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第一章

第四話 嫁取りの儀

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「嫁取りの儀!」

 記憶が無いからかそれとも元から知らないのかどう言うものなのかわからない。
 もちろん言葉の意味から嫁を選び娶る意味だとはわかる。だがそれがどんなもので、いつ俺がそんなものに参加していたのかがわからない。

「まあ、驚くのもしようがない。この世界独特のものじゃろう。嫁取りの儀とは簡単言うとじゃな。好いた女に決闘を申し込んで、唇を奪えたら、女は自分の嫁に出来ると。まあ、そう言う風習じゃ」

 は? それって強引に押し倒して唇を奪ったら嫁? それなんてエロゲ? なんて羨まけしからん。
 俺は心の中で思わず叫ぶ。危うく声に出しそうになるのを既のところで抑える。え、エロゲって?

「ちょっと待って下さい。そんなのほとんどの男性の方が強いじゃ無いですか? 決闘? 女性が勝てるわけないじゃないですか? そんなの許されるのですか?」
「そう思うじゃろう。周りを見て見ろ。おかしなことに気がつかんか?」

 俺はムサシマルに促されるままに周りを見た。
 石の壁に木の天井、木でできた窓にはガラスはなかった。
 俺が二階から降りた時から客が増え、十卓ほどある木のテーブルのほとんどが既に埋まっていた。
 みんなムサシマルのような服を着ており、女性客のほとんどは革の防具を身につけて剣を椅子に立てかけている。
 ほとんどが楽しそうに酒を飲みながら食事をしていた。

「客のほとんどが女で働いている店員はほぼ男。その上、女達の格好は防具を着けて帯刀しているだろう」

 客のほとんどが女性という事には気が付いていた。

「確かにそうですね」

 俺はムサシマルの言葉の意味を探るように相槌を打つ。

「この世界では外敵と戦うのは女の役目なんじゃよ」

 ムサシマルは俺の反応を探るようにジッとこちらを見た。

「なぜだと思う?」

 答えを求めていない。こちらの反応を見て楽しんでいるだけだ。
 こちらはまだまだ情報が欲しい。ここでヘソを曲げてもらっては困る。

「男の数が極端に少ないとか?」

 それでは男がわざわざ、決闘を挑んで嫁を取る意味が無い。
 間違いとわかっているが、分からないでは芸が無い。
 情報を引き出すには相手が気持ちよく話しが出来るように誘導してやることが大事だ。

「わははは。それでは男は女を選び放題では無いか。わざわざ決闘なんぞ申し込む必要がないぞ」

 満足気に話すムサシマルは少し間を置き、真剣な表情を作った。

「お主には信じられないかもしれんが、この世界の女は妖術、ここでは魔法と言っておったかのう。を使うんじゃ。お陰で単純な力では勝る男が負けてしまう」

 妖術。魔法。……面白い。もっと詳しく聞きたい。
 ただの相槌ではそこで話は膨らまない。こういう時は……。

「嘘だ。私がこの世界に来たばかりだからってからかわないでくださいよ。大体なんで女性だけが魔法を使えて男性は使えないんですか?」

 相手の話しをわざと否定する。

「そうじゃろう。そう思うのが普通の反応だ。儂も初めはそうじゃった。じゃがな。本当のことじゃ。後から来るお主の嫁に見せてもらえ。男でも魔法が使える者もいるらしいが、ごく少数らしい。その上、せいぜい一種類しか使えないらしい。ここでは使える魔法が多いほど、尊敬されるんじゃよ」

 女性しか魔法が使えない!? 使える魔法の数がステータスになる?
 う! 俺男だよな。剣も使ったことがない。つまり、ランク最下位決定?

「その話が本当だとして魔法ってどうやって覚えるのですか?」
「それはじゃな」
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