103 / 133
勇者召喚編
3.事情説明を受ける乙女。人は忙しくなると考えることをやめる
しおりを挟む扉から現れたのは松明を持った先生と鎧?を着た人、数人だった。
状況が全く掴めていない状態でさらに意味不明な状況である。
鎧?を着た人を見て一瞬コスプレをしている人を思い浮かべたのだが、着ている人の顔は真面目な顔をしている。そしてその数人は全員腰に剣を差していた。
そうやって状況観察していると先生が喋り出す。
「お前たち、大丈夫だ。この人達が安全な場所へと案内してくれる。俺に付いて来い」
ここにいてもなんら状況は変わらない為、全員が先生について行くことになった。
扉を出て、しばらく歩くと階段を登らされる。どうやらさっきの場所は地下だったみたいだ。
階段を抜けると、先程石造りだった壁や床がまるでお城にいるかのように装飾された場所に出た。
床には高そうな赤いカーペット。壁には金か何かで装飾された燭台が付いている。
そんな所を先生はずんずんと進んでいく。
それにしても、先生は何故こんな状況なのにしっかりしていられるのだろう?
頼りになるが怖くないのかな?
そんな事を考えながら付いて行っているいると、先生と男の人が大きな扉の前で止まった。
男の人が大きな扉をドンドンと叩いて大きな声で叫んだ。
「皇帝陛下!!勇者様を連れてまいりました!!!」
男の人は確かにそう言った。
皇帝陛下!?勇者???え????えぇ?????
頭の中は大混乱。
そんな私の混乱を無視して、その大きな扉はゴゴゴと言っていいるように開いた。
開いた扉の先には、眩しいくらいにピカピカした部屋があった。
上を見れば金色のシャンデリア。横を見れば金色の燭台。下を見るとふかふかのカーペット。前を見ると金の王冠を被ったおじさんとその両隣におじさんの息子と娘だろうと思われる男女が高そうな服を着て、高そうな椅子に座っている。
そしてその横に白いローブを羽織ったおじいさんが立っている。
情報が多すぎて私の脳は大渋滞を起こしていた。
考える。という機能が停止したようだった。
目に入ったものをただソレとして受け止めることしかできなかった。
私達がその部屋の中央によると。先生が止まったので私達も止まった。
すると、私達を案内していた男の人が王冠のおじさんの元へ行って何やら耳打ちをしていた。
耳打ちをしている途中でおじさんは驚いたり落ち着いたりしていた。
何を話しているのだろう。
耳打ちを終えたらしく、男の人がおじさんに一礼して端っこへ移動した。
すると白いローブを羽織ったおじいさんが私達に話しかけて来た。
「ワシの言葉がわかるか?わかるのならば長い話になるゆえ、その場で楽な体勢で座ってくれ」
訳はわからないがこれから私達に説明をしてくれる感じなのでとりあえずおじいさんの言うことに従って私達その場で体育座りをした。
するとおじいさんは頷き、言葉を発する。
「まず、君たちはここがどこだかを説明する。
ここは、君達の元々いた世界ではない。
君たちがいた世界とは別の世界。つまり異世界だ」
そう言っておじいさんは手を前に出して私たちの前に広げた。
手を広げたとおもったらおじいさんは何やらブツブツと何か言って目をキッと開き「不死鳥」と叫んだ。
その瞬間、おじいさんの手から炎が飛び出して来てその炎が大きな鳥の形を形成しだした。
すぐに炎は大きな鳥となり、羽を広げた。
「アォォォォォォァン」
大きな鳥はそう鳴いた。
すると、鳥を形成していた炎が私たちの前でぱぁん!弾けた。
弾けた炎が私たち元へ降ってくる瞬間に炎は私たちの前で溶けるように消えていった。
「これは君達の世界にはない力だと言い伝えられている。ここが違う世界だと言う事を信じてもらえたか?」
おじいさんがそう言うと周りがざわざわした。
「…本当にここは異世界なの?…家には帰れないの??」
「うわぁぁぁぁぁぁん!!」
「チート転移ktkr」
「お、俺たちはどうなるんだ…」
「家に返せよ!!」
「…」
皆んなから不満の声が漏れ出す。
よくわからないことの連続でみんなの不満も限界が来ていたのだ。
不満の声がどんどんと大きくなっていく。
初めはざわざわとしていた程度だったが今はぎゃーぎゃーと叫ぶ声すらも聞こえる。
「しずまれぇい!!!殺されたいのか貴様ら」
私たちの叫びを止めるように椅子に座っていた王冠のおじさんが怒鳴り声を上げた。
「ひっ!!」
怒鳴り声により一瞬にして場は凍ったように静かになった。
ここで私達が不満を漏らしたとしてもここは相手のテリトリー。
帯剣した男の人もいるし、先ほどの炎で焼かれてもおかしくない。
その言葉を聞いて先ほど叫んでいたものたちが黙り込んでガタガタと震えはじめた。
「まずは話を聞くのだ」
王冠おじさんはそう言っておじいさんに目を向けると、おじいさんは頷いて、この世界のこと。この世界に私たちが来た経緯を語りはじめた。
・
・
・
・
・
「……という事だ。だからワシらに力を貸して欲しい」
おじいさん…クリントンはそう言って話を切り上げた。
話の内容はこうだ。
今現在、この世界では人間同士の戦いが起ころうとしている。
戦争を起こそうとしているのはレノス王国という国で、ここアムリス帝国が狙われているとの事。
これから混乱が起こる事を見かねた聖教国ユーピテルが崇拝する神が勇者を使わせた。その勇者が私たちこのクラスの全員だという事。
そして、私たち勇者はこの世界の者よりもはるかに強い力を持っており、この戦いを止めて欲しいのだと。帝国は言った。
勿論、無理強いはしない。
協力するというなら帝国では最高級の扱いをするし、衣食住には困らない生活を送らせてくれるらしい。
