異世界に迷い込んだ俺は異世界召喚された幼馴染と再会した

たたたかし

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勇者召喚編

8.乙女と組手と勅命。準備を万全に整えたい

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 私が異世界に来てから一ヶ月と一週間が経った。

 私は現在、朝の組手中だ。

「はっ!!」

 ベルとの距離を一気に詰め重心を低くして、彼の腹部に全力で掌底を食らわせる。
 この攻撃が当たれば並みの人間ならば内臓が破裂するほどの威力だ。

 だがベルには効かない。

 ベルは攻撃を避けずにわざと受けて、そのまま私の掌底を放った腕を掴み、腕を折りにくる。

 ベルの力は強く腕はビクともしない。

 そしてベルは私の腕に向けて拳を振り下ろす。

 だが、直前にピタリと拳を止めて私の腕を離して私から距離を置く。

 ベルが先ほどいた場所の地面はえぐれていた。

「私への掌底を囮にして私の後ろから水魔法で攻撃とは中々やりますね」

 ベルがそう言う。

「はぁ、褒めてるくせに、はぁ、はぁ、余裕で避けるの、はぁ、やめてよ!」

「いえいえ、そんな余裕でもないですよ。これは執事の意地ですよ」

 ベルがそう言放った瞬間、先ほどまで距離が離れていたはずのベルが一瞬にして私の前に現れる。

 そして私の腹部に躊躇いなく掌底をやり返される。

 無属性魔法で身体を強化して防御するが防御しきれずに食らう。

「ごふっ!」

 掌底の衝撃で身体をのけぞらせた後、正面にいたはずのベルは背後にいて、私に向け拳を放つ。

 だが今度は威力が全くないほどの攻撃だった。

 ポン

 肩に手を置かれた。

「八条様の攻撃と発想は素晴らしい物では御座いますが、やるのならばこのように両方当てるのが効果的でしょう。
 それと魔力を集める時は気づかれないようにしてください。意識が私の背後に向いていたので簡単に気づけました」

「く、悔しい」

 私がそう呟くとベルはニコリと笑みを浮かべて言う。

「八条様は昨日よりも強くなられております」

 ベルはそう言うと少しだけ乱れた衣服をキュッと直して組手を終了する。


 組手のレベルも初めて組手をした時よりも比べ物にならない程に上がった。

 それも、つい最近になって急激に上がった気がする。

 始めた当初は「使用人が主人に手をあげる事など許されません」とか言っていた癖に突然、私に躊躇なく殴りかかってくるようになった。

 更に前はアドバイスなんて全然しなかったのに、最近はバンバン物を言ってくる。
 おかげさまでかなりの実力がついたが、ベルの正体が余計わからなくなる。

 こんな強い執事って本当に存在するの?

 今のクラスメイトたちよりかは確実に強いのは間違いない。


 そんな事を思いながら朝食を部屋で済ませて、今日は昼まで部屋にこもる。

 ベルの話によると、今日のお昼は訓練をしないでクラスメイトたち全員集めて何やら大事な話をするそうだ。

 なので今日はその時間まで部屋でゆっくりしていようと思う。

「『ステータス』」

 やる事もないのでステータス確認だ。


________________________________________________________

【ナツメ ハチジョウ】・Lv.1

人族・女・16

Str:E→D

Dex:C

Vit:D

Agi:C→B

Int:S

Mnd:C

〈属性〉

 [水:Lv.--][火:Lv.1][風:Lv.1][光:Lv.1][闇:Lv.1][無:Lv.1]

〈スキル〉

[限界突破][魔力増加:Lv.1→2][瞬間記憶][アイテムボックス:Lv.1→2][料理:Lv.6][歌唱:Lv.4][演技:Lv.5→7]

〈称号〉
“異世界人” “※※※の権能” “※※※の権能”


