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勇者召喚編
3.事情説明を受ける乙女。人は忙しくなると考えることをやめる
しおりを挟む扉から現れたのは松明を持った先生と鎧?を着た人、数人だった。
状況が全く掴めていない状態でさらに意味不明な状況である。
鎧?を着た人を見て一瞬コスプレをしている人を思い浮かべたのだが、着ている人の顔は真面目な顔をしている。そしてその数人は全員腰に剣を差していた。
そうやって状況観察していると先生が喋り出す。
「お前たち、大丈夫だ。この人達が安全な場所へと案内してくれる。俺に付いて来い」
ここにいてもなんら状況は変わらない為、全員が先生について行くことになった。
扉を出て、しばらく歩くと階段を登らされる。どうやらさっきの場所は地下だったみたいだ。
階段を抜けると、先程石造りだった壁や床がまるでお城にいるかのように装飾された場所に出た。
床には高そうな赤いカーペット。壁には金か何かで装飾された燭台が付いている。
そんな所を先生はずんずんと進んでいく。
それにしても、先生は何故こんな状況なのにしっかりしていられるのだろう?
頼りになるが怖くないのかな?
そんな事を考えながら付いて行っているいると、先生と男の人が大きな扉の前で止まった。
男の人が大きな扉をドンドンと叩いて大きな声で叫んだ。
「皇帝陛下!!勇者様を連れてまいりました!!!」
男の人は確かにそう言った。
皇帝陛下!?勇者???え????えぇ?????
頭の中は大混乱。
そんな私の混乱を無視して、その大きな扉はゴゴゴと言っていいるように開いた。
開いた扉の先には、眩しいくらいにピカピカした部屋があった。
上を見れば金色のシャンデリア。横を見れば金色の燭台。下を見るとふかふかのカーペット。前を見ると金の王冠を被ったおじさんとその両隣におじさんの息子と娘だろうと思われる男女が高そうな服を着て、高そうな椅子に座っている。
そしてその横に白いローブを羽織ったおじいさんが立っている。
情報が多すぎて私の脳は大渋滞を起こしていた。
考える。という機能が停止したようだった。
目に入ったものをただソレとして受け止めることしかできなかった。
私達がその部屋の中央によると。先生が止まったので私達も止まった。
すると、私達を案内していた男の人が王冠のおじさんの元へ行って何やら耳打ちをしていた。
耳打ちをしている途中でおじさんは驚いたり落ち着いたりしていた。
何を話しているのだろう。
耳打ちを終えたらしく、男の人がおじさんに一礼して端っこへ移動した。
すると白いローブを羽織ったおじいさんが私達に話しかけて来た。
「ワシの言葉がわかるか?わかるのならば長い話になるゆえ、その場で楽な体勢で座ってくれ」
訳はわからないがこれから私達に説明をしてくれる感じなのでとりあえずおじいさんの言うことに従って私達その場で体育座りをした。
するとおじいさんは頷き、言葉を発する。
「まず、君たちはここがどこだかを説明する。
ここは、君達の元々いた世界ではない。
君たちがいた世界とは別の世界。つまり異世界だ」
そう言っておじいさんは手を前に出して私たちの前に広げた。
手を広げたとおもったらおじいさんは何やらブツブツと何か言って目をキッと開き「不死鳥」と叫んだ。
その瞬間、おじいさんの手から炎が飛び出して来てその炎が大きな鳥の形を形成しだした。
すぐに炎は大きな鳥となり、羽を広げた。
「アォォォォォォァン」
大きな鳥はそう鳴いた。
すると、鳥を形成していた炎が私たちの前でぱぁん!弾けた。
弾けた炎が私たち元へ降ってくる瞬間に炎は私たちの前で溶けるように消えていった。
「これは君達の世界にはない力だと言い伝えられている。ここが違う世界だと言う事を信じてもらえたか?」
おじいさんがそう言うと周りがざわざわした。
「…本当にここは異世界なの?…家には帰れないの??」
「うわぁぁぁぁぁぁん!!」
「チート転移ktkr」
「お、俺たちはどうなるんだ…」
「家に返せよ!!」
「…」
皆んなから不満の声が漏れ出す。
よくわからないことの連続でみんなの不満も限界が来ていたのだ。
不満の声がどんどんと大きくなっていく。
初めはざわざわとしていた程度だったが今はぎゃーぎゃーと叫ぶ声すらも聞こえる。
「しずまれぇい!!!殺されたいのか貴様ら」
私たちの叫びを止めるように椅子に座っていた王冠のおじさんが怒鳴り声を上げた。
「ひっ!!」
怒鳴り声により一瞬にして場は凍ったように静かになった。
ここで私達が不満を漏らしたとしてもここは相手のテリトリー。
帯剣した男の人もいるし、先ほどの炎で焼かれてもおかしくない。
その言葉を聞いて先ほど叫んでいたものたちが黙り込んでガタガタと震えはじめた。
「まずは話を聞くのだ」
王冠おじさんはそう言っておじいさんに目を向けると、おじいさんは頷いて、この世界のこと。この世界に私たちが来た経緯を語りはじめた。
・
・
・
・
・
「……という事だ。だからワシらに力を貸して欲しい」
おじいさん…クリントンはそう言って話を切り上げた。
話の内容はこうだ。
今現在、この世界では人間同士の戦いが起ころうとしている。
戦争を起こそうとしているのはレノス王国という国で、ここアムリス帝国が狙われているとの事。
これから混乱が起こる事を見かねた聖教国ユーピテルが崇拝する神が勇者を使わせた。その勇者が私たちこのクラスの全員だという事。
そして、私たち勇者はこの世界の者よりもはるかに強い力を持っており、この戦いを止めて欲しいのだと。帝国は言った。
勿論、無理強いはしない。
協力するというなら帝国では最高級の扱いをするし、衣食住には困らない生活を送らせてくれるらしい。
それにこの世界の者よりもはるかに優れた力を持っていたとしても。まだこの世界に来たばかりで、今は普通の戦士にもやられてしまうくらいらしいのでひとまずはここにいて欲しいと。
それを聞いて反応したのが先生だった。
「話の内容はわかりました。ですが本当に俺たちにその力はあるのでしょうか?もしも無ければ協力などできませんし」
先生は私も思っていた疑問を口にしてクリントンに問う。
「その事だがそれはワシ達にはわからない」
「わからない?」
「うむ、だが君達の力は君達自身が一番知っているのだろう?たしか『すていとす』とやらで自分の力を確認ができると聞いた」
クリントンがそう返す。
「『すていとす』??……あぁ、『ステータス』ですか…って、うぉ!!」
先生がそう言った瞬間、急に先生が何もないところを見て尻餅をついた。
「どうやら確認ができたようだ」
クリントンが尻餅をついた先生を見ながらそう言った。
「は、はい。確認できました」
先生はそう言いながらついたお尻をさすりながら立ち上がる。
そして私たちの方に向いて
「みんな、声に出して『ステータス』と言って見ろ。そうすれば自分の力が把握できる」
と言った。
それを機に周りから『ステータス』という声が聞こえる。
少し怖いが私も自分の力を確認する必要がある。
なので私も言った。
「す、『ステータス』」
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