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第一章

ゼロの女

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「なんでてめえみたいなゼロが魔法技術院で働いているんだよ。ええ!」
「女共は魔法使って外敵から俺らゼロを守ってくれてるから、あいつらが偉そうにしてても我慢できるがよ。おまえも俺らと同じゼロなんだろう。それなら、力も何にもない、てめえは俺ら以下だよな! それなのに女ってだけで高給取りかよ! ふざけんな」
「こっちとら、ゼロなりに汗水流して働いてるんだよ」

 どうやら、二人の男は普段の不満を女性にぶつけているらしい。男達は普段から外で働いている様に肌が日焼けして、腕っぷしが太い。

「ひ、ごめん……なさい。た……すけて」

 消え入りそうなのに、澄んでよく通る声。
 よく見ると女性は今朝、俺がぶつかった女の人か?
 男が言うようにあの女性がゼロならば、これはただの弱いものいじめだ。俺は念のためムサシマルから渡されていた短剣が腰に刺さっているのを確認して声をかけた。

「ごめ~ん。こんな所に居たのか? 探したよ」

 俺は二人の男を無視して女性に駆け寄った。

「俺に合わせて」

 小声で女性に合図した。

「すみませんね。こいつが何かやらかしました? おっちょこちょいの癖にすぐふらふらと居なくなっちゃうんでこっちも困ってたんですよ。すぐ引き取りますんで、すみませんね」

 俺はそう言って女性の手を引いて立ち去ろうとした。

「なんだ、てめえ! その女の知り合いか? てめえもその女みたいにコネで甘い汁吸ってる寄生虫か? ほっそい手足しやがって!」

 男の攻撃対象が俺に移った。よし! 俺は二人に見えない様に女性に逃げる様に手で合図を出した。それを見た女性は大通りへ走って逃げるのが見える。

「あ、てめえ、逃すかよ」

 女性を追いかけようとしたもう一人の男の進路を阻む様に俺が動く。

「てめえ、何しやがる」
「お二人の不満のほどは俺には到底分かりませんがね。貴方達が今やっているのはその貴方達を虐げてる人達と同じ事じゃ無いんですかね?」

 男達が一瞬止まる。俺は女性が逃げられる時間を稼げれば、あとは一目散に逃げるだけだ。お願いだから刃物出すなよ。

「知った風な口を! てめえに何がわかる!」

 男に胸ぐらを掴まれた。一発は覚悟の上だ。殴られたら、吹き飛ばされたふりをしてそのまま逃げよう。
 顔に衝撃は来ず、背中に来た。

 しまった! 
 倒された。

 頭を守って亀になっている俺を男達が蹴り始めた。

「なにをやっている!」
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