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迷宮都市編
37.迷宮から帰還。経過していた時間。
しおりを挟む俺の体が一瞬光に包まれた。そう思っていたら迷宮の百階層から、あっと言う間に景色が二ヶ月ぶりに見ていなかった迷宮都市に変わっていた。
いや、そんなことより、スタンピードの原因がニヌルタってことがわかった。
俺がそれを叱ろうとしたら、あの男、俺をここに転移させやがった!!
まあ、正直のところそこまで怒ってはいない。
大規模な災害ではあったが、ラビに被害は出ていないし、イーストの不評は少しは回復したからだ。
結果的に魔物の素材も手に入って、ラビとしてはプラスとも言えるだろう。
まあ、だからといって許されるわけではないと思うがな。結局、死者は出ているし。
・
・
・
・
俺はシリルさん達が無事なのか確認する為にイーストに向かっていた。
俺は念のため気配を殺しながらラビの街並みを見ながら歩いていた。
ラビはとても賑わっていた。
露店ではいろんな人がわちゃわちゃとしているし、二ヶ月前にはあまり通っていなかった冒険者はここが冒険者の国だとばかりにたくさんいた。
短い期間でだいぶ様変わりしたなぁ。
銅級くらいの冒険者がたくさんいることから、セントラルとのいざこざも終わったようにも思える。
そんなことを考えながらイーストの前まで来ていた。
イーストを見るとたった二ヶ月空けていたといえど実家のような安心感を感じた。
イーストの中は相変わらず酒の匂いが香っていて、昼にもかかわらず人相の悪い男達が酒を煽っていた。
うーん。安心感!
そんなことを感じながら、受付に向かおうとして、目線を受付の方へやると、何やら見たことある金髪の三人組が受付で話していた。
シリルさん達だ!!
よかった!生きてた!うぉおおおおおお!
気配を殺している俺にシリルさん達は気づいておらず、話し込んでいるようだったので、ゆっくりと近づいて脅かしてやろうと考えついた。
俺はニヤニヤしながら、シリルさん達の前は抜き足差し足忍び足で近づいていった。
「そうですか…まだ、見つかってないですか…」
シリルさんは何かを探しているらしく、見つかっていないことを声でわかるくらい悲しんでいた。
「ギルドも全力を尽くして探していますが、四十九階層となると…行ける方が『クリマ フォレ』の皆さましかおりません。本当にすみません」
何やら雰囲気が悪い。
あ、受付の人はレイラさんだったのか。
そして、何かを話しの内容からして四十九階層でシリルさんは何かを落としたみたいだ。
それって、俺のせいじゃない!?間違いなく風魔法で吹っ飛ばした時に落としてるだろ!!
しかも、あの後ニヌルタはシリルさん達を迷宮から出したって言ってたから、その落し物を拾うに拾えなかったのかもしれない。
やべぇ…脅かすとか、そう言う空気じゃないじゃん…
謝ろう。
俺がそう覚悟を決め、話かけようととした。
その瞬間、アシルとサニーがレイラさんとシリルさんに向かって、悲しそうな声で言った。
「俺たちしか行けないならもう一度、俺たちで四十九階層に行こう。俺はゆうたを見つけるまで諦められない」
「私もなかもりくんを探し出したい」
「え。」
俺は思わず声が出た。
その声に反応して、シリルさん達はこちらに顔を向けた。
「「「え。」」」
えっ。俺達は互いに顔を向けながら石化されたかのように体が固まった。
そして…
「「「えええええぇぇぇぇぇ!!」」」
ギルド中に声が響き渡った。あのシリルさんですら大声で叫んでた。
「ゆ、ゆ、ゆうたくん!?」
シリルさんはめちゃくちゃに動揺していて、え、本物!?みたいな目で見てくる。
「ど、どう…もっ!?」
挨拶をしようとしたら、二つの衝撃か俺の体から感じた。
アシルとサニーが俺に飛び込んで来ていた。
「お、お前何してたんだよ!今までえぇぇ!!」
「心配したんだよぉぉぉ!!」
涙とか鼻水で濡れたアシルの顔が俺の右肩に擦りついてくる。
サニーも、俺の着ている服をぐいっとあげ、まるでハンカチのように涙を拭いていた。
いや!俺の服はハンカチじゃねぇ!!
と思いながらも落ち着くまでそのままにした。
・
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・
・
サニーとアシルが落ち着いたところで、シリルさん達がギルドの二階の部屋を借りて、しばらくお互い話し合った。
俺はシリルさん達を吹っ飛ばした後の事を話した。
サニーは驚きながらも話を聞いてくれたのだが、シリルさんとアシルは俺の話を聞いている途中で目がキラッと光っていた。
みんなこの話を信じてくれるみたいだった。
その後、シリルさん達は俺が吹っ飛ばした後の話をしてくれた。
話を聞いて、俺は驚いた。
まず俺はシリルさん達と迷宮攻略した期間を含めて、六ヶ月もいなかったらしいのだ。
俺は倒れて目覚める間に四ヶ月も気を失っていたことになる。
たしかに、人が軽く死ぬような一撃を二発くらったのだから、それくらいかかってもおかしくないのかもしれない。
二発目なんて、殆ど俺、死んでたし。
そして、シリルさん達は俺がいなかったラビの、六ヶ月を教えてくれた。
セントラルのギルドマスターは、五十万の軍勢、戦えなくなる金級冒険者や銀級冒険者を見て魂が抜けたようになり、ギルドとしての役割を失い、ノース、ウェストが復活し、サウスもセントラルの傘下から外れた。
そのおかげで、銅級冒険者も戻ってきたらしい。
イーストもセントラルが機能しなくなってから悪評を聞くことがなくなり、徐々に信用を取り戻しつつあるみたいだ。
こうしてラビは賑やかな状態に戻っていったらしい。
シリルさん達と話し終えてから、ギルドに迷宮の神の事は伏せて、生還報告して、久々のトコトコで寝ることにした。
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