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迷宮都市編
閑話.乙女のモテ期。日常が忙しい
しおりを挟むゆうたがいなくなってから五年と半年ほどが経った。
夏、秋と季節を超え、今は冬の十二月。
気候も微妙な日が多くなり、すでにカーディガン、ブレザー、マフラー、手袋を装備しなければいけない寒さである。
最近はさらに寒い日が続いていて、クリスマスには雪が降るんじゃないかって言われている。
そんな寒い日は家を出たくないなー。
なんて事を考えながら学校に向かって歩いていた。
「夏目ー、何かんがえてるの?」
ボケッーっとしてたら親友の秋に話をかけられた。
「寒いから家でたくないなーって考えてた」
私は今考えてた事を言った。
「確かに、最近寒さが増してきたよね。クリスマスには雪が降るかもって朝ニュースでやってたよ」
「それ、私も見た。だからクリスマスの日はうちでケーキとか用意してパーティしようよ!」
私と秋はいつもクリスマスの日一緒に遊んでいる。
去年は友達のまなみと桜子も含め女子四人で遊園地に行って遊んだ。
今年はどうなるかわからないが秋と遊ぶことは確実だ。
「それいいね!まなみ達も呼んでのんびりしよー!」
そんな会話をしながら学校へ向かっていた。
「おはよー!夏目ちゃん!秋ちゃん!」
教室へ着いて早々にテンションの高い声が響いた。
まなみだ。
「おはよ!まなみ!」
「まなみちゃんおはよう」
まなみはとても元気な子だ。クラスのムードメーカーで、いつも場を盛り上げてくれたりする。
さらに、2学期の期末試験もおわって、テンションがグイーーンと上がってより元気だ。
「夏目ちゃん、秋ちゃんおはようございます。今日も時間通りですね」
「桜子、おはよー!」
「桜子ちゃんおはよう」
話しかけてきたのは同じクラスの友達の能楽桜子だ。
桜子は能楽財閥の令嬢で本物のお嬢様だ。
なんでこんなふつうの中学校にいるのかよくわからないが、すごい子なのである。
さらに桜子はお淑やかな女の子で美少女だ。
整えられた髪はサラッサラのストレート、目はくりっとしててもう、それはそれは可愛いのだ。
教室で座っている姿を見ると彼女の周りにお花が咲いている幻覚が見えるくらい美少女で、彼女が初めて私に笑いかけた時私は不覚にもきゅんとしてしまった。
四人でしばらく、話していると、私たちの目の前のドアが開いて2人の男子が入ってきた。
「みんなおはよ!」
「おはよう」
そう言って入ってきたのは、学校一の人気者の上村くんともてもての近衛くんだった。
「おはよー、上村くん近衛くん」
大体この六人でいつも一緒にいる事が多い。
六人でご飯を食べたり、放課後遊んだりしている。
だけど、ここ最近は六人でお昼を食べれなくなっている。
その理由は…
・
・
・
・
今は三時間目の休み時間。
「あの!八条さん!!!」
私がロッカーで次の時間の教科書の準備をしていると男の子から話をかけられた。
「ん、何?浅井くん」
「昼休み!大事な話があるんだけど!二人で話せないかな!な、中庭で待ってるから!それじゃ!」
そう言って男の子、浅井くんは走り去っていった。
「夏目、また呼ばれたの?最近多いね?」
秋が私に近づいてきてそう言ってくる。
「十二月入ってこれで三度目だよ…」
そう、私は最近お昼休みだったり、放課後だったりと男の子から呼ばれる事がある。
その目的が…
・
・
・
「好きです!付き合ってください!!」
どうやら告白らしいのだ。
夏休みが明けてしばらく経った頃から告白をされるようになったみたいだ。
元々同じクラスだった人だったり話した事がない人だったりと色々な人が私に告白してきた。
毎日鏡を見ているので気づかなかったが、私は可愛いらしい。
ゆうたに『女じゃねぇ!』とか『ぶすー!』とか言われていたので気づかなかった。
今の顔をゆうたに見せたらなんて言ってくれるんだろうか。
可愛いとか、言ってくれるのかな。
そう考えただけで顔に熱がこもってしまう。
うぅ、恥ずかしい!ゆうたに顔見せたくない!!
「あの、八条さん?」
頭を下げていた浅井くんが私の顔を伺うように見てきた。
はっとした私は浅井くんに失礼なことをしたと思いながら、浅井くんの告白を丁重にお断りした。
そうして、教室に戻ってくる頃には残り昼休みの時間は五分になるのだ。
呼び出された日はいつも、急いで昼ごはんを食べて、教科書の準備をして、授業を受けることになる。
放課後になり、私と秋と近衛くんで帰ることになった。
上村くん、まなみは部活。桜子は車で帰って行くので。
大体この三人で帰ることになる。
最初、私と秋の二人で帰っていたが。ゲームセンターの一件から近衛くんが何かあったら危ないという理由で一緒に帰ることになった。
ちなみに近衛くんの実家は空手の道場なので部活動はしていない。
「近衛くんってさ、好きな人とかっている?」
私は帰宅途中ふと近衛くんに聞いてみた。その瞬間、秋は興味ないのか、関わらないように少し私から離れた。
「な!いきなりなんだ!」
近衛くんはとてもびっくりしていた。
その反応、好きな人がいるな!!
「へぇ、いるんだ」
私がそう言うと
「な、なんでわかるんだ!」
焦ったように近衛くんが答えた。
「本当にいるんだね(笑)」
「な、謀ったな!夏目!」
「ふっふっふ!私に見抜けないものなんてないのだよ!近衛くん!」
「夏目!」
私の名前を怒ったように近衛くんは呼んだ。
「まあまあ、落ち着きなさい。別に近衛くんに好きな人が誰かなんて聞くつもりはないよ」
「じゃあ、なんで聞いたんだよ!好きな人がいるかなんて!」
「いやぁ、男子ってどんな思いで告白してるんだろって思って!」
「な、なんだ、そう言うことか…」
近衛くんは少し落ち着きを取り戻したのかふぅ…と言って、答えてくれた。
「俺も告白した事がないからあまりよくわからないが、めちゃくちゃ覚悟してると思うぞ」
「覚悟?」
「あぁ、告白すれば良くも悪くも今の関係が終わるからなぁ。勇気と死ぬ覚悟が必要だと思うな」
「そんなに頑張ってるんだ」
「そうだな…」
そんな会話をして、秋と私は近衛くんに送ってもらって帰った。
家に着いてから私はニヤニヤしていた。
「『告白には勇気と死ぬ覚悟が必要』かぁ」
五年半前のゆうたと会った最後の日。
あの時ゆうたは守ってくれるって言ってくれた。
あれって告白だよね??
ゆうたも勇気とか覚悟とか決めて言ってくれたんだ!!
早くゆうたを見つけなきゃ!ムフフ!!
私はゆうたの家から取ってきた枕に顔を埋めてそんなことを考えていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「くそっ!夏目に悪い虫がつかない様に見張るのは俺だけで充分だってのに!!あの近衛とかいう奴が邪魔しやがる。夏目の笑顔だって向けられやがって」
誰かがブツブツと独り言を呟いていた。
「夏目、夏目、夏目!まだ、会えないけど、これからはいっぱい会うことになるんだ。まだ、我慢だ…」
そんな声が薄っすらと響き空へ消えた。
夏目の家の前で。
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