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第一章

二人の関係

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「嫁取りの儀のあと、結局のところ二人の関係はどうなったんじゃ?」
「あ! 私もそれ気になってた。それで、実際のところどこまで行ったの?」

 さっきまでめんどくさいなという顔をしていたリタの緑色の目が急に輝きだした。

「一回デートして、そのあと特に進展はないけど」

 そう言いながら、これまでの事を思い直した。
 デートはしたな。デートだよな。
 その後も今日みたいにこの酒場でみんなで集まって飲んでる時に会っているが、二人っきりはデートの時だけだ。
 ちょっと待てよ。これってただの仲のいい友達と変わらなくないか?

「な~んだ。それであんなこと言ってたのかな~?」
「あんなことってなに!?」
「ん~。唐揚げ食べたいな~」

 ビールを飲みながらリタはつまみがないといわんばかりに手を動かした。

「親父! 唐揚げ! 大至急!」
「えっとね。レイティアには絶対言っちゃだめよ」

 もったいぶってないで早く言え!

「あなたたちの初デートのあとにキヨの事、どう思うか聞いてみたの。レイティアどういったと思う?」
「そこが聞きたい」
「まず、好きか嫌いかというと、どちらかというと好きだって。ただ……」
「ただ……」
「恋人っていうより、心配な弟って感じかな? って言ってたよ」

 俺の方が年上のはずだけど……。

「それって俺、まずくない?」
「まずいわね。だいたいねえ。デートの時、恋人アピールしたの? あの子はそういうところ鈍感だからぐいぐいアピールしないと、それこそ友達になっちゃうわよ」

 自信を持ってレイティアと付き合うには力が欲しい。何も無い今の状態では結局、レイティアからすれば俺は保護する対象であって、対等な恋人ではない。

「レイティアに告白するためにも、一人前の人間になりたい。そのためにも魔法習得したいんだ。どうにか手伝ってくれよ、リタ」

 揚げたての唐揚げをかぶりついているリタは一旦、飲み込んだ。

「レイティアと付き合うために他の子とデートするってなんか、本末転倒じゃない? それに魔法習得って男の人って相当まれだよ。大した魔法じゃ無いことも多いし。ここの大将も魔法持ちだけど、食べ物の賞味期限が分かるって、目利きがあればいらないんじゃないかって魔法だよ」
「そこは自信がある。根拠は無いが!」
「あっきれた。バカじゃないの? まあ、キヨのそんなバカさは私、嫌いじゃないよ」
「なあ、キヨ」

 さっきから静かに酒を飲んでたムサシマルが話しに入ってきた。

「お主達が付き合ってもおらんのじゃったら、他の女と逢い引きに行くのに問題があるのか?」
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