上 下
83 / 133
迷宮都市編

37.迷宮から帰還。経過していた時間。

しおりを挟む

 俺の体が一瞬光に包まれた。そう思っていたら迷宮の百階層から、あっと言う間に景色が二ヶ月ぶりに見ていなかった迷宮都市に変わっていた。

 いや、そんなことより、スタンピードの原因がニヌルタってことがわかった。
 俺がそれを叱ろうとしたら、あの男、俺をここに転移させやがった!!

 まあ、正直のところそこまで怒ってはいない。

 大規模な災害ではあったが、ラビに被害は出ていないし、イーストの不評は少しは回復したからだ。
 結果的に魔物の素材も手に入って、ラビとしてはプラスとも言えるだろう。

 まあ、だからといって許されるわけではないと思うがな。結局、死者は出ているし。






 俺はシリルさん達が無事なのか確認する為にイーストに向かっていた。

 俺は念のため気配を殺しながらラビの街並みを見ながら歩いていた。

 ラビはとても賑わっていた。

 露店ではいろんな人がわちゃわちゃとしているし、二ヶ月前にはあまり通っていなかった冒険者はここが冒険者の国だとばかりにたくさんいた。

 短い期間でだいぶ様変わりしたなぁ。

 銅級くらいの冒険者がたくさんいることから、セントラルとのいざこざも終わったようにも思える。

 そんなことを考えながらイーストの前まで来ていた。

 イーストを見るとたった二ヶ月空けていたといえど実家のような安心感を感じた。

 イーストの中は相変わらず酒の匂いが香っていて、昼にもかかわらず人相の悪い男達が酒を煽っていた。

 うーん。安心感!

 そんなことを感じながら、受付に向かおうとして、目線を受付の方へやると、何やら見たことある金髪の三人組が受付で話していた。

 シリルさん達だ!!
 よかった!生きてた!うぉおおおおおお!

 気配を殺している俺にシリルさん達は気づいておらず、話し込んでいるようだったので、ゆっくりと近づいて脅かしてやろうと考えついた。

 俺はニヤニヤしながら、シリルさん達の前は抜き足差し足忍び足で近づいていった。

「そうですか…まだ、見つかってないですか…」

 シリルさんは何かを探しているらしく、見つかっていないことを声でわかるくらい悲しんでいた。

「ギルドも全力を尽くして探していますが、四十九階層となると…行ける方が『クリマ フォレ』の皆さましかおりません。本当にすみません」

 何やら雰囲気が悪い。

 あ、受付の人はレイラさんだったのか。

 そして、何かを話しの内容からして四十九階層でシリルさんは何かを落としたみたいだ。

 それって、俺のせいじゃない!?間違いなく風魔法で吹っ飛ばした時に落としてるだろ!!
 しかも、あの後ニヌルタはシリルさん達を迷宮から出したって言ってたから、その落し物を拾うに拾えなかったのかもしれない。

 やべぇ…脅かすとか、そう言う空気じゃないじゃん…

 謝ろう。

 俺がそう覚悟を決め、話かけようととした。

 その瞬間、アシルとサニーがレイラさんとシリルさんに向かって、悲しそうな声で言った。

「俺たちしか行けないならもう一度、俺たちで四十九階層に行こう。俺はを見つけるまで諦められない」

「私もなかもりくんを探し出したい」

「え。」

 俺は思わず声が出た。

 その声に反応して、シリルさん達はこちらに顔を向けた。

「「「え。」」」

 えっ。俺達は互いに顔を向けながら石化されたかのように体が固まった。

 そして…

「「「えええええぇぇぇぇぇ!!」」」

 ギルド中に声が響き渡った。あのシリルさんですら大声で叫んでた。

「ゆ、ゆ、ゆうたくん!?」
 シリルさんはめちゃくちゃに動揺していて、え、本物!?みたいな目で見てくる。

「ど、どう…もっ!?」

  挨拶をしようとしたら、二つの衝撃か俺の体から感じた。

 アシルとサニーが俺に飛び込んで来ていた。

「お、お前何してたんだよ!今までえぇぇ!!」

「心配したんだよぉぉぉ!!」

 涙とか鼻水で濡れたアシルの顔が俺の右肩に擦りついてくる。

 サニーも、俺の着ている服をぐいっとあげ、まるでハンカチのように涙を拭いていた。

 いや!俺の服はハンカチじゃねぇ!!

