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迷宮都市編
30.スタンピード翌日。都市は賑やかであります
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スタンピードの日から一日が経ち、都市はさらに盛り上がっていた。
俺は昨日起きた事について考えていた。スタンピードの規模の大きさ、魔女の介入、ゴルアルの死。
頭の中でずっと考え続けても、何も結論は出なかった。
スタンピードの規模の大きさについては、原因が全く掴めない。異常なほど魔力が溜まっていて魔物が大量発生していた。
通常はあれだけの魔力は自然発生しないし、あれほど強い魔物も生まれない。何かがある事には間違いないが、何が原因かは全くわからない。
変な言葉を喋る大きい骨もいた。
魔女の介入についてもわからない。だが、アムリス帝国が怪しい動きをしているのはもともと話を聞いていたし、ブリードの村でも魔女が現れている事から、近々何かが起こる事は否応でもわかる。
そしてゴルアルの死。
殆どの考え事はこの事で頭がいっぱいだった。
俺の不注意で化け物に変えてしまい。俺が自らの手で殺した。
助ける事が出来た人だ。
スタンピードだって止める事が出来たし、俺が魔女の意図に気づいていれば防ぐ事が出来た。
シューニャの人間は人が死ぬ事に関してニュースにすらないほど意識されていない。
アートでは、人が死ねばニュースになるし、身内であれば葬式だってする。
シューニャの世界でも身内が人を弔う事もするが、儀式のような事はしないし、多くの人間が集まる事だって滅多にない。
俺はシューニャの人間ではない。
アートの人間だ。
それほど死を簡単に受け入れられるほど、俺は強い人間じゃない。
しかも、姿は化け物だったとはいえ、俺の手で知っている人間を殺したのだ。
平気でいられるわけがない。
俺はどう責任を取ればいいのか。
人を殺してしまったという後悔。
これから何をしていけばいいのか。
そんなような事がずっと頭の中でグルグルと回っていた。
俺はこのままでは何も結論が出ないと思い、とりあえず外に出る事にした。
トコトコから外に出ると多くの人が盛り上がっていた。
道端で雄叫びをあげながらバク転している人もいた。
そんな人を見やり、俺はイーストのギルドへ向かった。
イーストのギルドへ向かっていると、いつもの道がかなり騒がしい事に気づいた。
いつもイーストに近づいていくにつれて、人通りが少なくなり、スラムのようになるのに対して、今はパレードでもやってるのかと思うほど賑やかだった。
時間をかけて、多くの人波をかき分けてイーストに到着すると、中にはイーストとは違う冒険者が数多くいた。
冒険者たちは受付に並んでいて、何かをしている。
イーストの冒険者達も戸惑っているようだった。
あたりを見回していると、シリルさん達がイーストの端っこに立っていて、それを囲うように知らない冒険者達が立っていた。
それを見ていると、シリルさんと目があって、何かに気づいたようにこちらに近づいてきて俺に話しかけた。
「ゆうたくん!もう大丈夫なのかい?」
「えぇ、まあ大丈夫ですよ」
「……そうかい。よかった!」
「えっと、ところでなんですけど、この人の賑わいはどうしたんですかね?」
俺は気になっていた事を聞いた。
「ああ、これかい?
これはね、スタンピードパワーだね」
「スタンピードパワーですか」
ん?スタンピードパワー?
「そうそう、スタンピードパワー。
昨日のスタンピードで僕達の活躍を見てたセントラルの冒険者達がイーストに来て、依頼を受けているって感じだね」
?
なんで、イーストで依頼を受けてるんだ??
別にセントラルでも依頼くらい受けられるだろ。
「なんでイーストで依頼を受けているんですか?セントラルでも依頼は受けられるでしょう?」
「僕も最初はなんでかなって思って、セントラルの冒険者に聞いたんだけどね、思ったより、セントラルは厳しい環境みたいなんだよね」
「厳しい環境?ですか?」
「うん。
ゆうたくんなら分かると思うけど、ここにいる冒険者は殆どが銅級の冒険者なんだ。
セントラルにスカウトされた人達だね。
僕が聞いた話によると、セントラルに所属しているからといって、安定が手に入るわけじゃないらしいんだよね。
セントラルは冒険者の質を重視しているから、厳しい上下関係が成り立っているんだ。
ここにいる銅級の冒険者はセントラルの銀級だったり、金級にこき使われてメダもろくに貰えずに働いていた冒険者が殆どなんだよ」
そうシリルさんは言った。
俺が思っていたよりも、ブラックな場所だったみたいだった。
ん?でも、そんなにキツイなら別の場所で依頼をこなせばいいんじゃないか?
「そんなにキツイなら、迷宮都市を出て、別のところで依頼をこなせばいいんじゃないんですか?」
「そうなんだけどね、ここは冒険者の国とも呼ばれている通り、名を挙げれば、待遇はいいし、大富豪にだってなれるんだよ。だから中々離れられないもんなんだよ。
それに迷宮都市を出た冒険者はたくさんいたよ。それで残った人達が昨日の一万人だよ」
「シビアですね…」
「名声が手に入るのはほんの一握りだからね。それでも冒険者は夢を見るものなんだよ」
……
「ああ、そういえば!ゆうたくんはギルドマスターに会ったかい?
