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第一章

アレックス

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「なあ、レイティア。誘っておいて君を待たせるような不届きな男は放って、僕と遊びに行こうよ」

 帽子を深くかぶった男がレイティアを誘っている。帽子からこぼれる緑色の髪は肩よりも長く、青い瞳を持つ顔は美形! モテそうだな。チャラそうだが。

「アレックス、何度も言ってるでしょう。わたしは今日、先約があるの。あなたはいつもの取り巻きの子達と遊んでればいいでしょう」

 レイティアは少しイライラしながら答えている。

「それに、キヨはこの街に慣れていないから、道に迷ってるだけよ」
「レイティア! 遅れてごめん」

 男がレイティアの彼氏じゃなさそうなのを確認して、声をかけた。

「キヨ。遅かったわね。どうしたの。それじゃあね。アレックス」
「ちょっと待ちたまえ。君がキヨか? はじめまして、僕の名前はアレックス。女性を待たせるなんて君は何を考えているんだね。それに確認しておきたい事がある。君が僕の子猫ちゃんの唇を奪ったと言うのは本当かね?」

 僕の子猫ちゃん? レイティアの事か? 子猫ちゃんはともかく。

「僕のって言うのはどう言う事だ?」
「ちょっと、バカ! こんな所で何言ってる、アレックス!」

 俺とレイティアがほぼ同時に喋った。

「子猫ちゃん今、僕はこの野暮男と話をしているから、ちょっと待っててね。君! 僕の質問が先だ! さあ、答えてもらおう」

 アレックスは芝居かかった動きで俺に指差した。
 俺が答えようと口を開こうとしたその時、腕を引っ張られた。

「キヨ、相手にする必要ないわ。行きましょう」

 俺は逆らわず、レイティアについていった。
 あの野郎に聞きたい事があったが、恐らく話すと面倒くさいタイプだ。
 アレックスはポーズを決めたまま固まっていたが、気を取直して俺たちを追いかけようとした。

「アレックス! わたし達について来たら、わたしはあなたの事が嫌いになるからね!」
「そんな~子猫ちゃん」

 レイティアのきつい一言にアレックスは立ち尽くした。
 とりあえず、アレックスが見えなくなる所まで移動した。

「ごめんね。わたしの友達が失礼なことして」

 友達が、友達、ともだちって言ったよな! よし!
 とりあえずガッツポーズは心の中だけにして冷静を装って言った。

「大丈夫だよ。気にしてないから」

 そうだよな。レイティアは可愛いものなあ、アタックする奴がいたっておかしくないよなぁ。気をつけないと。

「良かった。ありがとう。アレックスもちょっと変な所があるのだけど、本当は良い人なのよ。ごめんね」
「大丈夫だよ。本当に気にしてないから」

 なんか、あいつの事をフォローするレイティアの言葉にちょっと引っかかりを覚えながらも、俺はあやまるレイティアをなだめた。元はと言えば俺が遅刻したのが原因なのかな?

「それよりも、レイティア。今日のその服、君によく似合っているよ。すごく可愛い」
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