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第一章

ソフィア

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 その日は珍しく夕立が降っていた。
 女性は濡れたポンチョのまま、入口に立っている。
 その女性に見覚えはあった。
 レイティアと待ち合わせの時に角でぶつかった女性だ。
 伏目がちでチラチラと俺を見ていた。
 女性はソフィアと名乗る。
 俺はとりあえず、タオルを渡して部屋へ招き入れた。

「何の御用でしょうか?」
「あの……。で……きれば、ふたりで……」

 相変わらずの消え入りそうな声で言いながらムサシマルをチラチラと見る。

「じゃあ、儂は先にいつもの酒場に行っておるでな」

 気をきかせたムサシマルはそう言うと部屋を出て行ってしまった。

「それでどういった用件でしょうか? ぶつかった時にどこか怪我をされたのでしょうか?」
「い、いいえ。それは大丈夫……です。それよりも……お礼が」

 やっとその淡いピンク色の目が俺を見たが、またすぐに目をそらしてしまった。

「お礼? ぶつかったのは私の方ですし、私が謝罪するのはわかりますが、どういうことでしょうか?」
「あの……。その日の夕方……暴漢に襲われたのを……たすけていただい……て」

 そういえばあの時、聞き覚えのある声だと思っていた。
 アレックスの言葉と自分のふがいなさの事ばかりですっかり忘れていた。

「あ、ありがとう……ございました。あ、あなたを探すのに……時間がかかってしまって……あと私の心の準備と」

 相当な人見知りなのだろうに、名前も知らない男を訪ねるのは勇気が相当必要だったのだろう。

「ああ、あなたでしたか。気になさらないでください。何か飲みますか?」

 とりあえずは女の目的が分かって落ち着いた。俺に対するクレームでなければ、お茶の一つも飲ませてお引き取り願おう。

 ギシッ

 俺はお茶をいれて振り向くと、先ほどまで座っていたソフィアがいない。

「わたし、はじめてなのでやさしくしてくださいね」

 ベットにはいつのまにかソフィアが横たわっていた。裸で!?
 女性特有の丸みをおびた柔らかそうな全身。日を浴びたことがなさそうな透明感のある白い肌。何より腕で隠してもこぼれてしまう胸。

「何やってるんだ?」

 美人局? 俺はそのきれいな裸婦から目が離せないまま、警戒を強めた。

「お、おれい」

 は? オレイ? おれい? お礼? 助けたお礼に体を差し出すってことか?
 据え膳食わねば武士の恥! と言えるほど俺に度胸は無い。
 絶対なにかの罠だ。

「お、男の人はこれが一番……喜ぶと本に書いてあった。けど……恥ずかしいので……早く始めてほし……い」

 ソフィアは顔を赤らめて小刻みに震えている。初めてと言っていたが、その姿を見ると本当のようだ。
 俺はベットに近寄るとソフィアは恥ずかしそうに顔をそむける。
 近寄ると女性特有の甘くていい香りが鼻腔を満たす。
 男に抱かれるためだけに生まれてきたような体だ。顔も街行く人が振り返るような美人ではないが、おとなしい感じのどこか幼さの残る可愛い顔だ。これで誰も手を付けていないというのが不思議なくらいだ。

「おねがい。……はや……く」
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