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第一章
ダンスホール
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買い物が終わった俺達は、店を後にしたが、夕方までには少し時間があった。
「キヨ、この後どこか行きたい所はある?」
「いや、とりあえず欲しい物は買ったよ。レイティアのお陰で良い物も買えたしね。逆にどこか行きたい所はある?」
レイティアは少し迷ってから、思い切るように言った。
「わたしね、ダンスホールに行ってみたいの」
ダンスホール、若い男女の社交の場。
うん、うん。レイティアぐらいの年の子だと興味があるのは分かる。って俺、踊れる? 甦れ! 記憶!
「レイティアは行った事あるの?」
「お姉ちゃんからああ言う所はごろつきの集まる所だから、行っちゃダメだって言うのよ。リタやサラは時々行ってるって言うのに」
姉からはいつまでも子供扱いされるのが、妹ってものだろう。レイティアほど可愛いと心配する気持ちは分かる。
「でも、収穫祭のダンスはやったことがあるわよ!」
ドヤ顔可愛い。
「まあ、パートナー連れだと変な連中も寄って来ないだろうから、行ってみようか」
リタ達がよく行っていると言うダンスホールへ行くことにした。入口で入場料を払い。飲み物や食べ物は別料金だ。
「見ない顔だから一応、注意事項な。喧嘩は両成敗。弁償は半々で、両方出入り禁止な。うちは健全なダンスホールだ。あと、男女問わず、強引な誘いも厳禁な。何かあったら、ウチの怖い店長がすぐ出て来るから注意しなよ。じゃあ、楽しんでくれ」
防音の為か、二つ程扉を開けると、音楽が流れている。
軽快で明るい曲。周りを見ると壁際に椅子が並べられている。飲み物を置くための小さなテーブルもいくつかあった。飲み物や軽食を持った店員がホールを回っているので、そこで声をかけて飲み物を買う様だ。
部屋の奥には数名の楽団がいる。
すでに数組の男女がホール中央で踊っていた。
まずは観察! 見よう見まねでどうにかするか。
そろそろ、曲が終わりそうだ。よし!
「レイティア、ここまで来て言うのも恥ずかしいんだが、実は俺、踊ったことが無いんだ。教えてくれる?」
俺は見栄を張るのを諦めた!
手を取り、ホールに行く間に打ち明ける。
「え! わたしもそんなに経験ないけど、曲に合わせて私の動きについてきて」
次の曲が流れ始めた。当然、聞いたことのない曲だった。ただ、こう言うところでダンスをするための曲なので難しい曲調ではない。変調もせず、どちらかというと繰り返しが多い。言われた様に耳をすませ、レイティアの動きに身を任せる。
お、意外とどうにかなる。ほかの人達から見たらへっぽこかもしれないが、意外と楽しい。レイティアとも密着出来る。
二、三曲踊っては休み、また踊りを繰り返した。
どの位、踊ったか分からない。ただでさえ、気温が高いなかホールの中には何人も踊って、熱気がこもっている。汗が額から流れるほど踊った頃、俺達は声をかけられた。
「レイティア! こんな所に来るなんて、どう行った風の吹き回し?」
リタとサラだった。
三人集まれば、あっという間にガールズトークが始まる。
「ちょっとごめん。少し外で休んで来る」
そう言ってダンスとガールズトークの熱に当てられた俺は、風に当たるため一人外に出た。
外は日が暮れかかり、少し熱気の冷めた風が吹いている。
その風に乗って女性の叫び声が聞こえた。
声がした方に行ってみると、人通りの少ない裏路地だった。
そこには一人の女性ににじり寄る二人の男がいた。
「キヨ、この後どこか行きたい所はある?」
「いや、とりあえず欲しい物は買ったよ。レイティアのお陰で良い物も買えたしね。逆にどこか行きたい所はある?」
レイティアは少し迷ってから、思い切るように言った。
「わたしね、ダンスホールに行ってみたいの」
ダンスホール、若い男女の社交の場。
うん、うん。レイティアぐらいの年の子だと興味があるのは分かる。って俺、踊れる? 甦れ! 記憶!
「レイティアは行った事あるの?」
「お姉ちゃんからああ言う所はごろつきの集まる所だから、行っちゃダメだって言うのよ。リタやサラは時々行ってるって言うのに」
姉からはいつまでも子供扱いされるのが、妹ってものだろう。レイティアほど可愛いと心配する気持ちは分かる。
「でも、収穫祭のダンスはやったことがあるわよ!」
ドヤ顔可愛い。
「まあ、パートナー連れだと変な連中も寄って来ないだろうから、行ってみようか」
リタ達がよく行っていると言うダンスホールへ行くことにした。入口で入場料を払い。飲み物や食べ物は別料金だ。
「見ない顔だから一応、注意事項な。喧嘩は両成敗。弁償は半々で、両方出入り禁止な。うちは健全なダンスホールだ。あと、男女問わず、強引な誘いも厳禁な。何かあったら、ウチの怖い店長がすぐ出て来るから注意しなよ。じゃあ、楽しんでくれ」
防音の為か、二つ程扉を開けると、音楽が流れている。
軽快で明るい曲。周りを見ると壁際に椅子が並べられている。飲み物を置くための小さなテーブルもいくつかあった。飲み物や軽食を持った店員がホールを回っているので、そこで声をかけて飲み物を買う様だ。
部屋の奥には数名の楽団がいる。
すでに数組の男女がホール中央で踊っていた。
まずは観察! 見よう見まねでどうにかするか。
そろそろ、曲が終わりそうだ。よし!
「レイティア、ここまで来て言うのも恥ずかしいんだが、実は俺、踊ったことが無いんだ。教えてくれる?」
俺は見栄を張るのを諦めた!
手を取り、ホールに行く間に打ち明ける。
「え! わたしもそんなに経験ないけど、曲に合わせて私の動きについてきて」
次の曲が流れ始めた。当然、聞いたことのない曲だった。ただ、こう言うところでダンスをするための曲なので難しい曲調ではない。変調もせず、どちらかというと繰り返しが多い。言われた様に耳をすませ、レイティアの動きに身を任せる。
お、意外とどうにかなる。ほかの人達から見たらへっぽこかもしれないが、意外と楽しい。レイティアとも密着出来る。
二、三曲踊っては休み、また踊りを繰り返した。
どの位、踊ったか分からない。ただでさえ、気温が高いなかホールの中には何人も踊って、熱気がこもっている。汗が額から流れるほど踊った頃、俺達は声をかけられた。
「レイティア! こんな所に来るなんて、どう行った風の吹き回し?」
リタとサラだった。
三人集まれば、あっという間にガールズトークが始まる。
「ちょっとごめん。少し外で休んで来る」
そう言ってダンスとガールズトークの熱に当てられた俺は、風に当たるため一人外に出た。
外は日が暮れかかり、少し熱気の冷めた風が吹いている。
その風に乗って女性の叫び声が聞こえた。
声がした方に行ってみると、人通りの少ない裏路地だった。
そこには一人の女性ににじり寄る二人の男がいた。
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