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迷宮都市編

27.異変と変化。おい、おまえって

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 俺は躓いた男を助けて、魔物を倒した手柄を譲る予定だった。

 だが、今俺は何故だろうか怒られている。

「僕はたしかに、君を止めなかったよ。冒険者は自由だからね!だけど、やっぱり、わざわざ死にに来るようなことはするのはよくないよ!それに!ここにいると、僕達の邪魔になるんだ!」

 え、なにそれ。
 しかも、本心で言ってるじゃん。
 ひど!!

「えっと、どこらへんが邪魔でした?俺がここに来たのは、ついさっきなんですけど」

「はぁ、見てなかったのかい?
 君はもしかしたら、僕が放った聖なる斬撃ホーリーセイヴァーに巻き込まれて、ああなってしまうかもしれなかったんだぞ?」

 そう言って、俺が倒した骨の死体の山を指差した。

 こいつまじか!!いや!俺も骨を利用して、尻を出して倒れてたのをごまかしてほしいと思ってたけどさ!
 違うじゃん!!それは!

「そうなんですか、それでそのホーリーなんたらで、お尻丸出しになってこけてたんですね。お尻丸出しになったのは僕が邪魔だったからですか?」

 腹が立ったのでお尻丸出しについていじってやった。

「な、!今はそれとこれとは関係がないだろ!!」

「へぇ、関係ないんですか!じゃあ、何の関係もなくお尻を晒したんですね!」

「くっ…」

 ぷっぷぷ!ばーか!ばーか!お尻丸出しー!ぷぷぷっ!

 そんなことを思っていると女性達から言われ始めた。

「な、そんなこと!言う必要ないじゃないのよ!」

「そうよ!お尻と魔物を倒したのは関係ないんですから!別にどうでもいいじゃない!魔物は倒せたんだから!
 それにスレッドが心配しているのに、どうしてそんなこと言うんですか!」

「そうよ!」

「…ひどい…」

 え、えぇ、待ってよ。

 それは違うじゃん。

 えぇ、何でそんなに言うんだよ。

 本当のことを言っても、俺が負けた気がするしなぁ、ちくしょう。

「冒険者は自由な職業ですから、心配はいらないです。
 ああ、邪魔になるといけないので俺は去りますよ。
 スレッドさんのおかげで、魔物もだいぶ減りましたし、もう一度ホーリーなんたらを使って倒して下さると助かります。
 では!俺は行きます!」

 そう言って、俺は男の元から去った。

 ちくしょう!今度会ったら絶対助けないからな!

 そう思いながら、戦線から少し離れたところで戦いの様子を見ていた。

 イーストのギルドマスターのスラップさんも、ノースのギルドマスターのタムさんもかなり活躍していたらしいが、体力切れでもう休憩しているので戦いを見れなかった。



 それから、三十分ほど経つと、骨は全て倒された。


 俺はシリルさんの元へ移動して、シリルさんと話していた。

「やりましたね。シリルさん!」

「なんとかなったね。色々とありがとう。ゆうたくん!」

 シリルさんにそう言われた。

「やったな!ゆうた!後ろ側からの攻撃サンキュー!うまく魔物の気を散らせて、倒しやすかったぞ!」

「五十万って聞いて、不安だったけど、みんなが無事で良かった…もう力入らないよ」

 アシルとサニーも話しかけてきた。

「とりあえず、みんなが無事で良かったなぁ」

 そんな気の抜けたことを俺は言った。

 今、骨達と戦った戦場には、シリルさん達と金級冒険者のゴルアル、五人のパーティ、そして俺が立っていた。

 ギルドマスター達は流石に歳には勝てないみたいで避難している。

 俺達はギルドマスター達のいるところへ向かうことにした。

 その途中、他の奴らの様子を見た。
 俺達が避難所に向かって歩いている時に一人だけ動かないやつがいた。

 ゴルアルだった。

 しばらく動かないので疲れているのかと思い、ゴルアルの所まで向かった。
 この男も、ナンパはするが、魔物の軍勢に立ち向かった者の一人だ。
 少し見直している。

「おい、大丈夫か?顔色悪そうだぞお前」

 何だろうか、ゴルアルは疲れている?ような顔ではなく、死にそうな顔をしていた。
 目に光は無く、体に力が入っていない。
 冷や汗を垂らしながらニヤニヤして何かブツブツと喋っていた。

「おい!本当に大丈夫か!?」

「……」

 何かブツブツしゃべるだけで、聞こえない。

 なんだか様子がおかしい。気配を探っても、特に変わった事はない。

 でもなぜか、ゴルアルに違和感を感じた。

 俺は何かおかしいと思い、あたりを見回してみた。

 見回したところで別に変わりのない骨の山だった。
 あたりにはたくさんそれが転がっており、ゴルアルの戦いが壮絶なのが物語っている。

 よくもこれほどまでに一人で頑張ったも……の………だ??

