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迷宮都市編

33.迷宮に引きこもる。言うに言えない

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 涙やその他諸々で服をビシャビシャにした後、少し落ちいて、昼ごはんを食べて、シリルさん達と一緒にイーストのギルドへ行った。

 3ヶ月分の依頼を受ける為である。

「はぁっ、はぁっ、イーストってこんなに遠かったか?…はぁ~」

 アシルは手を膝についてイーストのギルドの中で息を整えている。

 昼ごはんを食べてからイーストに行くまでに、様々な女性に話しかけられていたからだ。

 アシルやシリルさんを見た女性達は目の形がハートになっていた。
 きゃー!きゃー!というアイドルが浴びるような声援を受けていた。

 アートの世界の有名人とかプライベート見られたらこんな感じなのかな。

 そう言えばウーチューバーのYAMIKINさんがプライベートはいっぱい話しかけられるって言ってたな。
 どうでもいいね。

 ちなみにサニーもすごい人気だったがナンパなれしているのか、スッスッと避けていた。

 俺は気配を殺して人に紛れていた。ちょっと目が腫れてたりするので、恥ずかしいから誰にも絡まれたくないのだ。

 そんなこんなでやっとギルドについたのだ。

「アシルも兄様も大丈夫?」

 サニーがアシルとシリルさんを心配そうに見つめていた。

「サニアはよく、あんな大勢に押し寄せられていたのに、平気な顔してるな!」

「僕も流石にこんなに見られると思ってなかったから、少し疲れたかな」

 なんて会話をしているのを眺めながら俺は受付のレイラさんの所へ行って、依頼を紹介してもらい、それを受けて、シリルさん達の元へ戻った。

「あぁ、ゆうたが依頼を取ってきたらまた外に出なきゃいけないのかよぉ!!やだ!!俺は外に出た「…アシル」ッヒィッ!!」

 俺は何か騒いでるアシルの耳元でため息を吐くように呟いた。
 そのあとシリルさんの方に向き直りシリルさんに話しかけた。

「シリルさん、依頼取ってきたのでトコトコに戻って明日に備えましょう!!」

「ゆうた!話しかけるなら普通に話しかけろよ!気配殺すな!このやろう!」

「いや、ごめん。つい口が滑った」

 俺はなぜアシルにこんな事をしたかというのは、俺がさっき涙で目を腫らして鼻水を出してる顔を見てアシルが大爆笑していたからだ。
 お返しだ!

「よし。依頼も受けられたし、食量もゆうた君のアイテムボックスに入れた。準備万端だね」

 そうシリルさんが言って俺達はイーストから出て、トコトコに向かった。

 トコトコでは、夜ご飯を食べながら迷宮での方針や、もしもはぐれた時などの事話し合い、早めに寝て明日に備えた。





 そして今、俺達はラガシュ迷宮の前にいる。

 時刻は朝の五時頃。

 迷宮を守る兵士達も眠そうだ。

 俺達は迷宮に飛び込んだ。



「早めに来たから一番乗りだね!ゆうた君!これからどのくらい奥の階層まで行けるか楽しみだね!何か遺跡の秘密とかが分かったりするのかな!!3ヶ月間よろしくね!」

「は、はい」

 アシルとサニーが眠そうにしているのに対してシリルさんは妙にハイテンションだ。
 遺跡と魔法の事となると眼の色が変わる。
 それに気圧されながらもなんとか返事をして迷宮を進んでいった。


 昼になる頃には十階層にたどり着いた。
 この層まで行くのは全然慣れているので難なくついて、層の安全地帯に行き、昼ごはんを食べていた。

「しかしゆうた君はすごいね!アイテムボックスも持ってて!3ヶ月間飢えの心配なく進めるし素材だって持つ必要も無くなるし!最高だね!」

 機嫌のいいシリルさんがそんな事を言ってきた。

「…ん、まあ、役に立てて良かったです」

 俺は少し曖昧な返事をしてしまった。

 だって、シシオウの事とか〈センス〉の事とか俺の事情とか話してないもん!
 いつか話そう!いつか話そう!っていつも思って言いそびれてここまで来てしまった!

 シシオウも1ヶ月くらい出してやれてない!絶対怒ってるよ!〈センス〉があればベッドも布団もご飯も食べれる!

 言いたい!けど!タイミングがもう…
 もしも…

『俺、異世界から来た迷い人何だよね』

『え、何でゆうたはそんな大事なこと黙ってたんだよ。一緒に過ごした仲間にずっと黙ってるとか最低だな!』

『なかもりくん、ずっと黙ってたんだ…』

『君は他の世界から来たのかい!?そこにはどんな魔法があるの!?魔物はどんな感じなの!?それって時空間魔法で飛んできたの!?もしかして神様が飛ばしてきたの!?…』

 なんて事が起きるかもしれない。実に不安だ。隠し事をしているつもりはないが言うに言い出せない。

「…うた君?」

「…」

「ゆうた君?」

「は、はい!」

「どうしたんだい?手が止まってるけど」

「あ、いや大丈夫です!考え事してて…」

 ドキッとして変に答えてしまった。

「お?どうしたゆうた?なんか変なもんでも食ったのか?」
 とアシルは肉の串焼きを食べながらあまり気にしていなさそうに聞いてきた。

「なかもりくん大丈夫?体調悪いならもう少し休む?干した果物見たいな顔してるけど」
 サニーは俺の事を心配してくれているみたいだった。

 シリルさん達は優しいなぁ。

 そこから俺はなんでもないよっと言って昼を食べ終え、ふつうに戻り、全員が食べ終わるとシリルさんが「行こうか」と言って、また迷宮探索に潜ることにした。

 そして俺は決意を固めた。


 よし!夜言うぞ!夜になったら、俺の正体と力について言うぞ!絶対言ってやるわ!シリルさんたちに隠し事なんて良くないからな!

 そう固く決めて、迷宮探索を続けた。

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