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迷宮都市編

24.フェーズ2。準備時間にインタビュー

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 魔物五十万のうちから三十万が倒れ、残り二十万となり、残りの二十万が姿を現した。

「よし、坊主!戦えない冒険者の避難は済ませたぞ!!残りの奴らは死にてぇ奴だけだ!」

 イーストのギルドマスターのスラップさんが俺に言ってきた。

 そう言われてあたりを確認すると残っている冒険者はシリルさん達を除いて、九人だった。

 イースト、ウェスト、ノースのギルドマスター。
 そして、サニーを口説こうとしている金級冒険者のアルゴル。
 後は知らない冒険者が五名だ。

 この五名はパーティを組んでいるみたいだった。
 一人が男で四人が女というモテモテなパーティで何か強そうな剣を腰につけている。

 魔法などは付与されていないが、かっこいいので多分強い。知らないけど。

「二十万の軍勢ですよ?スラップさん達は覚悟ができてるんですか?」

 俺は三人のギルドマスターに覚悟を聞いた。

 正直なところ、ギルドマスター達には生きていてもらいたい。
 知り合いが死ぬのは悲しいし、ギルドマスターはギルドの信用が厚いので、今後の運営にも大きく関わるので死んでほしくないのだ。
 
 この戦いは勝つ自信はあるが、全員を生きて返せるとは言えない。
 俺の体は一つしかないわけだし、守れる範囲も限られてくる。
 だからあまり戦いに参加して欲しくなかった。

「何度も言わせるなよ!戦う!死ぬなら戦って死んでやる!
 俺たちは今はギルドマスターをやってるが、昔は冒険者だったんだ。覚悟はずっと昔にしてるさ。
 それに、死ぬつもりなんてないから死なないぜ!!はっはっは!!」

 そうスラップさんが言うと、ノースのギルドマスターのタムさんとウェストのギルドマスターのコーダーさんが頷きながら笑っていた。

「わかりました。死なないでくださいね。本当に」

 俺はそう言って、その場から離れて、一人で立っていた金級冒険者ゴルアルの元へ行き話しかけた。

「おい、お前は死ぬ覚悟があるのか?」

「……」

 返事がない。
 いや、何か小さな声で喋っている。

 ん?こいつってこんな奴だったっけかな。

 様子がちょっとだけおかしい。
 目は少し虚ろで冷や汗をかいている。

 体調が悪いのか??

「おい、お前、大丈夫か?」

「す……精……なん……しい」

 話をかけても何かブツブツと喋っているだけでどこか遠くの方を見ていた。

 気配は正常で、誰かの魔力の干渉があったわけじゃないのは心眼で見たので、自分の意思でここにいるのは間違いないと判断して、放置した。

 金級冒険者ゴルアルのあと知らない五人組に話をかけた。

「これから二十万の魔物がここへ向かっています。死ぬ覚悟はできてますか?」

 俺は五名のうちの一人の男にそう尋ねた。
 気配を見ると金級くらいの強さはあるな。後ろの四人の女性もだいたいそれくらいの強さだ。

「死ぬ覚悟?そんなものする必要はないよ。なぜなら僕達『星屑の軌跡』がいるからね。君も安心してね。二十万の魔物はすぐに蹴散らすよ。
 それにしても驚いたよ。迷宮都市に来て、迷宮攻略をしようとしたらギルドでスタンピードが起こるって発表されていたからね!いても立ってもいられなかったんだよ!
 それにしてもあのエルフの子達はすごい魔法を放つね!驚きだよ!」

「ちょっと!スレッド!もしかしてあのエルフの女に惚れたの!?このすけべ!」

「え、いや!誤解だよクレス!!そ、そんなことないよ!」

「じゃあなんでそんなに焦ってるのよ!」

「最低です…」

「ひ、ひどいよスレッドォ…」

「スレッドが…わたしを…見てくれれば…それで……いい」

「クレス!違うってば!それに、チューシャもリンもピアまで!
 違うってば!あのエルフの子達の魔法がとてもすごかったから言っただけだよ!たしかにエルフの女の子は可愛いけど、みんなの方が僕は好きだよ!
 それに片方は男だから!そう言うつもりで言ったわけじゃないから!」


 俺は茶番を見せられているようだ。
 二十万の魔物が来ていると言うのに。

 俺と話している途中で無視されて何か話しているではないか。

 なんでだろうかよくわからないが、リアジュウバクハツという知らない単語が頭から出てきた。
 まあ、どうでもいいんだけどね。

 『どこか大事なところで躓いてしまえ』

 そう思っていると茶番は終わったらしく、男が話しかけてきた。

「ああ、ごめん話の途中だったよね。でなんの話だっけ?」

「ああ、もう大丈夫です。死なないでください」

 そう言って立ち去ろうとした。

「あ、待ってくれ!」

 逃げられなかった。

「えっと、なんでしょう?」

 なんなんだよ。早く戦闘準備しろよ。

「君は戦わない方がいいと思う」



「……は?」

 なんだ?ここまできて、服装で戦えないって判断されたのか??

 たしかに商人と間違えられるし、武器は細い棒に見えるし。十四歳のガキだけど、ここにきてそれを言うか!?

「いや、僕は実はスキルで人の強さを覗くことができるんだ。
 悪いけど勝手に見させて貰ったが、君の強さだと、死んでしまうよ。
 それに君は見たところ商人さんだろう?わざわざここにいなくてもいいんだよ」

 スキルで強さを見た?そんなことができるのか。スキルってすごいな。
 あ、返事しなきゃ。

「わざわざ心配ありがとうございます。でも大丈夫です。死ぬ覚悟はできていますので」

「……そうか。僕は魔物を倒せるが、君のことを守れる保証はないからね。君は死ぬ覚悟があるみたいだし、これ以上は何も言わないよ」

 若干うざいし、自分の力を過信しているが、心配してくれているのは伝わったので、一応感謝しとく。

「はい。では失礼します」


 そうして俺は最前線へ立った。



 
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