 こんなに沢山…魔物を倒して?

「なぁ、お前どうやってこれほどの量の魔物を倒したんだ?」

「……しい」

 おかしい。これほどの量の魔物をよく考えたらどうやって倒したんだ?
 気配を探って力を確認しても、ゴルアルの強さでは骨一体を倒せるかくらいの実力だ。
 なぜ、一人でこれほどの量の魔物を倒せているんだ?

「おい、答えろ!」

 俺は強めにそう言った。

 ゴルアルはそれに対してただニヤニヤして何かを喋っているだけだった。

 何を言っても変わらない態度に、俺はゴルアルに近づいて、耳を澄まして何を喋っているか聞いた。

「ぅっくしぃ、さにぁ。ぁのまゎりにぃる、せぃれぃが、ほしぃ」

 !?

「お前、精霊がみえるのか!?」

 驚いた俺はゴルアルの肩を掴もうと手を伸ばした。

 バチッ!

 手を払いのけられた。

「さゎるなぁ!!まだ、まものがぃたのか!!ほろぼす」

 そうゴルアルは叫ぶと、剣を引き抜き俺に向けて構えた。

 ゴルアルが俺に向けた目はまるで誰かの仇でも見るかのように憎しみを持った目だった。

「おい!まじで大丈夫かよ!て言うか精霊!精霊お前見えてるのか!?」

「ぐぁぁぁぁあああ!!」

 そう言って、俺に斬撃を浴びせてきた。

 キンッ、キンッ!

 いや、まじかよ、狂ってる。何も魔法にかかってないのにどうしたんだよ!

 俺は焦りながら刀で斬撃をいなして剣を破壊して、手から離させた。

「流石に遊びでここまではしないな?なんだお前は!」

 俺の問いに答えず何かをやり始めた。

「はぁ、はぁっ!ころす!!ころす!!せぃれぃ!ほしぃ!!」

 そう叫びながら、ポケットから何かお札のようなものを取り出した。
 明らかにやばいのがわかるのでそれを奪い取った。

 なんだ?これは?

 札には何か文字が書いてあり、そこにはで『呪殺』と書いてあった。

 その紙を触るとわかったがそこにはほんの微かに呪力を感じた。

 俺はここで日本語があることについて考えていなかった。
 故に札を見ながら考えてしまった。

 ゴルアルから札を奪い取った安心感から油断してしまったのかもしれない。

 札を見ていると体から鈍い音が聞こえ、俺は吹っ飛ばされた。

 やっちまった。油断した!札が一枚しかないってことは絶対になかった!だって骨大量に倒してるもんな!
 いてぇ!

 俺はすぐさまゴルアルの元へ向かった。

 ん??なんだ、あれ…

 ゴルアルの右手は巨人のように大きくなっていた。
 右手だけが巨大化していて、更にゴルアルの顔色が悪くなっていた。

 ゴルアルの気配を改めて確認すると、よくわかった。
 ゴルアルの右手だけに魔女のまじないと同じ力、つまり、呪力を感じる。それもうまく隠蔽されていた。

 ここまで近づいて、ゴルアルに集中しているので、流石にわかる。

 ちっ、今まで全然気づかなかった。

「ころす!!ころぉぉす!!ころぉぉぉぉぉ!!!」

「落ち着けって!!」

 ドゴォォォン!!

 巨大な右手でただひたすら暴力的な攻撃をしてきた。

 どうすればいいんだ。腕を切り落としてもいいのか?
 いや、でもこいつは人間なんだよな。
 あぁ、くっそ!

「すまん!!」

 俺はそう言って、毘沙門天を使って腕を切り落とした。

 そうすると、ゴルアルの手はみるみると縮んでいって元の大きさに戻った。
 切り落とされてるけど。

 うまく呪力だけを消したつもりだ。腕くらい後でくっつけばどうとでもなる。
 失敗したら、腕消し飛んでたけどな。

 そんなことを考えている場合じゃないと思い、俺はゴルアルを拘束した。


「ころす。ころす。ころす。」

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