 と思いながらも落ち着くまでそのままにした。






 サニーとアシルが落ち着いたところで、シリルさん達がギルドの二階の部屋を借りて、しばらくお互い話し合った。


 俺はシリルさん達を吹っ飛ばした後の事を話した。
 サニーは驚きながらも話を聞いてくれたのだが、シリルさんとアシルは俺の話を聞いている途中で目がキラッと光っていた。
 みんなこの話を信じてくれるみたいだった。

 その後、シリルさん達は俺が吹っ飛ばした後の話をしてくれた。

 話を聞いて、俺は驚いた。

 まず俺はシリルさん達と迷宮攻略した期間を含めて、六ヶ月もいなかったらしいのだ。
 俺は倒れて目覚める間に四ヶ月も気を失っていたことになる。
 たしかに、人が軽く死ぬような一撃を二発くらったのだから、それくらいかかってもおかしくないのかもしれない。
 二発目なんて、殆ど俺、死んでたし。

 そして、シリルさん達は俺がいなかったラビの、六ヶ月を教えてくれた。


 セントラルのギルドマスターは、五十万の軍勢、戦えなくなる金級冒険者や銀級冒険者を見て魂が抜けたようになり、ギルドとしての役割を失い、ノース、ウェストが復活し、サウスもセントラルの傘下から外れた。

 そのおかげで、銅級冒険者も戻ってきたらしい。

 イーストもセントラルが機能しなくなってから悪評を聞くことがなくなり、徐々に信用を取り戻しつつあるみたいだ。

 こうしてラビは賑やかな状態に戻っていったらしい。

 シリルさん達と話し終えてから、ギルドに迷宮の神の事は伏せて、生還報告して、久々のトコトコで寝ることにした。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界で農業をやろうとしたら雪山に放り出されました。

マーチ・メイ
ファンタジー
異世界召喚に巻き込まれたサラリーマンが異世界でスローライフ。 女神からアイテム貰って意気揚々と行った先はまさかの雪山でした。 ※当分主人公以外人は出てきません。3か月は確実に出てきません。 修行パートや縛りゲーが好きな方向けです。湿度や温度管理、土のphや連作、肥料までは加味しません。 雪山設定なので害虫も病気もありません。遺伝子組み換えなんかも出てきません。完璧にご都合主義です。魔法チート有りで本格的な農業ではありません。 更新も不定期になります。 ※小説家になろうと同じ内容を公開してます。 週末にまとめて更新致します。

世界に一人だけの白紙の魔眼 ~全てを映す最強の眼~

かたなかじ
ファンタジー
前世で家族に恵まれなかった山田幸作。 不憫に思った異世界の神が自らの世界に招いてくれる。 そこは剣と魔法と『魔眼』の世界。 与えられたのは特別な魔眼。 求めたのは彼を大事に思ってくれる家族。 異世界でアレクシスとして生を受けた彼は、白紙の魔眼という眼をもって生まれる。 それはなんの力も持たない魔眼だと言われていた。 家族はそれでも彼を劣っているとは思わない。 彼も神を信じ、いつか覚醒する日が来ると信じ眼に魔力を流し続けていく。 数年後、ついに特別な力に目覚めていく。 全ての魔眼を使う白紙の魔眼! ──世界に一人だけの魔眼で最強の道を行く!

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?

夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。 気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。 落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。 彼らはこの世界の神。 キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。 ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。 「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜

ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった! 謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。 教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。 勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。 元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。 力を持っていても順応できるかは話が別だった。 クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。 ※ご注意※ 初投稿、試作、マイペース進行となります。 作品名は今後改題する可能性があります。 世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。 旅に出るまで(序章)がすごく長いです。 他サイトでも同作を投稿しています。 更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

異世界召喚された回復術士のおっさんは勇者パーティから追い出されたので子どもの姿で旅をするそうです

かものはし
ファンタジー
この力は危険だからあまり使わないようにしよう――。 そんな風に考えていたら役立たずのポンコツ扱いされて勇者パーティから追い出された保井武・32歳。 とりあえず腹が減ったので近くの町にいくことにしたがあの勇者パーティにいた自分の顔は割れてたりする? パーティから追い出されたなんて噂されると恥ずかしいし……。そうだ別人になろう。 そんなこんなで始まるキュートな少年の姿をしたおっさんの冒険譚。 目指すは復讐? スローライフ? ……それは誰にも分かりません。 とにかく書きたいことを思いつきで進めるちょっとえっちな珍道中、はじめました。

異世界で魔法使いとなった俺はネットでお買い物して世界を救う

馬宿
ファンタジー
30歳働き盛り、独身、そろそろ身を固めたいものだが相手もいない そんな俺が電車の中で疲れすぎて死んじゃった!? そしてらとある世界の守護者になる為に第2の人生を歩まなくてはいけなくなった!? 農家育ちの素人童貞の俺が世界を守る為に選ばれた!? 10個も願いがかなえられるらしい! だったら異世界でもネットサーフィンして、お買い物して、農業やって、のんびり暮らしたいものだ 異世界なら何でもありでしょ? ならのんびり生きたいな 小説家になろう!にも掲載しています 何分、書きなれていないので、ご指摘あれば是非ご意見お願いいたします

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

処理中です...