大の違いって何?」
胸? 性器の違い? いや今は生命の話をしている、と言うことは。
「子供を産めるかどうか」
「その通りです。つまり、元々女性は生まれ持って新たな生命を生み出す力があり、生命活動エネルギーを溜め込める構造になっているからではないかと言われているわ。子作りの時、男性は体の外に出すのに対して、女性は体の中に入れるのという事を考えれば、分かるでしょう」
ほ~う。
「そうすると、マナ量が多いほど強力で多くの魔法が習得できるって事か。男はその体の構造上マナを溜めにくいため魔法が使えないという事か。そうすると魔法は連続で使えないのか?」
「その時の自分のマナの残量と使用する魔法の必要マナ量によるわよ。減ったマナは自然に溜まっていくからね」
そう言えば、オークとの戦いの時にリタとサラは初め、同時に魔法を使っていたが、そのあともう一度リタが魔法を使ったのにサラは魔法を使ってなかった。
魔法種類や本人のマナ量によっては初弾をどうにかすれば、肉弾戦に持ち込める可能性もあるのか。
「魔法の数は自分のマナ量だと理解できたけど、種類はなぜ選べないだ?」
「そこはよく分かってないの。多分、本人と魔法の相性だとしか言えないわ。ただし、相反する種類、例えば水と火の魔法を習得している人もいるらしいけど、大体同系列の魔法を習得するわね」
今日だけで魔法への疑問がこんなに解消するなんて、これで対魔法に対して対策が立てやすくなる。
「ありがとう、ソフィア。最後に教えてくれないか? 魔法習得の儀って具体的にどんな事をするんだ?」
「禁忌事項よ」
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