魔法の数はステータス!? 転移した先は女性ばかりが魔法を使う世界!

三原みぱぱ

文字の大きさ
上 下
5 / 186
第一章

第五話 レイティア

しおりを挟む
 ムサシマルがそう言いかけた時、二人の女性が店に入って来た。
 一人は金髪を編み込み、後ろでまとめている小柄な少女。
 金色の大きな瞳、スッと伸びた高い鼻、柔らかそうなピンクの唇。
 アイドルのような美少女。 
 ただし、その可愛らしい顔は不機嫌そうに歪んでいた。
 もう一人は金髪の少女より頭一つ背が高い活発そうな顔。
 短髪赤毛でグリーンの瞳を細めて明るい笑顔を見せていた。

「リタ殿! こっちじゃ」

 俺にしたように、二人の女性に手を振るムサシマル。
 女性たちはムサシマルに気がつき、こちらに近づいて来た。美少女は不機嫌な顔のままで。

「竜ヶ峰清人(りゅうがみねきよと)君と言うそうじゃ」
「りょうがみねきよと?」

 赤毛の女性は俺の名前を呼んだ。

「呼びづらいですよね。キヨと呼んでください」
「ありがとう。キヨ。私はリタ。覚えているか分からないけど、嫁取りの儀の見届け人をしていたのよ」

 リタは人懐っこそうな笑顔で握手をしながらそう言い、不機嫌そうな美少女を俺に紹介してくれた。

「こっちが私の親友で、あなたの嫁のレイティアよ」
「ちょっと待って、リタ! あんなの無効よ。だいたい、あの嫁取りの儀の相手は、そこのムサシマルでしょう!」

 状況がさっぱりわからない。ムサシマルと金髪美少女、レイティアが嫁取りの儀をして、そのレイティアが俺の嫁?
 混乱のため俺が黙っているとムサシマルが助け舟を出してくれた。

「まあまあ、落ち着くのじゃ。どうやらキヨの記憶が混乱してるらしいぞ」

 ムサシマルは俺が自分と同じ異世界人と言うことは、とりあえず黙っていてくれるらしい。
 俺はムサシマルの話に乗っかることにした。

「すみません。なんか自分が混乱してるみたいで。申し訳ないですが、事の顛末を説明してもらえないでしょうか?」
「え! 大丈夫? 私とぶつかった時、頭打ったのかな?」

 不機嫌そうな顔が一転心配そうな顔になる。

 なにこれ可愛い!
 
 俺のおでこに手を当てて顔を近づけてくる。

 近い、近い! なにドキドキしてるんだ俺?

「まあ、儂の方から順を追って説明しよう」

 レイティア達の食事が運ばれる間に、俺の疑問に答えてムサシマルが説明してくれた内容はこうだ。
 ムサシマルがレイティアに嫁取りの儀を挑んでいる時に、空から俺が降って来てレイティアの唇を横取りしたと。そしてそのまま気絶してしまったので、ムサシマルが宿泊しているこの宿に運び込んでくれたようだ。

「お主も果報者じゃのう。街で一番強い女を嫁取りの儀で手に入れたんじゃから」
「だから、無効だって言って……」

 そこまで言いかけて、レイティアはムサシマルに問いただした。

「今、なんて言ったの?」
「何って。キヨは果報者じゃのうと」
「違う! そのあと! 街で一番強いって!」

 軽く酔いが回ってムサシマルは上機嫌に答える。

「この街で一人しかいない魔法四つ持ちじゃろ、レイティア殿は。じゃから、街で一番強い女じゃろうて。謙遜する必要ないぞ。儂には動きが鈍化する魔法一つしか使ってなかったが、キヨが割り込まなんだったら、他の魔法も使うつもりだったんじゃろう」

 ムサシマルの言葉を黙って聞いているレイティア。
 その代わり、リタが声を上げる。

「あちゃ~」

 リタがやっちまった、と言う顔をしていた。

「それ……私のお姉ちゃん」

 レイティアが先程までの声とは全く違う深く暗く落ち込んだ声で言った。

「四つ持ちのこの街最強の剣士アリシア・シアンは私のお姉ちゃん。私は一つ持ち。……そうよね。一つ持ちの私に嫁取りの儀を持ちかける人なんているはずないのに……なんで勘違いしちゃったんだろう」

 なんだ、この落ち込みようは? まるでこの世の終りのような落ち込みようは? 嫁取りの儀って女性にとって迷惑な風習じゃないのか?

「レイティア」

 リタが恐る恐る、レイティアに声をかけたその時、空気を読まない店員が飲み物を持ってきた。
 リタとムサシマルが注文した大きな木のコップには入ったお酒。
 レイティアはリタが注文した酒を奪い取り、一気に飲み干した。唖然とするムサシマルと俺を尻目にレイティアはムサシマルの酒も奪い取り、一気に流し込んだ。

「え!」

 俺が思わず声が出た直後、レイティアはテーブルにぶっ倒れた。

「あ~あ、やっちゃった。ムサシマル、ちょっと部屋貸してね。吐いたりはしないはずだから」

 ムサシマルは何も言えず黙って、首を縦に振るだけだった。
 俺たちはなんとも言えない空気のまま、リタが二階から帰って来るのを待っていた。
しおりを挟む
第三第章進行中!年内完結予定(予定)予定だよ。酷評上等! ただし具体的にね。表紙は「かわいいおんなのこメーカー」で作ってみたレイティアです。イメージですけどね。
感想 3

あなたにおすすめの小説

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

転生をしたら異世界だったので、のんびりスローライフで過ごしたい。

みみっく
ファンタジー
どうやら事故で死んでしまって、転生をしたらしい……仕事を頑張り、人間関係も上手くやっていたのにあっけなく死んでしまうなら……だったら、のんびりスローライフで過ごしたい! だけど現状は、幼馴染に巻き込まれて冒険者になる流れになってしまっている……

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

異世界遺跡巡り ~ロマンを求めて異世界冒険~

小狸日
ファンタジー
交通事故に巻き込まれて、異世界に転移した拓(タク)と浩司(コウジ) そこは、剣と魔法の世界だった。 2千年以上昔の勇者の物語、そこに出てくる勇者の遺産。 新しい世界で遺跡探検と異世界料理を楽しもうと思っていたのだが・・・ 気に入らない異世界の常識に小さな喧嘩を売ることにした。

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました

遥 かずら
ファンタジー
冒険者ギルドに所属しているエンジは剣と魔法の才能が無く、文字を書くことだけが取り柄であった。落ちこぼれスキル【転写】を使いギルド帳の筆記作業で生計を立てていた。そんなある日、立ち寄った勇者パーティーの貴重な古代書を間違って書き写してしまい、盗人扱いされ、勇者によってギルドから追放されてしまう。 追放されたエンジは、【転写】スキルが、物やスキル、ステータスや魔法に至るまで何でも【コピー】できるほどに極められていることに気が付く。 やがて彼は【コピー】マスターと呼ばれ、世界最強の冒険者となっていくのであった。

処理中です...