昨日のことで話しがあるらしいよ!」
少しの沈黙の後、シリルさんがそんな話をした。
「スラップさんがですか?」
「うん、多分今はイーストの2階の奥の部屋にいると思うから行ってみたらどうだい?」
そうシリルさんに言われたので俺はスラップさんの元へ行く事にした。
俺は昨日起きた事について考えていた。スタンピードの規模の大きさ、魔女の介入、ゴルアルの死。
頭の中でずっと考え続けても、何も結論は出なかった。
スタンピードの規模の大きさについては、原因が全く掴めない。異常なほど魔力が溜まっていて魔物が大量発生していた。
通常はあれだけの魔力は自然発生しないし、あれほど強い魔物も生まれない。何かがある事には間違いないが、何が原因かは全くわからない。
変な言葉を喋る大きい骨もいた。
魔女の介入についてもわからない。だが、アムリス帝国が怪しい動きをしているのはもともと話を聞いていたし、ブリードの村でも魔女が現れている事から、近々何かが起こる事は否応でもわかる。
そしてゴルアルの死。
殆どの考え事はこの事で頭がいっぱいだった。
俺の不注意で化け物に変えてしまい。俺が自らの手で殺した。
助ける事が出来た人だ。
スタンピードだって止める事が出来たし、俺が魔女の意図に気づいていれば防ぐ事が出来た。
シューニャの人間は人が死ぬ事に関してニュースにすらないほど意識されていない。
アートでは、人が死ねばニュースになるし、身内であれば葬式だってする。
シューニャの世界でも身内が人を弔う事もするが、儀式のような事はしないし、多くの人間が集まる事だって滅多にない。
俺はシューニャの人間ではない。
アートの人間だ。
それほど死を簡単に受け入れられるほど、俺は強い人間じゃない。
しかも、姿は化け物だったとはいえ、俺の手で知っている人間を殺したのだ。
平気でいられるわけがない。
俺はどう責任を取ればいいのか。
人を殺してしまったという後悔。
これから何をしていけばいいのか。
そんなような事がずっと頭の中でグルグルと回っていた。
俺はこのままでは何も結論が出ないと思い、とりあえず外に出る事にした。
トコトコから外に出ると多くの人が盛り上がっていた。
道端で雄叫びをあげながらバク転している人もいた。
そんな人を見やり、俺はイーストのギルドへ向かった。
イーストのギルドへ向かっていると、いつもの道がかなり騒がしい事に気づいた。
いつもイーストに近づいていくにつれて、人通りが少なくなり、スラムのようになるのに対して、今はパレードでもやってるのかと思うほど賑やかだった。
時間をかけて、多くの人波をかき分けてイーストに到着すると、中にはイーストとは違う冒険者が数多くいた。
冒険者たちは受付に並んでいて、何かをしている。
イーストの冒険者達も戸惑っているようだった。
あたりを見回していると、シリルさん達がイーストの端っこに立っていて、それを囲うように知らない冒険者達が立っていた。
それを見ていると、シリルさんと目があって、何かに気づいたようにこちらに近づいてきて俺に話しかけた。
「ゆうたくん!もう大丈夫なのかい?」
「えぇ、まあ大丈夫ですよ」
「……そうかい。よかった!」
「えっと、ところでなんですけど、この人の賑わいはどうしたんですかね?」
俺は気になっていた事を聞いた。
「ああ、これかい?
これはね、スタンピードパワーだね」
「スタンピードパワーですか」
ん?スタンピードパワー?
「そうそう、スタンピードパワー。
昨日のスタンピードで僕達の活躍を見てたセントラルの冒険者達がイーストに来て、依頼を受けているって感じだね」
?
なんで、イーストで依頼を受けてるんだ??
別にセントラルでも依頼くらい受けられるだろ。
「なんでイーストで依頼を受けているんですか?セントラルでも依頼は受けられるでしょう?」
「僕も最初はなんでかなって思って、セントラルの冒険者に聞いたんだけどね、思ったより、セントラルは厳しい環境みたいなんだよね」
「厳しい環境?ですか?」
「うん。
ゆうたくんなら分かると思うけど、ここにいる冒険者は殆どが銅級の冒険者なんだ。
セントラルにスカウトされた人達だね。
僕が聞いた話によると、セントラルに所属しているからといって、安定が手に入るわけじゃないらしいんだよね。
セントラルは冒険者の質を重視しているから、厳しい上下関係が成り立っているんだ。
ここにいる銅級の冒険者はセントラルの銀級だったり、金級にこき使われてメダもろくに貰えずに働いていた冒険者が殆どなんだよ」
そうシリルさんは言った。
俺が思っていたよりも、ブラックな場所だったみたいだった。
ん?でも、そんなにキツイなら別の場所で依頼をこなせばいいんじゃないか?
「そんなにキツイなら、迷宮都市を出て、別のところで依頼をこなせばいいんじゃないんですか?」
「そうなんだけどね、ここは冒険者の国とも呼ばれている通り、名を挙げれば、待遇はいいし、大富豪にだってなれるんだよ。だから中々離れられないもんなんだよ。
それに迷宮都市を出た冒険者はたくさんいたよ。それで残った人達が昨日の一万人だよ」
「シビアですね…」
「名声が手に入るのはほんの一握りだからね。それでも冒険者は夢を見るものなんだよ」
……
「ああ、そういえば!ゆうたくんはギルドマスターに会ったかい?
昨日のことで話しがあるらしいよ!」
少しの沈黙の後、シリルさんがそんな話をした。
「スラップさんがですか?」
「うん、多分今はイーストの2階の奥の部屋にいると思うから行ってみたらどうだい?」
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