魔法の数はステータス!? 転移した先は女性ばかりが魔法を使う世界!

三原みぱぱ

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第一章

第七話 初日・街

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次の日、部屋に差し込む朝日に起こされた。
 ムサシマルはまだ隣で寝ていた。

 昨夜、あの後の話を整理してみよう。
 アリシアは魔物の住処の掃討で長期間、街を空けているため、アリシアと戦いたいムサシマルはしばらくこの街に滞在する。
 滞在している間、ムサシマルが俺にこの世界での生き方を教えてくれることになった。

 レイティアの事は当事者同士でどうにかしろ! とリタにもムサシマルにも言われた。

 レイティアの家はムサシマルが知っていたので、リタの住所を教えてもらった。
 リタは、眠りこけたレイティアを肩に担ぎ、夜道を帰って行った。
 送ろうか? と言ったら、夜道を帰るあなたの方が危険よ。逆に心配されてしまった。

 隣でいびきをかいているムサシマルを起こすべきかどうかだが、寝る前に枕の下に短剣を用意していたのを見てしまったので、安易に起こすと恐ろしいことが起きかねない。
 とりあえず、窓を全開にしてさわやかな朝日を部屋に取り入れてみた。
 乾いた涼しい風が陽光に乗って部屋に入り込んだ。
 ムサシマルが使っている窓側のベッドに光が差し込んでいるが、起きる気配が全く無い。

 さて、どうしたものか?

 俺も護身用に借りていた短剣を抜いた。
 思いつきで、ムサシマルに投げてみる。
 その瞬間、ムサシマルの目は見開かれ、左手で払い落とすと流れるように枕の下の短剣を手に取り、周囲を見回した。

「おはようございます」

 俺は念のため構えていた短剣をそのままにムサシマルに挨拶した。

「あ、ああ、おはよう」

 ムサシマルはバツが悪そうに頭を掻いて、欠伸をする。

「今日からお願いしますよ。先生」

 俺はムサシマルに弾き飛ばされた鞘を拾いながら言った。

「よくまあ、一発で目が覚める起こし方を考えるもんじゃな」

 俺たちは一階に降りるとパンとスープで、朝食を取る。

「親父、昼食用にパンも二人分頼むぞ」
「ああ、わかった。それで今日はどこに行くんだい」

 店の親父はカウンターの向こうで調理をしながらムサシマルに声をかける。

「今日はキヨに狩りを教えに森に行くんじゃよ。ここの宿代もかせがにゃならんしよ」
「それじゃあ、しっかり稼いできてくれよ。ツケはきかないからな」

 ムサシマルが路銀に余裕があるとは言っていたが、食肉や皮が利用できる動物を狩って売ったり、害獣駆除で礼金をもらったりしているらしい。

「しかし兄ちゃん、そんな体で使い物になるのか? 魔法の一つでも使えるんだったら別だけど」
「ああ、同郷のよしみじゃ、初めは荷物持ちからじゃが、儂が鍛えてやるから大丈夫じゃよ」

そんな話をしているうちに昼食のパンの準備も出来て俺たちは宿を出た。
宿を出るとまだ朝ながら、燦々と日差しが降り注ぐ。
暖かな埃っぽい空気が吹いてくる。
食料品を大量に運ぶ男性や買い物帰りらしい男性が道に溢れていた。

 ムサシマルは剣や弓の状態を確認し、弓と色々な道具が入った袋を俺に持たせた。

重い! 
ムサシマルが中身を確認した時、軽々と持っていたのでそれほど重くないと思っていて油断した。

 昨夜、リタが上級マダムに飼われるって手もあるわよと本気か冗談かわからない笑顔で言っていたが、考えときますと受け流したが、荷物持ちだけで俺はマダムに飼われた方が幸せだったかなと心が揺れる。

その俺の脳裏に酔っ払い美少女の顔が浮かぶ。

 確かにレイティアの事も気になるが、目の前問題、生活基盤をどうにかしないことには始まらない。
 まず俺たちは市場に行くことにした。
 肉の価格を確認した後、野菜を売っている店に行く。

「よう、あんちゃん達、今日はキャベツのいいのが入っているぜ。朝摘みだぜ」
「悪いな、オヤジ。端切れが欲しいんじゃが、もらえるかのう? 兎でも取れれば、帰りにキャベツを買って煮込み料理にでもするからのう」
「そっちの箱の端切れは持ってっていいぞ。帰りに寄ってけよ。一玉取っといてやるからよ」
「ありがとよ」

 ムサシマルは慣れた感じで市場の店員と話をつけ、俺は袋に端切れを詰める。

「のう、キヨよ。これから街はずれの森行くが、今日のところは荷物持ちじゃ。儂はあまり人に教えるのは得意じゃないんでな。そこは勘弁してくれな」

 ちょっと無精ひげのどことなく愛嬌のあるムサシマルの顔は困ったように笑った後、真剣な面持ちで言った。

「ちなみに門の外に出たら儂の指示に従ってもらうぞ。今日行く森は大丈夫だとは思うが、最悪命に関わるからの」
「わ、わかった。約束する」

 その真剣な黒い瞳で訴えられると俺は気を引き締めた。

 煉瓦と木の補強でできた壁から、街の外に出るための門の守衛兵ももちろん女性だった。
 防具に身を包み、片手には槍を構えている。
 門は大きく、馬車がすれ違ってもまだまだ余裕があった。
 
 ムサシマルは何か通行所のようなものを見せて、森に行くことと帰りの予定を告げると簡単に通され、俺は初めて街の外に出た。
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