それにこの世界の者よりもはるかに優れた力を持っていたとしても。まだこの世界に来たばかりで、今は普通の戦士にもやられてしまうくらいらしいのでひとまずはここにいて欲しいと。
それを聞いて反応したのが先生だった。
「話の内容はわかりました。ですが本当に俺たちにその力はあるのでしょうか?もしも無ければ協力などできませんし」
先生は私も思っていた疑問を口にしてクリントンに問う。
「その事だがそれはワシ達にはわからない」
「わからない?」
「うむ、だが君達の力は君達自身が一番知っているのだろう?たしか『すていとす』とやらで自分の力を確認ができると聞いた」
クリントンがそう返す。
「『すていとす』??……あぁ、『ステータス』ですか…って、うぉ!!」
先生がそう言った瞬間、急に先生が何もないところを見て尻餅をついた。
「どうやら確認ができたようだ」
クリントンが尻餅をついた先生を見ながらそう言った。
「は、はい。確認できました」
先生はそう言いながらついたお尻をさすりながら立ち上がる。
そして私たちの方に向いて
「みんな、声に出して『ステータス』と言って見ろ。そうすれば自分の力が把握できる」
と言った。
それを機に周りから『ステータス』という声が聞こえる。
少し怖いが私も自分の力を確認する必要がある。
なので私も言った。
「す、『ステータス』」
0
お気に入りに追加
2,801
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~
繭
ファンタジー
高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。
見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に
え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。
確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!?
ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・
気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。
誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!?
女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話
保険でR15
タイトル変更の可能性あり
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
おばあちゃん(28)は自由ですヨ
美緒
ファンタジー
異世界召喚されちゃったあたし、梅木里子(28)。
その場には王子らしき人も居たけれど、その他大勢と共にもう一人の召喚者ばかりに話し掛け、あたしの事は無視。
どうしろっていうのよ……とか考えていたら、あたしに気付いた王子らしき人は、あたしの事を鼻で笑い。
「おまけのババアは引っ込んでろ」
そんな暴言と共に足蹴にされ、あたしは切れた。
その途端、響く悲鳴。
突然、年寄りになった王子らしき人。
そして気付く。
あれ、あたし……おばあちゃんになってない!?
ちょっと待ってよ! あたし、28歳だよ!?
魔法というものがあり、魔力が最も充実している年齢で老化が一時的に止まるという、謎な法則のある世界。
召喚の魔法陣に、『最も力――魔力――が充実している年齢の姿』で召喚されるという呪が込められていた事から、おばあちゃんな姿で召喚されてしまった。
普通の人間は、年を取ると力が弱くなるのに、里子は逆。年を重ねれば重ねるほど力が強大になっていくチートだった――けど、本人は知らず。
自分を召喚した国が酷かったものだからとっとと出て行き(迷惑料をしっかり頂く)
元の姿に戻る為、元の世界に帰る為。
外見・おばあちゃんな性格のよろしくない最強主人公が自由気ままに旅をする。
※気分で書いているので、1話1話の長短がバラバラです。
※基本的に主人公、性格よくないです。言葉遣いも余りよろしくないです。(これ重要)
※いつか恋愛もさせたいけど、主人公が「え? 熟女萌え? というか、ババ專!?」とか考えちゃうので進まない様な気もします。
※こちらは、小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
巻き込まれて気づけば異世界 ~その配達員器用貧乏にて~
細波
ファンタジー
(3月27日変更)
仕事中に異世界転移へ巻き込まれたオッサン。神様からチートもらってやりたいように生きる…
と思ってたけど、人から頼まれる。神から頼まれる。自分から首をつっこむ!
「前の世界より黒くないし、社畜感無いから余裕っすね」
周りの人も神も黒い!
「人なんてそんなもんでしょ? 俺だって黒い方だと思うし」
そんな元オッサンは今日も行く!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った
五色ひわ
恋愛
辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。アメリアは真実を確かめるため、3年ぶりに王都へと旅立った。
※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる