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帝国暗躍編

6.教会大清掃準備。ロイヤルナイトって言うのは大体飾りなのかもしれない

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「お礼してください!!!」


 あまり状況が掴めてないマードさん達に、俺は今教会が行なっている事を説明していった。
 マードさん達はこの嘘みたいな話を、誰も笑わずにまじめに聞いてくれた。





「もし、これが事実だとしたら清水が王都中に広まってしまったら国は大混乱になるぞ…」
 マードさんは俯きながらポツリと呟いた。

「幸い、清水は広まり始めたばかりで、俺が見たところひどい状況になっている人はいなかったです。だけど…」

「早急に、対処しないといけないな…」
 マードさんは眉をぐっと狭めながら言う。

「これだけの大ごとだ。俺たちが国に報告すればすぐに対処してくれる」
 と、カルロンさんが

「いや、むしろこれだけの大ごとだと対処しづらくないか?相手は教会だぞ?どっかの小さな店とわけが違う。
 しかも、大元には聖教国だっているんだ。むやみに事を荒だてて戦争になったら目も当てられない」
 とオーネスさんが

「それを考えるのは俺たちじゃない。この国だ。とにかくこの事を報告しなければ、結局はやばいことになるはずだ。とにかく急いで大臣の所へ行こう」
 とハラストさんが言った。

 先程楽しくご飯を食べてたとは思えないほど重い空気である。
 俺はそんな"叫びの剣"の会議に挟まれて話を聞いていた。



 しばらく話し合ってとにかく王城へ報告しに行くと言うことになり、俺も連れてかれることになった。





 そして今現在、俺はレノス王国、パラティヌス城の中の一室にいる。

 その部屋にいるのは、"叫びの剣"の皆さんと俺。

 そして、目の前の若干白髪の混じったメガネちょび髭のナイスガイがいた。

 マードさん達がその人の事をダイジン、ダイジン。と呼んでいた
 ん?何かの間違いなのかな。大臣じゃないよな?偉い人ってそんな急にアポなしで会えるの?

 なんて事を思っていると、マードさんが代表して、教会の事をダイジンと呼ばれてる人に話していた。




「ほう、それは本当か」
 と、ダイジンは無表情に睨みを効かせながらマードさんに向かって問う。

 少しビクッとするマードさん。

「はい。この少年がそう申しておりました」

 俺を売るマード。

「ほう、お前は…」

 無表情の睨みはマードさんからターゲットを変えて俺になった。

「え、銀級冒険者のゆうたです!」

「ふむ、ゆうた殿この話は本当か?」
 ダイジンは睨みながらそう聞いてくる。

 怖すぎだろ!!目つき悪いな!
 なんて心の中で思いながら俺はしっかりと答える。

「本当です」

 俺がそう言うと、ダイジンは俺を睨んだまま、しばらく無言になった。

「…」

「…」

「よかろう。ならば、騎士を出そう」
 ダイジンがそう言うと、マードさん達が何やら驚いていた。

「兵ではなく?騎士ですか?」
 なにか、引きつったような声でマードがダイジンに向かって言う。

「ああ、これだけの大ごとだ。騎士を出さねば国の示しがつかないからな。もちろんお前達にも同行してもらう。奴らが役不足になる可能性があるからな」

 ダイジンがそう言うと、マードさんは明らかに肩を落としながら

「わかりました…」
 と言っていた。

 なんでそんなにだるそうな顔してるんだ?

「では、決行は三日後の朝にする。そしてゆうた殿は証拠品として清水を二日以内に提出するように」
 俺を睨みながら言う。

「わかりました」

「では、解散」

 ダイジンがそう言うと、叫びの剣達と俺はすぐに部屋から出て、王城からも出た。





 王城から出た俺たちは、少し荷が下りてホッとしていた。

「いやぁ、ゆうた君、怖かっただろう」

 王都の街並みを眺めながら歩いていると、マードさんが話しかけてきた。

「怖かったですよ。なんであんな睨んでくるんですか」
 俺がマードさんに向かってそう言うと

「はっはっはは!だろ?大臣はいつもあのような目つきでね。別にゆうた君に対して怒ってるわけじゃないよ」

「詳しいですね」

「まあ、俺たちはあの大臣のおかげで国家公認になったようなもんだからな」
 とハラストさんが割り込んで言った

 俺と別れてから"叫びの剣"は色々あったらしい。

 そんなこんなで歩いていたら、冒険者ギルドに着く頃には、夕方になっており、そこで別れることにした。

「では三日後の明朝、王城の前で落ち合おう」
 マードさんが言う

「わかりました」
 俺がギルドを出ようとしたとき

「あ、ゆうた君!言い忘れてたけど、これくらいじゃお礼になってないからなー!」
 とマードさんに言われてしまった。

 お人好しだな!!







三日後。

 俺は早起きして、朝ごはんを作り、ニルファさんより早く家に出て、王城へ向かった。


 俺が王城に着いた頃には"叫びの剣"はもうすでにいた。

「おはようございます、早いですね!」
 と俺は元気よく言うと

「まあ、一大任務だからな。これくらいの時間には来るさ」
 とマードさんは言うが何やら元気がない。というか、"叫びの剣"の全員のテンションがなんだか低い。

 なんでこんなテンション低そうなんだ?

「あの、なんか元気無さそうですけど、大丈夫ですか?」

 俺がマードさんに聞くと「あぁ大丈夫だ」と弱々しい微笑みを浮かべながら答えた。

 全然大丈夫じゃないじゃん!!どうした叫びの剣!!

 と思っていると。王城の方から何やら音が聞こえてきた。

…ガチャ……

…ガチャ…ガチャ…

ガチャガチャガチャ

ガチャガチャガチャガチャ!

 う、うるせぇ!!今早朝だぞ!!近所迷惑考えろ!!

 と思わせる音が鳴り響き、そちらの方を見た。

 そこにはピンピカの超かっこいい鎧をまとった騎士達がいた。

 騎士達は俺とマードさんの前で止まると、何故か一名だけ馬に跨っている金髪の騎士が俺たちに話をかけてきた。

「君たちが今日の任務の案内役か。この僕がっ!レノス王国の第五騎士団隊長のエルッソ・ストンパーナだっ!今日は第五騎士団の精鋭を十名を従え任務に当たるっ!」

 馬に跨ってる金髪が髪の毛をいじりながら。テンションが高そうに挨拶をしてきた。

「あ、よろしくお願いします!俺の名前は…」

「いやっ!自己紹介は不要だっ!僕は無駄な事を覚えるのを嫌うんだ」
 エルッソはいちいちシュピンっとポーズを取りながらそう言ってきた。

 さいですか。

「了解です」
 俺はただ一言そう答えといた。

「うむ、ではっ!皆の者っ!悪を成敗しに行こうかっ!さあ、案内を頼む」

 俺とマードさん達は騎士団を率いて教会へ向かうことになった。






 俺たちと騎士団が教会へ向かっている途中。
 あたりはもうかなり明るくなって、人もポツポツと歩き始めていた。

「マードさん。面白い人ですねあの人」
 ガチャガチャ
 俺はマードさんと共に前を歩いていた。
 ガチャガチャ
「ああ、ゆうた君にはそう見えるか?君は純粋だね。俺はもうあの人達が面白いようには見えない」
 ガチャガチャ
「どうしてですか?」
 素直に疑問に思った。
 ガチャガチャ
「どうして、か難しい質問だな…そうだな。まず冒険者と騎士というのは仲が悪いんだ」
 ガチャガチャ
「そうなんですか?」
 ガチャガチャ
「…ああ、仲が悪い理由は彼らの身分にある」
 ガチャガチャ
「身分…ですか?」
 ガチャガチャ
「彼ら騎士団は貴族が多いんだ。それでもって彼らは俺たち冒険者の事を野蛮奴らだと言う。だから冒険者もお高く止まっている騎士団を毛嫌いしてるんだ」
 ガチャガチャ
「ほう…」
 ガチャガチャ
「もちろん、俺たち"叫びの剣"は騎士団を嫌っていない。だが、ああいった態度は俺たちを見下してるからできるんじゃないかって思ってしまうんだ」
 ガチャガチャ

 そういう事か。

 そんな会話をしていると、いつの間に大きな教会がみえてきた。

「エルッソ殿。教会の方へ到着します」
 マードさんがエルッソに教会を指差してそう報告する。

「わかったっ!騎士達よっ!悪の根城についたぞっ!準備はいいかっ!」
 エルッソは馬に跨りながら腰にさしていた剣を抜き天へ向けてそう叫んだ。

「…」

 だが、誰も返事をしていなかった。

 エルッソは不思議に思い、他の騎士達の方へ向くと、騎士達は膝に手を立ててハァハァと息を切らせて、たたずんでいるのを見た。

「なっ!我精鋭達っ!どうしたんだっ!まさかもう既に敵の術中にはまっているっていうのかっ!」
 と、何やらエルッソが叫び出した。

 そう、この騎士団は馬に跨っていた団長以外はもう既に使い物にならないくらい疲れているのだ。
 重たい鎧を身につけながら王国から教会まで歩いただけで息が上がり、膝が笑っているのだ。

 この光景を見て、俺の中のカッコいい騎士像は音を立てて崩れ去っていった。

 まだ、突撃前だというのに騎士団はほぼ壊滅してしまったのだ。
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