________________________________________________________


 レベルが上がっていないのにステータスとスキルがいくつか上がっている。

 スキルは使っていけば上がるというのはわかるけど、ステータスはレベルが上がらないと上がらないイメージがある。

 これが普通なのかな?今度秋に聞いてみよー。

 そう思いながら私なりにも考えてみる。

 私には身体強化系のスキルがないと思っていたけれど[限界突破]は身体強化系のスキルだろう。

 私はそう仮説を立てて朝の組手を思い出す。

 そうでなければあれほどの体の動きを私がやるのは無理がある。

 となるとステータスが少し上がったのも[限界突破]のおかげかもしれない。

 まあ、仮説だけれど。

 そんな事を考えたり。新しく使えそうな水魔法をイメージして名前をつけていく。

 技名をつけた方が魔法のイメージを引き出しやすいから。
 それに名前を言って魔法を出すのはかっこいいからなるべく名前をつけるようにしてる。

 ちなみに朝、組手で使った水魔法の名前は“水圧光線ボコボコビーム”だ。

 ああ、我ながら自分のつけた名前に惚れ惚れするよ!



 魔法の名前を考えて、ニマニマしていると、あっという間にお昼の集合時間になってしまった。

 私はベルを連れて集合場所に向かっている途中にベルに話をかけた。


「今日する大事な話ってどんな内容なんだろうね。
 というかベルには情報聞かされてないの?」

「……」

「…ベル?」

「いえ、聞かされておりません」

「そうなんだ」

 最近ベルに話しかけるとたまに返事がない時がある。

 ベルは自分がボーッとしてる事に気付いてないので、心配しづらい。

 やはり、執事の仕事は睡眠時間が少なくて忙しいのだろう。

 というか私の行動をベルは帝国に逐一報告しないといけないだろうから執事兼監視なんて敵ながら可哀想にも思える。

 そんな事を考えていると集合場所のホールにたどり着いた。

 結構遅い到着だったようで殆どのクラスメイトたちは既に集まっていた。

 上村くん達は目立つからすぐ見つけられる。

 私は上村くん達の所へは行かずに、隅っこにいる宮本くんの所へ行く。


 いや、別に好きだからとかそういうわけじゃないから!!

 そう言うんじゃないからほんと!!


「宮本くんこんにちわ!」

「あ、八条さん!こんにちわ!」

 私が宮本くんに挨拶をすると彼は可愛らしい笑みを浮かべて元気よく挨拶をしてくる。

「今日どんな話をするのかな」

「どんな話だろう。危ない事じゃないといいんだけど」

 宮本くんはそう言って不安そうな顔をする。

「大丈夫だよきっと」

 なんの根拠もないセリフを私は飛ばした。

 宮本くんはこの世界に来てから3人の生徒にいじめを受けている。
 [超剣術]というスキルを持っていながら、宮本くんは剣をまともに振ることができないのだ。
 女の子のような細い腕では、剣という鉄の塊を持つことができないようだ。

 そんな理由で彼は今もいじめを受けているが、3人は私がいるときは宮本くんにちょっかいをかけることがない。

 なので私は居られるときはなるべく宮本くんの側にいる。


 そんな事を考えていると、ホールに鎧をまとった帝国の兵士達がガチャガチャと私達の前に集まってきた。


 そして兵士の隊長らしき人がホールの真ん中に立つと、大きな声で喋り出した。


「これより陛下からの勅命を伝える!!心して聞くように!!」

 そう言って隊長は今日集められた理由を話し出した。






 内容は、今から一週間後に帝国内にある迷宮へ向かうという事だった。

 迷宮

 それは迷宮と作りは殆ど変わらないものだ。

 迷宮跡地は迷宮と同じで階層に分けられていて魔物が出てくる。

 ただ、迷宮とは決定的に違うところがある。

 迷宮跡地の魔物はとても弱く。普通の迷宮と違い階層毎に気候や魔物の種類が変わることもないということ。

 言ってしまえば迷宮跡地とはとても長い洞窟のようなものらしい。

 "死んだ迷宮"

 その意味を込めて迷宮跡地と人は呼ぶらしい。

 迷宮にどうしてこのような違いがあるかは解明されていない。そもそも迷宮が何なのかが解明されていないからだ。


 そんな場所に来週に行くというらしい。

 私たち勇者のレベルを上げる事を目的としていて、比較的弱い魔物しか出てこない迷宮跡地は、私たちのレベルを上げるにはとても都合のいい場所だ。


 私は迷宮跡地に行くことよりも、初めて皇城から出られる喜びに想いを馳せていた。


 来週の迷宮跡地訓練までに万全な準備をしなくては!!

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